百花繚乱

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 グリード王国は空飛ぶ車やリニアモーターカーなどの乗り物があるアイディール神国の次に高度な科学文明を持った国であり、その恩恵おんけいで普通の国よりも国土が広大であるため防衛を苦手とする弱点があった。

 十数年前その弱点を突いてエルフ族がグリード王国を急襲して自分達の姫を奪い返したのを手本にし、我々連合軍も連携して東西南北からグリード王国を襲撃することを決めたがかつてと違い。

 今のグリード王国は周囲を一万体の機械の巨人と百万体の機械の天使に守られている鉄壁てっぺき要塞ようさいとなっていたが壁で王国自体を囲っている訳ではないため、連合軍の大半は死ぬだろうが一部でも王国へ侵入して国民を一人でも多く虐殺ぎゃくさつ出来るのであれば本望ほんもうと。

 全員がその覚悟で決死の戦いを仕掛けにきた連合軍は現在足止めを食らっていた。


「アリスと言ったか、女子おなごであれどあなどりがたし。我が闘うしかなさそうだ」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330666564027080


 その中でも南側の連合軍の大将である鬼人族きじんぞく守天しゅてんは一族に代々伝わる秘宝である金棒かなぼう――壊震かいしんを手に持ち、それをその場でアリスが闘っている方向へと振り下ろした。

 すると金棒を振り下ろした先から衝撃波しょうげきはが発生し、守天からアリスへ向けて一直線に走り抜けた。

 衝撃波が命中する寸前。アリスは風のよろいを身にまといながら衝撃波に逆らわず、むしろ自分から後ろへ飛ぶことでダメージを最小限にとどめた。


「――危なかった! あの鬼おじさん、強いッ!!」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330666563884655


 アリスは春風しゅんぷうを手の平で回してから背負っている大樹ユグドラシルの枝木でできたさやに入れ、周囲の精霊へいつもより頑張ってとお願いして普段とは比べものにならない規模の精霊魔法を発動した。


「全力でいくよ! スカイジャッジメントッ!!」


 アリスがそう言うと(言っても言わなくても威力は変わらない)天空から目に見える程圧縮された巨大な空気のハンマーが落っこちてきた。


「あれはまずい! せめて威力を落とさなければ! ――玉砕ぎょくさいッ!!」


 守天はあのハンマーがそのまま落ちてくれば南側の連合軍は全滅しかねないと判断し、全力で金棒と自身を火属性の魔力で強化しながら山脈すらも一撃で破壊できる技である玉砕を放ったが。相殺することはできなかった。

 それでも半分ほどの面積は散らすことができたにも関わらず、連合軍はその一撃で半壊はんかいしていた。

 その光景を目にした守天はもはや軍としてこれ以上の戦闘続行は不可能だと判断し、金棒を地面へと刺してから両手を上げた。


「降参だ!! 我らはもうグリード王国を攻めない!! ここで手打ちにしてくれないだろうか!!!」


「分かりました! そちらがグリード王国を攻めないでしたら、ここで手打ちにします!! 負傷者は僕の所へ連れてきてください!! 回復魔法で治療します!!!」


 守天は会敵かいてき当初にアリスが言った戦争を止めにきたという一筋の希望言葉へ全てをけ、最悪は己の首を差し出すことで温情を得ようかと考えていたが。

 どうやらアリスという少女は本当に最初から戦争を止めるため動いていたようで降伏を受け入れてもらうことができた。

 親友や仲間の命を守るため死を覚悟して今回の戦争に参加したがどうやら生き残れるようだと、ため息を吐きながらその場へと座り込んだ。

 故郷で待つ娘と妻のことを思えば相手がグリード王国ではなくこのアリスという少女でよかったのかもしれないと、復讐ふくしゅうのためここまできた親友が聞いたら怒るだろうことを考えていると。突然グリード王国の方から大きな音が聞こえてきた。


「なんだ! この音は!!」


 守天が混乱しながらグリード王国の方へ視線を向けると、上空で大小様々な形の花が咲いていた。


「――あれは僕の夫が、最強の剣士デュラン・ライオットが王国軍を倒した音だよ」


「なにっ!」


 その光景を目の当たりにして口を大きく開けているとアリスの言葉が耳へ入り、目を魔力で強化してからもう一度視線を向けると。花の正体はあれほど対処に悩んだ巨人と天使のロボットであることが分かった。

 そしてその電気の火花の奥で守天はかつて母親から寝物語に聞かされた伝説の剣士――剣神を見つけた。

 聴いていた姿とは違うし、剣神にしては若すぎたが・・・・・理屈でなく魂で分かった。

 ――あの剣士御方は間違いなく、己が子供の頃から憧れ続けた最強剣神だと。


「おな――いや、おじょうさん、図々ずうずうしいお願いなのは分かっているが。全てが終わってから剣神さ、じゃない! デュラン・ライオット殿と会うことはできないだろうか?

 もし、会えるのであれば我にできることならばどんなことでもする!!」


「えっと、鬼のおじさんデュランに会いたいの? 別にいいよ。ただ、なんでもしてくれるって言うのなら一つだけお願いがあるの」


「勿論大丈夫だとも! 我は力自慢の鬼人族の中でも一番強い!! 家族とこの秘宝壊震かいしんに関すること以外ならなんでも言ってくれ!!」


 守天が食い気味にそう言うとアリスは少し引きつつも、口をモゾモゾとさせてから顔を赤く染め上げながら頭を下げて大きな声で叫んだ。


「ぼ、ぼぼぼ、僕と! ――お友達になってくれないでしょうかッッッ!!!!」


「えっ、勿論構わないが、そんなことでいいのか? 我の持っているお宝をやってもいいのだぞ?」


「ぼ、僕、ずっとエルフ族の里を出たことがなかったから同族以外のお友達がいなくて!! ずっとお友達が欲しかったんです!! なのでお宝は大丈夫です!!

 それに――金銭のやり取りでつながるのはお友達じゃないので!!!」


 アリスの言葉を耳にした守天はひとしきり笑った後、「我の名前は守天。それじゃあ、これからよろしくなお嬢さん」と言いながらその小さな手を優しくにぎった。


 こうして守天と友達になったアリスはすぐにでもデュランへ紹介しようとしたが、突然聞こえてきたデュランの宣誓せんせいに怒り狂い。先程使ったスカイジャッジメントをデュラン目がけて発動しようとするのを守天が慌てて止めたことで、二人は友達になって早々そうそうに喧嘩をするのでした。

 そしてこの十年後。守天の招待しょうたい大江おおえ山の中にある鬼人族の里をデュラン達は訪れるのですが、そこである事件に巻き込まれます。

 それから戦いを経て過去の遺物をデュランがほうむるのですが、そんなことは怒り狂っているアリスには関係のないことでした。今はまだ。


「――デュラアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッッ!!!!!!!」


「落ち着くのだアリス!! 後で一緒に話を聞きに行こう!! だから今は落ち着けッ!!!」


 ――何アリスに羽交はがめしてんだあの野郎、後で殺すッ!!


 そしてデュランはそんな二人に嫉妬しっとしつつも位置が重なっているため、守天を殺すことができないと怒りで震えているのでした。……似た者夫婦!

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