火の国

 の国。

 デュランが使っている刀や着物が初めに創り出された国であり、妖怪として火の国の住民から恐れられつつも多種族が暮らしている国の一つだったため。

 本来ならば今頃はアイディール神国の手で滅ぼされていたかも知れなかった国だが。

 この国を守護している炎竜えんりゅうフラムバーンが起源統一きげんとういつ教団の信仰対象である七大竜王の一匹だったことと、さむらいという頭のおかしい戦闘狂せんとうきょう集団が国を守っていたことが一因いちいんとなってこの国は無事だった。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330666765456468


 デュラン達はグリード王国とアイディール神国の新しい王が決まった後、生まれたばかりのヘルトを連れて世界各地を旅していたがどこにいっても剣神、剣神とうるさく。家族の時間を邪魔されたため。

 鎖国さこく国家であり、剣神が再び現れたことを知らない火の国で家族仲良く暮らしていた。

 そして今日は十歳の誕生日を迎えたヘルトへとデュランは誕生日プレゼントとしてアルムの作った刀を渡した後、火の国の道場でそれぞれが木刀を手に向き合っていた。


「父上! 今日こそは父上に一撃入れて見せます!!」


「いや、それ多分無理だからね。俺をこの場から一歩でも動せたらにしようぜ。

 それでもちゃんとお菓子かしを買ってあげるからね? ねっ?」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330666765388572


 デュランはそう言いつつも負けず嫌いの俺とアリスの息子だし、絶対素直に聞き入れないだろうなぁと思っているとあんじょうヘルトはほおふくらませながら木刀をぶんぶんと振った。

 危ないなぁと思いながらも「……俺の息子、可愛いなぁ」とデュランのようなかっこいい男を目指しているヘルトが聞いたら怒るだろうひとごとを小さな声でつぶいていると、立ち直ったヘルトが真剣な表情で刀を晴眼せいがんに構えた。


「私だって父上の二番弟子なんです!! それくらい出来ねば母上に笑われますッ!!」


「いや、多分笑わないと思うけどね。

 ――分かった! じゃあ、疲れるまで付き合ってあげるから俺に一撃入れてみろ!!」


「はいっ! 行きます!! やああああっ!!!」


 デュランはヘルトが魔力で体を強化しながら十回ほど床を蹴り、このとしにしては速すぎるくらいの速度で突っ込んできたことが嬉しくて笑みを浮べたが。

 今は修行をつけている最中さいちゅうだと表情を引きめ、迫る木刀を完璧に受け流し。一回転したヘルトは顔面から床へと叩きつけられた。


「ぐっ、まだまだァッ!! たあっ!!」


りきみすぎてる、そんなんだとこうやって簡単に受け流されるぞ!」


「――あああああああああああああっっっ!!!!!!!!!」


 再び向かってきたヘルトの木刀をデュランはあっさりと受け流し、ヘルトは自身の勢いのまま天井に叩きつけられた。


「くそっ! やああああっ!!!」


「動きが直線的すぎる、もっとフェイントを入れろ!」


「――うぎゃっ!??」


 それでも天井の板を蹴り、こちらへ向かってきたヘルトの一撃をデュランはまた受け流し。その進行方向に木刀を置いておくとヘルトは木刀へと頭をぶつけた。

 そのまま目を回すヘルトの脳天目がけてデュランは木刀を片手で軽く振り下ろしたが、ヘルトはなんとか反応して避けて見せた。


「よく避けたと言いたいところだが、甘いわッ!」


「――きゃんっ!?」


 デュランは自信の一撃を避けるためとっさに横へと飛んだヘルトの服を手で掴み、勢いよく壁に投げつけた。

 ヘルトは流石に反応しきることが出来ず、壁へとそのまま叩きつけられた。


「……痛いっ」


「――闘っている最中に動きを止めるな! 馬鹿ばかたれがッ!!」


「うわぁっ!!? ――あぎゃっ!!!?」


 デュランは壁の下で涙目で動きを止めるヘルトに容赦なく三つの飛ぶ斬撃で追撃をかけると、ヘルトはなんとか反応してその攻撃を避けたかと思ったが。

 ブーメランのように帰ってきた斬撃が体を打ち、床へと叩きつけられた。

 それでもなんとか立ち上がると燃える闘魂とうこんをその目に宿し、自身も飛ぶ斬撃をデュラン目がけて放った。


「格上相手に遠距離えんきょりで闘うな! こうして返されるぞ!!」


「あぎゃんっ!!!? ――まだまだァッ!!!!」


「――そして無闇矢鱈むやみやたらに突っ込むな、今日はここまでだな」


 自身が放った数十の飛ぶ斬撃をそのまま返されてその体を滅多めったちにされたヘルトは一瞬気絶したが、すぐ立ち上がると再び突っ込むもその先へとデュランが木刀を置き。自身の力が乗った一撃を頭へと食らったことでヘルトは今度こそ完全に気絶した。

 デュランはそんなヘルトの姿にこんな世界じゃなければもう少し優しく教えてやれるのになぁと思いながらもヘルトを治療してから背負い、今日は頑張っていたので羊羹ようかん栗饅頭くりまんじゅうを買ってから家へと帰り。

 後から起きたヘルトにお菓子を食べさせようとしたが、誰へ似たのか受け取ろうとしないヘルトの口に栗饅頭を入れようと格闘していると。手紙を持ったアリスが部屋へと入ってきた。


「デュラン、守天さんからの手紙だよ! 今度家族で鬼人族きじんぞくの里へ遊びに来ないかだって!! ヘルトも連れて遊びに行こうよ!!!」


「そうか、それじゃあ家族全員で遊びに行くか。最近スミス王国を再興したルイス達も連れて」


「――も、もががっ!??」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330667246352346


 デュランは頑固なヘルトの口に栗饅頭を詰め込みながらそう言うとアリスを抱きしめ、再び大きくなり始めたそのお腹をなでてから立ち上がり。ルイスとノアへの手紙を書くのでした。

 ちなみにクラウンとリーベはヘルトの教育に悪いからという理由でハブられました。……うん、色々な意味で仕方ないね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る