歌舞伎者

 グリード王国での戦争を阻止してから一週間、新しくグリード・・・・・・・王国の王になった・・・・・・・・デュランはその強権を存分に利用して様々な改革を行っていた。

 グリード王国では奴隷制度は完全に廃止となり、そのルールを破った者へ行う拷問ごうもんを大量の政務せいむでストレスが溜まったデュラン自身が広場で実行し。ルール違反者は上半身はだかにした上で国民の前でその背中を百回以上むちで打った。

 他にも不正や賄賂わいろなどに手を出していたバカへはそれぞれデュラン自身が罵倒してストレス発散した上で、その罪に相応しい罰を与えた。


 奴隷紋どれいもんの廃止や各種族へは前王の隠し財産を全て吐き出してできる限り失ったものを取り返す手伝いをしたり、各種族への国民の意識改革と教育、グリード王国内の起源統一教団を潰す、王国軍と模擬戦もぎせんをして奴らの自尊心じそんしんを徹底的にすり潰す、杜撰ずさんすぎる前の法律を廃止して新しい法律を作る、守天を殺そうとするもアリスに友達だと紹介されて泣き寝入りするなど。

 これらのことをアリスへ相談もせずにあの宣誓せんせいを行った罰ばつとしてデュランはこの一週間、アリスと寝ることはおろか会話さえしてもらえない状態で行っていましたが。

 流石に1週間目の今日でもう我慢も限界を超え、デュランは今現在アリスへと泣きながら土下座していました。


「あ゛り゛す゛う゛ぅ゛~~こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛。

 ほ゛ん゛と゛う゛にこ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛、は゛ん゛せ゛い゛し゛た゛の゛て゛ゆ゛る゛し゛て゛く゛た゛さ゛い゛!」


「……可愛い、なんかすごい可愛い! デュランその涙をめてもいい!! 舐めさせてくれるのなら許す!!!」


「は゛い゛、あ゛り゛か゛と゛う゛こ゛さ゛い゛ま゛す゛ッ!!!」


 そうしてデュランに許可を取ってから大量に流れ続ける涙の一部を舐めたアリスはその背徳感はいとくかん絶頂ぜっちょうし、ほおをだらしなく歪めています。

 もしかしたらアリスの性癖せいへきが歪んだかも知れませんが、この後一週間ぶりにつながることができたデュランが歓喜かんきと共に三日間アリスを監禁かんきん調教ちょうきょうしたので多分大丈夫でしょう。

 ちなみに結局アリスは別方面のそれもMな方の性癖を開花させてしまい、デュラン専用の肉便器にくべんきとなりました。……やっぱり大丈夫じゃないかも知れません。

 それから話は変わりますが、二人がしたプレイは囚われたエルフ族の姫が人族の王に目隠し緊〇耐久〇ッチをされるという内容でした。A〇撮影でもしてんのか、こいつら。







 グリード王国での大立ち回りから一週間と三日後、デュラン達はグリード王国の新たな王の代理だいりとなったルイスとノアと握手あくしゅを交わしながらグリード王国を旅立とうとしていた。


「俺が戻るまでこの国の王は任せたぞ、ルイス、ノア。そしてできればそのままお前らが王様になってくれ」


「ハハハッ、何を言ってるんですか。俺達は王代理で精一杯ですよ。

 この国の本当の王は貴方なんですからねデュラン・・・・、貴方こそ全部終わったら必ず戻ってください!!」


「そうですわ! 必ず戻ってくださいまし!! 戻らなかったら許しませんわ!!!」


 デュランへそう言うルイスの目はまったく笑っていなかった。

 そして自身がグリード王国の新たな王となったという目をらし続けていたかった内容をし返されたデュランは、耳栓みみせんを創って耳をふさぎながらそのまま荷車を走らせようとしたが。

 ルイスに荷車の正面へと回り込まれてしまったので、大人しく「……はい」と返事をしてからトボトボと荷車を引き始めるのだった。


「デュラン、諦めなさいな。貴方もうこの国の王としても剣神としても国民達から信仰されているのよ。

 大体こうなることは分かっていたでしょうに」


「……そうは言うがなぁ、あんだけ多種族を嫌悪けんおしてた奴らが俺が多種族への差別は止めろって言った途端とたん。手の平返したかのように行動を改めたんだぞ。

 メッチャ気持ち悪かった。そんな中で真面目に王として一週間も振る舞ったんだからむしろめて欲しいくらいだからな、正直」


 デュランはそう言いながらこちらへ大きく見開いた目をグルグルとさせていた大臣達と、その性根を叩き潰すため始めたはずの訓練で大喜びしていた王国軍の姿を思い出して鳥肌とりはだを立てた。

 ……これが今まで感じたことのなかった恐怖きょうふという感情なのだろうか、知りたくなかった。


 ちなみにアリスの父親でもある前王はエルフ族の里へと届けた後、自身がグリード王国の新たな王になったことを伝えた上で「殺さなければ何をしても大丈夫!」と言ってから置いてきた。

 他の人族や多種族には一応生きているが地獄の苦しみを味わっていると伝えてある。

 どうなったかは一年くらい経ってから確かめようと思っているが、もしかしたら確認・・するのを忘れるか・・・・・・・・もしれない・・・・・。ケド、ワザトジャナイカラシカタナイネ。


「おまけに一週間もアリスと話すことすら出来なかったものね、デュランが泣くとこなんて初めて見たわ」


「――それは言うなって! やっと許してもらえたんだからし返すな!!」


 デュランは正直狂信者共の相手をするよりもアリスと一週間も会話できないことの方が辛かったと思い返し、泣きながら土下座するという情けない行動をやったことでようやく許してもらえたのに。話を蒸し返そうとするヴィンデへと思い切り怒鳴どなり返してしまった。

 幸いアリスは三日間の監禁調教で疲れ果てて荷台で寝ていることは分かっていたが、それでもあの一週間のつらさを思えば怒鳴らずにはいられなかった。


「……クスッ、まあいいわ。それで次はどこを目指すのよデュラン、アイディール神国へもう直接乗り込んじゃう?」


「そうしたいのは山々なんだがな、黒神の野郎が今回何もしてこなかったことを思えばかなり危険な行動な気がするんだよなぁ。

 黒神は最終的な目的は俺達と同じく起源統一教団を潰すことだと言っていたが、あれはうそくさいし」


「あら、そうなの? じゃあ、本当の最終目標ってなんなの」


 デュランはヴィンデからの質問に「まだ、予想でしかないからな」と前置きをしてから、世界中のありとあらゆる生物を魔物へと変えた後。

 その魔物達を何らかの方法で全て魔王や大魔王に進化させることで、争いの起こらない新世界を創り出すのが最終目標じゃないかと考えているとつぶやいた。


「……もしその予想が正しいんだったら大問題よ、デュラン。

 私達が起源統一教団を叩き潰して戦争を終わらせることができても結局、最後には黒神がひっくり返すことになるし。黒神はそうする方法を知っていることになるわ」


「ああ、分かっている。だから悩んでるんだが、どうするのが正解なのか正直分からん。

 あれから影とかの元から闇属性が多い場所でも、何かが潜んでたら気がつけるよう常時周囲の気配を全力で探ってるから見張られてないのは分かるんだ。

 だからこそどうすればいいのか困っちまってな、せめて黒神達がどんな手段を使おうとしてるのか分かればいいんだが――ッ!」


「――相変わらず容赦ようしゃないな、剣神」


 そうしてヴィンデと二人で相談していたデュランは突然アリスの寝ている荷台に黒神の気配が現れた・・・・・・のを感じ、即座にその首を天晴で落とそうとしたがやはり人差し指で受け止められた。

 それでも死にかけだった前回と違い万全だった今回は黒神の人差し指の中程まで斬りながら吹き飛ばすことができたが、黒神は何事もなかったかのようにケロリとしていた。

 舌打ちしつつ大量の飛ぶ斬撃を放ったが、同じように放たれた飛ぶ斬撃で相殺された。


「何のようだ、黒神ッ!!」


「そう邪険じゃけんにするな、剣神。お前が知りたがっている最終目標を教えにきたのだ。

 知りたいだろう、我々の最終目標。恒久こうきゅう的世界平和の実現方法」


 情報は戦場において一番重要な物だ。情報の取り扱い方を間違れば万の軍勢が三千ほどの軍との戦いで敗れることもあるくらいの代物である。

 だからこそデュランが知りたがっている最終目標を話すという黒神へ違和感を持ち、その狙いが何なのかを考えたが分からなかったため。取りあえず聴いてから判断することにした。


「……分かった。じゃあ、話だけ聞いてやる。ただし、話が気に入らなかったらお前を斬る」


「――そうか、では教えてやろう。我々は全ての竜穴とつながっている大樹ユグドラシルを汚染することで全ての竜穴で魔物を誕生させるつもりだ。

 その上で近くの国を襲わせることで魔王や大魔王に進化させようと思っている、こうすれば争いを起こす旧人類も一掃いっそうした上で私の命令に絶対服従ふくじゅうの新人類だけが生きる新世界が出来上がり! 恒久こうきゅう的な世界平和が実現する!!

 ……これが私の本当の最終目標だった・・・


「――だった? 過去形だな、何でだ」


 そうして黒神が語ったのはやはりデュランが想像していたとおり、無理矢理今の人類を滅ぼして平和な世界を創るという物だった。

 世界とか正直デュランはどうでもよかったがアリスの愛する・・・・・・・世界を破壊するなら敵と判断し、天下無双の詠唱を始めようとする寸前。黒神の言う最終目標が過去形であると気が付いて質問することにした。


「そうだな、簡単に言うと私は悩んでいるのだ」


「悩んでいる、何を」


「世界平和のし方を、だ。私のやり方のように無理矢理世界を変えるのでなく、お前達のように今の世界へ変革をもたらす方がいいのではないかとね」


 デュランはその黒神の言葉を聴いて正直言って呆れた。

 何故なら――


「そんなもん、やってみなきゃ分かんねぇだろうが。考えるだけ時間の無駄なんだよ」


「ハァッ!?」


 ――そんなことに時間を使うだけ無駄だからである。

 そもそもデュラン自身。世界を救おうとか高尚こうしょうな考えを持って行動してきたことはなく、アリスに出会うまでは気に入らない奴をぶっ飛ばしたらそいつが悪党だっただけなのだから。

 つまり善だろうと悪だろうとデュランは昔は自分のため、今はアリスのために邪魔じゃまな奴を消しているだけなのである。

 黒神もあの愚民ぐみん共もこんな自身へ何で見当違いの感情をぶつけてくるのか、デュランにはまるで分からなかった。


「世界平和だろうが世界征服だろうが知ったことかよ! んなもん勝手にやってろ!!

 そしてどうすればいいか分からないんだったら、俺達の戦いをその目玉めんたまをしっかり開いて見てろ。

 自分勝手で嫁さんのことしか考えてないような滑稽こっけいな男が――世界を変えちまうところをな」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330664561192277


 デュランはそう言った後、黒神への興味をもう失ったのか荷車を引いてその場を去った。

 黒神は少し時間が立ってからそんなデュランの言葉に立っていられないほど笑い出し、それが落ち着くと涙を拭いながら「――だったら私はお前の敵になろう、剣神」と呟いてその姿を消すのだった。


 この二十年後。剣神と黒神この二人は世界を賭けて闘うことになるのですが、今はまだその時ではないのでした。

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