機神

https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330666676127627


 アイディール神国。

 今や世界中へ支部を持つ起源統一きげんとういつ教団の本拠地として人々に知られているこの国は、他とは比べものにならない強大な科学力を使い世界各地で多種族をずっと蹂躙じゅうりんしてきたが。

 今までの行動のけが回ってきたのだろう、今日は逆にアイディール神国がたった一人の剣士によって襲撃しゅうげきを受けていた。

 その剣士がアイディール神国の防衛戦力であるロボットも駆けつけた守備隊も全て一刀の元に斬り伏せた後、ゆらりと刀を動かしたかと思えば固唾かたずんでその様子を見ていた住人は全員が気絶した。


 殺気を乗せた一閃いっせんによって剣士を見ていた人々は傷一つないはずの体を斬られて死んだと錯覚さっかくし、一人を除き全員が例外なく意識を失っていた。

 ――そんなはなわざをやってのけた剣士の名前はデュラン・ライオット、宣誓せんせい通りこの国をぶっ潰しにきた剣神けんじんの名をかたる悪党である。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330666676025780


「……実物は映像で見るよりも更に数倍恐ろしいな、初めまして剣神殿。私の名前はアーロゲント・アイディール、この国を治める法王だ。

 そして愚問ぐもんかも知れないが一応いておこう――俺様の国へ何しに来た。理由によっては殺すぞ、剣神化け物


 デュランはその言葉を耳にするとアーロゲントへ馬鹿ばかを見ているかのような視線を向けてから、これ見よがしにため息を吐いた。


「――もしも、この国をぶっ潰しにきたと言ったところで剣神を殺せるのか。神の寄生虫宗教国家の王様は」


「――殺せるに決まってんだろ、人族の科学力をめんじゃねぇッッッ!!!!」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330666676243280


 そんな会話を交わした後。アーロゲントの体へ一瞬で機械の鎧が装着そうちゃくされ、デュランの予想を上回る速さで光波ブレードを叩きつけてきた。

 以前闘った巨大な蜘蛛くも並のスピードは目を見張るものがあったが、あれからも毎日修行を続けて強くなっていたデュランは簡単に受け流し。そのこぶしで鎧をあっさりと破壊した。


 ――これがデュランという男の恐ろしさだった。

 デュランは闇属性の耐性を持たない都合上、呼吸や筋肉の動き、そして魔力を取り込む際は光属性だけを取り込むなどの無意識下での行動も含めて体の動きを全て完璧に制御することができる。

 そして筋肉が破壊と再生を繰り返してより強靱きょうじんになることをデュランは知っていたため、普段生活をする時やアリスと性活せいかつをする時、はたまた寝てる時も含めて丸一日中筋肉の破壊と再生を繰り返えし。常に強くなり続けているのだから敵対者はたまったものではなかった。


「そ、そんな馬鹿な! 科学と魔法を融合ゆうごうさせた魔導鎧まどうよろいがこうもあっさりと!! やはり、本当に、コイツは剣神の生まれ変わりなのか!!?

 ――だが、例えそうだとしても最期に勝つのはこの俺様だッ!!!」


 そんなことを知るよしもないアーロゲントはあわれにも真っ正面から戦いを挑んでしまったため、いとも容易たやすく敗北してしまいました。

 しかしその口から血反吐を吐きながらも笑みを浮べたアーロゲントは雷属性の魔力を手刀に宿してからそれを突き刺した――自身の胸へと。


「な、何を!?」


「……一度負けたのならアイディール神国はもう終わりだからな、多種族がこの国を許さんだろう。二百年間守り続けてきた人族の平和が崩壊するところなど俺様は見たくないんでね。

 俺様が死ぬのと同時に宇宙の衛星えいせいから光の柱が落ちてくる、この国をまるごと消すくらい巨大な物がな。

 これで国民は幸せなまま死ぬことができる――再び多種族にしいたげられることもなくな」


「どういう意味だ、それは!」


 デュランはまるで最初は人族が多種族から侵略を受けていたかのようなことを言うアーロゲントを問いただしたが、アーロゲントはただ笑みを浮べながらデュランの背後を指差した。

 そのアーロゲントの行動でようやくデュランは何者かが背後へいることに気が付いたが少し遅く、なんとか天晴で防御したが。信じられない力で近くのビルに吹き飛ばされた。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330666675995724


機神きしんガブリエル。再現して作った偽物じゃない、本物を俺様達人族が発掘して再生した物だ。

 仮に貴様が本物の剣神だとしてもこの機神を相手取りながらこの国の破壊は防げまい、もう一度言うぞ――俺様の勝ちだッ!」


「ッ!? ――勝利しょうりだけをねがうならつるぎきばと変わりなし、つらぬがたじんみちまもくものひとという」


 デュランは全身を走り抜ける激痛を無視しながら天下無双の詠唱を開始し、転移したかのような速さで目の前に現れたガブリエルの光の刃を天晴で受け流そうとしたが。

 力の差がありすぎて無理だと瞬時に理解し、あえて体から力を抜くことでガブリエルの手で遠くへと運んでもらった。


無辜むこたみがため、つるぎとなりててきつ 」


 それでも再び目の前に現れたガブリエルの連撃をなんとか紙一重で回避し続けたが、最初の一撃の影響で足を取られて体が空中に投げ出された。

 とっさに界破斬かいはざんで空間を切り裂くことでガブリエルの攻撃を素通りさせてなんとか事なきを得たが、まだ危機的状況なのは変わらない。再び迫る光の刃を天晴で迎撃してあえて吹っ飛ばされた。


「ただ一筋ひとすじ閃光せんこうを、おそれぬのならるがいい――天下無双てんかむそうッ!」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16818093083880015232


 そうして時間を稼いだことでなんとか天下無双の詠唱を終わらせることができたが、それでもなおガブリエルの方が速く先手を取られた。


「界破斬――だん


 しかし普段だったら使うことのできない巨大な界破斬でガブリエルを飲み込み、上空から迫っていた光の柱の前に放り出した。

 そして全力の嵐流刃らんりゅうじんを地上から放ち、はさちにしたことで機神ガブリエルは完全にこの世から消滅した。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330666676062374


「クソッタレめ! 完全に押されてる!!」


 しかし上空で迎撃することができた光の柱は出力をどんどんと上げてきており、このままだと押し切られかねなかった。

 正直アイディール神国には思い入れもクソもないので消滅してもらって構わないが、あんな物が落っこちてきたら間違いなく他の場所にも影響がでる。

 それがアリスへ不利益をもたらす可能性があるし、何よりもアイディール神国からそれほど離れていない位置にアリスが眠る荷車があることを考えれば逃げることはできなかった。


「――デュラン! 大丈夫!!」


 それでも打開策が思いつかず徐々に押し込まれていたデュランはもう一条の光の柱が地上から伸びたと思えば聞こえてきたアリスの声でおどろいたが、その声はデュランへ信じられないほどの力を与えてくれた。

 しかしアリスがここにいるのは想定しうる最悪の状況だった。


「なっ、アリス!? こんな危ない場所に何で来たッ!!!」


「――僕がデュランの家族だからだよッ!!! 家族だから心配なのッ!!! 分かりなさいよバカアァッ!!!!」


 こうならないためアリスが寝てる中一人で全てを終わらせるのを狙って仕掛けたのに、という思いからつい怒鳴どなってしまったが。

 返された言葉で一瞬頭が真っ白になり、デュランは呆然ぼうぜんとなりながらアリスの方へと視線を向けた。


「デュランが僕を危険な所へ行かせたくないのと同じくらい、僕だってデュランのことが心配で心配でたまらないんだ!

 ……だから僕を一人にしないで、置いていかないでよぉ」


 そしてデュランは静かに涙を流しているアリスのことが視界へ入り、首の皮膚ひふをかきむしりたくなるほどの後悔をすることしかできなかった。


「アリス……ごめんな、俺が間違っていた。アリスのことが大切だったら隠すんじゃなくて守るべきだった。

 ――だからここからは一緒に闘おう、力を貸してくれアリス!!」


「――デュラン! うん、分かった!!」


 思えばあの時ベルメーアでアリスを目の前でさらわれてからずっと焦っていたのかも知れないと、どこか冷静な部分が思うのを感じながらデュランは正直な気持ちをアリスへ伝えた。

 そしてアリスと二人で息を合わせて光の柱を少しずつ押し返したが、光の柱の出力は強くなり続けていて押しきることができなかった。


「クソッ、押し返しきれない! どうすればいいんだ!!」


「デュラン! 界破斬であの大っきいのを飲み込めないかな!!」


「いや、無理だ! 界破斬は一時的に空間を斬っているだけだから、相手の攻撃を飲み込み続けることはできない!

 ――飲み込み続ける? そうか! その手があった!!」


 デュランは光の柱を押し返しきれずどうすればいいか悩んでいたが、アリスの言葉で界破斬と嵐流刃を組み合わせれば相手の攻撃飲み込み続けながら上空の衛星をなんとか破壊できるかも知れないと思った。

 できるかどうかは分からなかったがアリスが隣にいるのだ、できなくてもやらなければならない!


「――これでどうだァッッッ!!!!」


 そうして放った一撃は光の柱を飲み込みながら上空へと昇っていき、最期には衛星を飲み込んで完全に破壊した。

 それを見届けたデュランは天下無双をその場で解除し、道路の上に仰向あおむけで倒れた。


「アリスが来てくれなければ危なかったかも知れない、ありがとう助かった」


「ふんっ、家族だから助け合うのは当たり前のことだもん! お礼なんかいらない!!」


 デュランは心の底からお礼を言ったが、アリスは少しむくれてそう言うとそっぽを向いてしまった。

 デュランはそんなアリスのことをとても愛おしく思いながら笑顔で言葉を続けた。


「……そうかお礼に今夜はアリスと二人で新しいプレイをやろうと思ったんだけど、いらないのかぁ。

 それじゃあ仕方ない。今夜は天晴に相手してもらおうかな、アリスがよかったんだけどしょうがないなぁ……」


「――! 嘘っ、お礼いる!! だから今日も一緒に寝るの!!!」


「分かった、じゃあ今夜も一緒に寝ような。アリス」


 こうして純粋じゅんすいな少女を自分色に染め上げた悪党のデュランは今夜もこうしてアリスとつながり、その体を堪能たんのうするのでした。

 ちなみにプレイの内容は疑似ぎじN〇Rセッ〇スをしながら相手役のデュランがアリスを言葉ことばめするという物になりました。……うん、実に変態へんたいですね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る