天晴

「おい、お前ら自己紹介しろ。自身がどういう人間なのか、何が出来るのか、全部話せ」


 青々とどこまでも続く草原の中、デュランは荷車を引きながら横を走る木製の馬車のクラウン達へ自己紹介するよう命令した・・・・


「私の名前はノア、亡国であるスミス王国の元姫ですわ! 見ての通り髪と目が茶色なので土属性の魔法が使えますの、土属性は癒やしの属性ですので回復魔法が得意ですわ。

 他の人には優しいとよく言われますが私にはよく分かりません、後ルイスのことが大好きですわ! って何を言ってるんですの私は!?」


「俺の名前はルイス、亡国であるスミス王国で王族の護衛をしていた元親衛隊しんえいたい隊長だ。

 もっとも貴様ら人族相手に部下も主である王も守れなかった敗北者だがな!! 俺は目と髪が赤色だから火属性を使うことができる。

 火属性は強化の特性を持っているので自身の体と武器を強化して敵陣へ突っ込むなどの戦法が得意だ、俺もノアのことが好きだ! ――やっぱり人族はクソだな」


「我が輩はクラウン。木人族の国であるフォレスト王国の王族ですなw、ただ継承権は十三位なので大したことないでござるよww。

 そこのお嬢さんと同じように髪と目は緑色なので風属性が使えますなw、風属性は補助の特性なので魔法自体は戦闘に向いてませんなww。

 木人族が全員持っている特性として体の木で色々できるでござるが、我が輩は弱いので守って欲しいでござるよw。

 所でお嬢さん、同じ属性を持っているよしみで今晩どうでござるかw、我が輩はテクニシャンでござるよww」


「名前はリーベ、種族は機人族だが残念ながら私は一般人だ。目と髪は紫色なので雷属性が使えるな、雷属性は付与の特性を持っているから道具を使って闘うのが得意だ。

 最近のお気に入りは人族の兵士からうばったこの光波ブレードだな、後は体を改造しているからこんな感じに腕を飛ばすことも出来る――あぁ、これは素晴らしい技術だ。人族はやはり最高だな!」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330664564344602


 奴隷紋どれいもんは力で劣る人族が多種族を奴隷にするため科学と魔法を組み合わせて開発した物であり、紋章もんしょうを刻まれた本人の意思を無視して命令通り動かすことができる代物だ。

 命令権を持つのは本来持ち主であるヴィンデだが「私の命令と平行してデュランとアリスの命令を絶対遵守じゅんしゅすること」と命令されているので、クラウン達はデュランの命令にも従わなければならなかった。


「僕の名前はアリス! エルフ族の里の――あうッ!?」


 取りあえずクラウンを絞めるため荷車の隣を走っている木製の馬車へ乗り込もうかと思ったが、アリスが話す必要のない情報を話そうとしたのでとっさに口付けで口を封じた。

 ……目を白黒させているアリスが可愛かったので今回は止めておこう、というか先ほどのクラウンの挑発と徹夜てつやした影響で昂奮こうふんしてもう辛抱しんぼうならねぇ。

 そのまま荷車の中に入って布団をしいてからぱじめることにした。


「クラウン達はそこで待機してろ。荷車の中を絶対にのぞこうとするな、見ようとしたら殺す。

 特にクラウン、分かってると思うが俺は殺すと言ったら確実に殺すからな」


「我が輩はそんなことしないでござるよw、実に情熱的でござるなデュラン殿は! 心配しないでも先程のは冗談でござるよww。

 我が輩は胸がでかい女が好みでござるからなw」


「はいはい、私は銃のメンテナンスをしてるからお二人でゆっくりどうぞ」


 クラウン達に釘を刺した後、アリスをゆっくりと布団の上に下ろしてから「アリス、ごめん。我慢できない」と言ってから彼女の服を脱がした。

 するとアリスがほおを赤らめながら首を縦に振ったので前戯ぜんぎをきちんとしてからアリスと一つになり、楽しい時間を過ごすのだった。


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「そう言えばデュラン、僕の見間違いじゃなければいつもデュランが使っている属性は光属性だよね?

 光属性は七大竜王のリーダーである光竜こうりゅうライオード以外持ってないと昔読んだ本に書いてあったんだけど。どうしてデュランは光属性が使えるの??」


「……う~ん、そうだなぁ。少し長くなるぞけどいいか?」


 一時間ほど経ち。楽しい時間を過ごして満足していたデュランは突然されたアリスからの質問に少しの間考え込んだ後、答えだけを話しても返って分かりづらくなると判断して一から十まで全て話すことにした。

 長くなっても大丈夫か訊いてみたがそれでもいいと言われたのでヴィンデに拾われた時の話から語り始める。


「俺はアイディール神国のスラム街に捨てられていた捨て子でな、偶然ぐうぜん通りがかったヴィンデに拾われたんだが。その時には生死の境を彷徨さまよっててな。

 アリスが言うように黄色の髪をしていた俺は光竜ライオードと同じく光属性を持っていたんだが、これがよくなかっんだ」


「……どうして?」


 少し不安そうにしているアリスの頭をなでて落ち着かせてからデュランは続きを話した。


「そもそも光属性と闇属性が混ざり合ってるものを魔力って本来いうんだけど、俺は誰でも持ってるはずの闇属性への耐性たいせいを持たずに生まれてきた身障者しんしょうしゃだった。

 だから周囲の魔力を代謝で取り込むたびに体が弱っていき、本来ならそこで死んでいたはずなんだが。

 俺を見つけたヴィンデが、闇属性を通さない結界をってくれたから俺は生き残ったんだ」


「そんな――うぅっ」


「ッ!? ――こうして生きてんだから気にすんなってアリス! 取りあえずあめ、いるか?」


 泣きそうになっているアリスの姿に慌てたデュランは荷物から出した飴を渡し、抱きしめて背中をとんとんと叩いていると涙が引いてきたので。続きを話した方がいいか訊いてみると首を縦に振ったので口を開いた。


「どんな生き物でも一つだけ持っている属性は火・水・風・土・雷の五種類があるがあれは万象ばんしょうつかさどる光属性と幻想げんそうを司る闇属性の比率によって決まっているんだ。

 だから髪と目の色は五種類しか無いんだけど、光竜ライオードと闇竜あんりゅうファフニールは光属性と闇属性が意思を持った特別な存在だから平気なんだけど。魔物も恐らくこれに近い存在なんだと思う」


「では、デュランは今どうやって闇属性を吸収しないようにしているのですか?」


 アリスからの質問に少し考えた後、デュランは見せた方が早いと判断して手の平へ普段は散らしている闇属性を集めた・・・・・・・


「こうやって光属性だけ体に取り入れてるんだ、ただ闇属性だけを抽出ちゅうしゅつすると危ないから普段は残ったものは散らしてるけどね。

 ちなみに魔力がないと魔法は使えないから本来俺は光属性で物を創ったり、魔力で体や刀を強化する魔術しか使えないけど。体へ闇属性を無理矢理取り込むことで奥の手魔法を一時的に使うことができるんだ。

 ……まあ、最低でも丸一日は寝込むことになるから使いたくないけど」


「……どういう理由でそんなことをしたんですか、理由によっては怒りますよ?」


 デュランは可愛い顔ですごまれても正直甘やかしたくなるだけであまり効果はないと思ったが、その顔をまだ見ていたかったので指摘してきせずに話を続けた。


「もちろん最初からやろうと思ってやったわけじゃない、命がかかってるからな。

 ただ光竜との闘いで余裕がなくなって気が付いたらとっさに闇属性を取り込んでたんだ」


「そうですかよかった――って、光竜との闘いッ!? なんですかそれは!!」


 デュランの言葉を聴いたアリスは安心したのか表情をやわらかいものにした後、光竜との闘いという単語に驚愕きょうがくして目を見開いている。

 デュランは何でアリスが驚いたのかよく分からなかったが、取りあえず質問に答えることにした。


「……当時の俺は武器である刀に満足できず悩んでたんだよ、光属性だけの特殊な魔力の全力を受け止める器が刀の方になくてな。

 それで光属性を唯一扱っている光竜ライオードの爪をへし折って刀の材料にしようと思ってな、大樹ユグドラシルを訪れて光竜ライオードに喧嘩を売っ・・・・・たんだ・・・


「そうだったんですか、なるほど――って、なるわけないでしょう!? なんで喧嘩売ってるんですか!! 普通にお願いすればいいじゃないですか!!」


 デュランはアリスからのツッコミに目をらしながら言い訳を考えたが、特に思い浮かばなかったので口を開き。


「いや~、いい修行になるかなと思って闘いを挑んだんだけど、思ったより強くて死にかけたんだ。

 恐いよね、若さゆえのあやまちって!」


「このおバカ!」


 正直に言ってみたが許されなかった。

 そのまましばらくの間お説教をされたが、怒っているアリスもとっても可愛いなと思いました。マル。







「ハアッ、ハアッ、少しは反省しましたか? デュラン」


「はいっ、反省しました! 続きを話してもいいでしょうか!」


 そう言って返事をしてみるとアリスは呆れながらも許可をだしてくれたので続きを話すため、布団の近くに置いていた刀――天晴てんせいを抜いた。

 天晴は黄金色のつばと刀身を持っている刀で全長は2尺4寸5分であり、あざやかな木目もくめ小波さざなみのように走っているさやは加工などは一切ほどこしてない自然な美しさを持っている自慢の相棒だ。


「もらった砂鉄の鉱床こうしょうとへし折った光竜ライオードの爪を使って鍛錬たんれんした刀で名前は天晴だ。心鉄しんがねには闘いで折れた前の刀を使用してるからある意味生まれ変わりだな。

 さやには光竜ライオードからもらった大樹ユグドラシルの枝木を使ってるんだ、綺麗きれいだろ?」


「はいっ、とっても綺麗です! ……もしかしてですけど大樹ユグドラシルの砂鉄って近くの川から少量しか取れない、伝説の金属であるオリハルコンじゃないですかね。

 その鉱床とかとんでもない価値があるのでは?」


 デュランはオリハルコンのことを知っているアリスに感心しながらも「もらった物だから金銭にえようとかは思わなかったな、なんならまだここにあるぞ」そう言って奥の方に置いてあったオリハルコンのインゴットを持ってきた。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330664564414489


「なんで荷台に野ざらしで置いてるんですか!? 仮にも伝説の金属ですよ!!?」


「伝説といっても大樹ユグドラシルの下にいっぱいあったし、そこまでするほどの物でもないだろ?」


「何言ってるんですか、ありますよ! 取りあえず僕の袋の中に入れときますからね!」


 アリスからすごい剣幕けんまくでそう言われたので大人しく渡してから、取りあえず色々な液体でグシャグシャになった布団を片付けるかと着替えて外に出た後。

 手から出した真水で布団を洗ってからルイスに乾かすよう命令して荷台へ戻り、アリスの着替えを手伝ってからもう一本のわき差しもオリハルコンで出来てることを説明した。


 するとアリスから光竜ライオードとの闘いの詳細を知りたいと言われたのでデュランは当時の闘いを思い返し、闘いの始まりは『光竜ライオードその爪、俺がもらうぞ』だった。と言葉にして笑みを浮べると。

 あの時のように鯉口こいくちを切り、天晴の刃を見せながら続きを話した。

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