HERO
「ルイスがいるとはいえ、神様が相手だから何が
何かあったらお前がこの場所を守るんだ、自分の身を守りながらな――できるか、ヘルト」
「父上、私は――」
私は父上の言葉を聞いて
何故ならそれは神様が何かをしてきてノアさんや
まだ子供だから無理だと言っても恐らく父上は否定しないのだろうと思ったが、私の答えは初めて父上の闘いを目にした時から決まっていた。
「――
私は最強の剣士デュラン・ライオットの二番弟子! 必ず父上の期待に答えて見せます!!」
そう言うと父上は
「無理はするなよ、ヘルト――俺は天幕やルイス達よりもお前の方が大事だ。
守り切れないと判断したら、何もかも捨てて逃げろ。約束だぞ」
「――はいっ!!」
私へ最後に父親としての言葉を残した後、父上は先に
今の私では
「イヤァッ! ――私の中に入ってこないでッ!! お願い
「ッ!? ――もう大丈夫だから!! だから深呼吸をして!!」
私が
私は警戒をルイスさんに任せてから杏香へ
震えが止まるまでそうしていると、五分ほどかけてなんとか杏香は落ち着きを取り戻した。
「ハアッ、ハアッ――名前はヘルトだったわよね。今、どうなっているの?」
「……それは、その」
私は何かを悟っているような表情の杏香に本当のことを言おうか悩んだが、言わなくても思い出すかもしれないと考えて口を開いた。
「――
「……そう、なの。ありがとう、教えてくれて」
そう言った私はもしかしたらまた泣き叫ぶかもしれないと思って身構えたが予想とは違い、杏香は声を上げず静かに涙を流した。
私はその姿を目の当たりにして
「なっ、何すんのよヘルト!!
「悲しい時は思いっきり泣いていいんだ! 無理して自分を押さえ込むな!! 君が落ち着くまで私はここにいる!!! ――だから、安心してくれ」
「――い、って、えっ」
私は父上から剣を習い始めたばかりの頃。何時まで経っても父上の剣技を身につけることができず、よく
そうしていると迎えに来た母上が私を抱きしめながら言ってくれたことをそのまま杏香へと言ったが、私の
だが理屈を頭が考えるよりも速く体が動いてしまったため、もうこうなったらヤケクソだと思いながら杏香の背中をなでた。
「……パパ、ごめんなさい。私のせいで――うわああぁぁぁんッ!!!!」
「……
ヘルトは大声を上げて泣き始めた杏香の姿に怒りを燃やしたが、今の自身ではどうすることもできないと理解していたため。己の弱さを恨みながらその拳を握り
そうして杏香を抱きしめていると強い気配を感じ取り、杏香を背中にかばいながら刀を抜いた。
「――なるほどな、あの剣神の子供だけあって勇気があるな。だが、勇気だけでは力の差はどうしようもないぞ?」
「……ヘルト、逃げろ。お前じゃ、どうしようも――ガアッ!?」
「フハハッ、負け犬は黙っていろ」
https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330666849239604
気配の正体が酒呑童子だとその姿を目にして悟ると、何時
その行動を見た酒呑童子は
「
「……例え力で
「守る? この
私がそう返事をすると酒呑童子は青筋を立てながら姿を消したが、残像と気配だけを頼りになんとか振り下ろされた
それでも諦めず再び振り下ろされた金棒へ刀を振るったが吹き飛ばされてしまい、
「ッ!? ――ゲホッ、ゲホッ」
「その年頃にしては中々やるが、これで終わりだ。あっけな――何ィッ!?」
全身が燃えているかのような痛みで私は止めどなく涙を流しながらも
「――まだだッ! まだ私は闘えるぞッ!!」
「クソ生意気な
巨大な砲弾のように見える金棒が迫ってくる中、私は先程の攻撃を一応は受け流せたことから酒呑童子は技術が自身よりも未熟ではないかと思い。震える体で金棒を受け流してからその勢いを利用した反撃を
するとその一撃で酒呑童子の腹を切り裂くことができたのを目にし、私は後の先が取れるのならばなんとかなると判断し。
「――かかってこい!! 酒呑童子ッ!!」
「き、貴様アアアアアアッッッ!!!!!!!!!」
「……すごい」
そうして酒呑童子の攻撃を受け流し続けていたが、やがて体力の限界がきて天幕の外に吹き飛ばされた。
意識が飛びそうになりながらもなんとか体勢を立て直そうとしていると、誰かが私の体を受け止めた。
「――あっぱれ見事と言うしかないな、よくここまで頑張った。後は任せろ」
「……はい。お願い、します」
受け止めてくれたのは知らない人だったが何故か悪い人ではないと感じ、優しそうなおじさんにを後のことを任せて私は意識を手放した。
――守りたいものを守り切れた事実を
「――何者だ貴様は!! その小僧をよこせ!!!」
「断る。私はお前のような
黒神はそう言いながら優しげな笑顔を浮べ、自身ができなかったことを
そして水を差すようにヘルトを
「な、なんだこれは!?? ――まさか重力をッ!!!!」
「そう、
黒神はそう言いながらも十年後、恐らくこのヘルトという少年も己の前に立ち
ウィンクルム連邦国が
「――お前は黒神!? なんでお前がここに!!」
「……遅かったな、剣神。私がいなければやばかったぞ」
少ししてデュランが来ると黒神はそう言いながら酒呑童子を重力から解放し、その後の
その場を去ろうとしたが「待てッ!」と呼び止められたため立ち止まった。
「なんだデュラン、見て分かる通り。私はその子に危害を加えてないぞ? 」
「あぁ、分かってる。そんなことよりもどういう風の吹き回しだ、ヘルトを助けるなんて」
黒神はその問いへどう答えようか悩んだが、
「……十年後、私は今の世界に戦争を
「俺の前でそんなことを言うなんていい度胸してるじゃねぇか……今回だけは見逃す、だが次はない。
この世界を、いや――
黒神はその言葉を聞いて思わず高笑いしそうになったがなんとか耐え、再び歩き出した。
「ではまた十年後によろしく頼むよ、剣神」
「……
そう短く言葉を交わした二人は別々の方向へ向かって歩き出すのだった。
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