２０２０年、春に届いた１９８０年代～の歌舞伎町からの便り

２０２０年、新型コロナウィルスで日本中が大打撃を受けた。まっさきに直撃したのが、新宿・歌舞伎町である。
最初のクラスターが新宿歌舞伎町であったためだ。
コロナ関連のニュースで連日連夜「新宿悪」「歌舞伎町悪」とメディアで報じられる。そのせいで歌舞伎町の中は、かつて見たこともないような休業、廃業、テナント募集の貼り紙で溢れかえってしまった。
人も消えビルの袖看板も空白が目立つ。
三十五年近く歌舞伎町の中にいて初めて見る光景に、三十年来の床屋のマスターと瀬野哲也は瀕死の歌舞伎町を嘆く。
１９８０年代半ば、十七歳で瀬野哲也は「普通に生きる」という生き方がイヤで「普通が一番よい」と考える父親とソリが合わず家を出てしまう。
そして、なんのあてもなく上京し歌舞伎町という街をさまよい始める。ふとした偶然で「…続きを読む