第10話 貴方の救いになりたい
拝啓、沢山の言葉を紡ぐ貴方へ
温かい言葉をありがとうございました。
成瀬先生が亡くなってから少しあと、少しだけ片目の視力を取り戻しました。
リスクの大きな手術ではありましたがその怖さはきっと、貴方が言っていたような“希望”だったのだと思います。
動画で初めて成瀬先生の姿を拝見して、正直驚きました。
綺麗な人だな、と思いました。
温かい言葉を紡ぐ綺麗な人。
綺麗な世界に生きていると言うより、綺麗な世界を自らの手で生み出している人。
生きている間に一目でも、直接この目に焼き付けておきたかったです。
2つの嘘のことですが。
知らないところで悲しんでいる子を助けられないのが怖いって、
成瀬先生らしいなと思いました。
私は見えないことも怖いですが、それ以上に見せない貴方が怖かった。
知らないところで苦しんで欲しくないと思うほど、先生の努力を壊してしまうような気がして。
貴方の2つ目の嘘は苦しさを隠す沢山の“大丈夫”だったと思います。
みーこは最期まで、成瀬先生のことを探しているようでした。
以前、“猫は人の死期がわかる”という記事を見たと言っていましたね。
だけどみーこは、成瀬先生がそういうのだから懐いていたわけではないと思います。
猫は人の邪気を祓ってくれる生き物なんだそうです。
先生のことが大好きで、病気という邪気を祓おうとしていたんじゃないんですかね。
温かくて、優しくて、
成瀬先生の近くにいると青空みたいにぽかぽかして気持ち良かったのかもしれません。
成瀬先生こそみーこの希望になっていましたよ。
2年経っても貴方の温かさは昨日の事のように思い出されます。
みんなきっと忘れられない、忘れたくない。
だから、独りで苦しまないで下さい。
独りで悲しまないで下さい。
貴方が私に、この園の人達にしてくれたように、言葉で先生を救うことはもう出来ません。
とても、悔しいです。
だから、成瀬先生と過ごした日々を永遠に心に残しておきます。
貴方の紡いだ言葉を、心に残しておきます。
“忘れて欲しくない”という貴方の救いに、私はなりたい。
また、会いたいという希望持って生きていきます。
本当に、ありがとうございました。
紫宮 奈那
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【人物まとめ】
紫宮 奈那…目が見えない、みーこを拾った
みーこ…園に住む猫
成瀬 綾人…綺麗な世界を生み出す人
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