告白

「――結婚してください! お父様!!」


「ステラ。何度も言っているが火の国をふくめたほとんどの国で親子おやここんは禁止されているし、俺はもうアリスと結婚しているからステラと結婚するのは無理なんだよ」


「じゃあ結婚できる国へ行きましょう!! お母様とは離婚りこんすればいいですわ!!」


「ステラのことも大好きだけど、俺はそれ以上にアリスが好きなんだ。だから結婚は無理だ、あきらめてくれ」


 ――困った顔のお父様も素敵すてきですわ!! でも結婚してくれないお父様はきらいですわ!!!

 通算つうさん千回目の告白をデュランにことわられたステラは作戦を変更し、早起きして作ったサンドイッチと蜂蜜はちみつクッキーが入ったバスケットを取り出してデュランへ差し出した。


「サンドイッチとお父様の好きな蜂蜜クッキーですわ!! 一緒に食べましょう!!」


「今日のお弁当もボリュームがすごいな、アリスの晩飯ばんめしが食べられなくなりそうだ」


「食べなくていいですわ!! お母様の料理なんて!!!」


「……とうとう言ったね、ステラ」


 思わず口から本音が飛び出してしまったステラは内心あせったが、まあ言ってしまったものはしょうがないと笑って誤魔化ごまかした。

 デュランはそんなステラの態度たいどに娘の将来が心配になりながらもサンドイッチを食べてみると、やはりデュランこのみの味つけだったため。思わずため息を吐いた。


「お父様!! おいしくなかったですかッ!!!」


「いや、とってもおいしいよ。ステラ」


「それならよかったです! たくさんあるのでもっと食べて下さい!!」


「そ、そうだね、アハハッ」


 ステラの誕生日プレゼントとして前々からお願いされていた二人きりのデートを軽い気持ちで引き受けたのは失敗だったかも知れないと、デュランは思いながらも大量のサンドイッチを食べてから体内で魔力に変えてアリスの料理が入るスペースを確保していた。……このアホも大概たいがいである。


「お父様! 今日は私に剣を教えてくださるのですよね!!」


「まあ正直言うと俺としては女の子であるステラには棒術の方を教えたいんだけどな」


「私は剣がいいですわ!!」


「分かってるよ、ステラ」


 デュランは何故剣術を教えるのがデートになるのか理解できなかったが、ステラのお願い通りその日はずっと剣術の修行をステラへとつけてあげた。

 ただステラは剣術の才能がとても高くて下手へたするとヘルトへ教えていた時以上にきびしくなってしまうのがとても悩ましく、女の子だからと少しでも手をこうとすると見抜かれてしまうので仕方なく全力で教えていたが。

 いつもボロボロになったステラの姿を視界へ入れてこのままでいいのかと心の中で何度も自問自答じもんじとうしていた。


「お父様! 今日もありがとうございました!! 明日もお願いしますわ!!!」


「あぁ、剣術の修行はな」


 しかし全身ボロボロでもステラはうれしそうにしているため問題ないのだろうと判断し、ステラをお姫様抱っこしてからアリスの待つ自宅を目指して移動し始めた。

 ステラは二人きりの空中散歩を満喫まんきつしながらいつかデュランと結婚してみせると決意を新たにし、翌日も早起きして料理を作るのでした。

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