対談

 目を覚ましたデュランが感じたのは全身を炎で焼かれ続けているかのような想像をぜっする痛みだった。

 それは体や内臓ないぞうが痛むような普通の痛みではなく、デュランという存在のかくであるたましいが傷ついたことによって発生した物であり。さしものデュランでもどうしようもなかった。

 だが下手をすれば死にかねなかったことを思えばただの激痛でんだのは幸運だったとデュランは判断したが、それはそれとして痛みだけで死んでしまうのではないかという激痛で声にならない悲鳴ひめいを上げ。ベッドを思い切り殴りつけたことで右手の手首をった。


「――デュラン大丈夫ッ!! せんじた痛み止めの薬草を持ってきたわよ!! ないよりはマシだからみなさい!!!」


「……アリスは、大丈夫、か」


「えぇ、無事よ! だから一先ひとまずは自分のことに専念せんねんしなさい!!」


 その言葉をいてようやく安心できたデュランはもらった痛み止めの薬草を飲み込んで使った器をヴィンデに返そうとしたが、感覚の麻痺まひした左手では持ち続けることができず。ベッドの上に取り落としてしまった。

 落とした器を拾おうか悩んだが今のまま持とうとするとこわすのが目に見えていたため、大人しくベッドへと横になった。

 せめてヴィンデへ一言告げてから寝ようと思ったが痛みで気絶してしまい、次に目を覚ました時。とっぷりと日が暮れていた。


「ヴィンデ、アリスはどこにいる?」


「……本当に変わったわね、デュラン。案内するからついてきて」


 デュランは痛みがマシになっていたのでアリスの所へ行こうと思い立ち、ヴィンデへどこにいるのかいてみると案内してくれることになったので大人しくついて行った。

 案内された部屋は新しくとった部屋だったようで番号が知っている物ではなかった。――元々アリスとは同じベッドで寝ていたのだから当たり前の話だが。


つるぎとなりててきつ――天下無双てんかむそう


 アリスがおだやかな表情で眠っているのを目にしてデュランは安心したがねんのため、魔法を使ってからアリスの頭へ手を置いて体の隅々すみずみまで調べたが。異常はなく、ただ眠っているだけだと分かった。


「よかった、もう大丈夫みたいだな――ッ!」


 そうして安心していると心臓付近でするどい痛みを感じたことで立っていられず、デュランは木製もくせいの床へ頭を打ち付けてしまった。

 二秒程度でこのざまとはどうやら相当弱っているようだと、デュランが他人事のように考えていると小さい手でビンタされ。顔をそちらに向けると涙目のヴィンデがこちらをにらみ付けていた。


「――デュラン! 分かっているの!! 貴方のたましいはもう、限界なのよ!!!」


「……分かってるさ」


 そんな会話をしているとアリスが起きてしまたので思わず運が悪いとぼやいてしまったが、アリスに寿命じゅみょうの件を知られると心配をかけてしまうのでデュランはヴィンデへ何も余計なことを言うなと言ってから部屋を出た後。

 心臓が落ち着くまで空き地で休んでいるとアリスの声が聞こえてきたため、おどろきながらも表情を取りつくってアリスと会話していたが。

 デュランのことを元気づけようとするアリスの姿に別の物が元気になって・・・・・・しまい・・・、そのまま朝日が見えるまでぶっ通しでヤリ続けてしまった。


「もう朝か。そろそろ宿に帰るぞアリス、アリス? ……幸せそうな顔で気絶しているな。

 このまま寝かしておこう、天晴! こっちに来い!!」


「ひぅっ!?」


 デュランはそんなアリスの姿を誰にも見られたくなかったのでこのまま空き地へいることにし、体が冷えないようけ布団を創り出し。アリスへかけてから近くでデュランの護衛ごえいをしていた天晴を呼んだ。


「ご、ごごご、ご主人様。私のこと、いつから気が付いてた、ですか?」


「最初からだ。アリスが最優先だったから指摘しなかっただけだ、素振りをするから刀になれ」


 最初に目を覚ました時から天晴が護衛していたのは気が付いていたがアリスの無事を確認するのが先決だったため、指摘しなかっただけだと伝えてから素振りがしたいと言うと。

 天晴は急いで刀になったので、そのままアリスの寝顔を見ながら素振りを始めた。


「――ッ!」


 しばらくそうして素振りしていると背後に突然見知らぬ気配が出現したので、天晴でその気配を斬ろうとしたのだが。受け止められてしまった――指一本で・・・・


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330664561488537


「――病み上がりでこの反応速度は素晴らしいな、だが突然背後に現れたからと言っても斬りかかるのはやりすぎでは無いか? もしも一般人だったらどうするのだ?」


「……一般人は突然背後に現れねぇだろ、だからお前は斬っても問題ない」


「ハハハッ、確かに!」


 そう言いながらも目の前の男を斬ろうと力を込め続けても天晴はまったく動かなかったので蹴りで体勢たいせいを崩そうとしたが、まるで巨大な山を蹴ったかのような感触かんしょくを足に感じた。

 微動びどうだにしない男の姿はかなり不気味だったがそれでもアリスへ危害を加えさせないため、魔法抜きの全力で殺そうとしても。男には何一つとして通じなかった。


「お前、どんな能力を使ってやがる。光属性がまったく効かないなんて、今までなかったぞ」


「何、私の部下の能力である最強の能力・・・・・というやつだ。面白いだろう?」


全然ぜんぜん面白くねぇよ、クソが」


 デュランはそう言いながらもこのまま闘えば敗北するしかないと悟って冷や汗を流していた。

 いつもならば魔法を使えるから勝ち目もあったかもしれないが、今魔法を使うのは文字通りの意味で自殺行為だった。

 それでもアリスを危険にさらすよりはいいと一か八か魔法を使おうか悩んでいると、男は闘う意思はないと言うかのように手の平をこちらへ向けた。


「おっと、そんなに覚悟を決めた顔をするな。今回は・・・ただ話をしに来ただけだ」


「……信じられると思うか? お前、魔物を生み出している黒神こくじんって名前のやつだろ」


 デュランがそう言ってかまをかけてみると肯定するように男は笑みを浮べた。


「そこまで分かっているのならば話は早い、だったら今のお前を殺すのに態々わざわざこうして姿を現す必要がないことくらいわかるだろう? 剣神」


「……プライド王国の時みたいにこの国ごと吹き飛ばすと言いたいのか? だがあの蛇の魔王、いや大魔王はもう俺が殺している。同じことができるのか?」


「逆にくが、部下である大魔王にできることが。私に出来ないとでも?」


 黒神はそう言いながら蛇の大魔王と同じようにデュランの頭上へ小石を出現させて見せた。

 集中していたため。この小石は転移などで空間を跳躍ちょうやくさせたのではなく、元々デュランの・・・・・・・頭上には小石・・・・・・があった・・・・と現実をえたのだとハッキリと分かったが。

 分かったからと言ってそう簡単に対処できる能力ではないと、デュランは顔をしかめながら小石を拳ではじいた


「なるほどな、よく分かった。それでどんな話をするんだ、黒神」


「そうだな、では今までのことは全て水に流して手を組まないか?」


「寝言は寝てから言え」


 デュランはそう言い返しながらも万が一にもアリスへ手を出させないよう集中していたが先程言った通り、今回は話をしに来ただけなようでただ肩をすくめるだけだった。

 そして「これは手きびしい、それでは本題を話すとしよう」と言いながらこの大陸で一番大きい起源統一教団の支部があるグリード王国の写真をこちらへと見せてきた。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330665993022488


「今から三日後にこのグリード王国へ鳥人族ちょうじんぞく鬼人族きじんぞく巨人族きょじんぞく竜人族りゅうじんぞく機人族きじんぞく獣人族じゅうじんぞく馬人族ばじんぞく木人族もくじんぞくの八種族からなる連合軍が戦争を仕掛けるそうだが、どうするのだ剣神」


「……そんなことを教えて俺達にどうして欲しいんだ黒神、それと前の蝙蝠こうもりも言ってたが剣神って俺のことか?」


「あぁ、敬意を込めてそう呼ぶよう私が魔王達に通達した。

 それとこの話を伝えた目的だったら観察かんさつするためだ、実に簡単な話だろう?」


 デュランは黒神の話した内容が予想外の物だったので思わずまゆをひそめながら聞き返してしまったが、それに対して黒神は観察するのが目的と言い放ち。

 何らかの装置を取り出し、スイッチを押して空中へと映像を投影した。


『よし、分かった。

 ヴィンデ、起源統一教団をぶっ潰すぞ!! 最終的な目的地はアイディール神国だ!!』


『……それが出来たら苦労はないって言いたいけど、デュランなら出来ちゃいそうよね。

 仕方ないわね、私も付き合うわよ。いくらデュランでもアイディール神国を一人で相手するのはきついでしょうから』


『ちょ、ちょっと待ってください!? そんな簡単に決めていいんですか!! 相手は国を消せる兵器を持っている超大国なんですよ!!!

 デュランがいくら強くても危険なんですからもっとしっかり考えてください!!?』


『よく考えたぞ、考えた上で潰すって言ってるんだ。アリスの夢は夫である俺の夢でもあるからな』


『じゃあもう一度よく考えてください! 彼らは多種族を助けたという理由で人族の国であるウィンクルム連邦国さえも消したのですよ!!

 デュランが人族でも彼らは容赦なんかしませんよッ!?』


『知ってるよ、前にヴィンデと一緒にいるからって理由で教団の連中に襲われたことがあるからな。まぁ、うるさいから斬ったが』


『えぇっ! 教団員を斬ったアァッ!?』


『なっ、何を』


『アリス、分かったか? 俺はもう教団に喧嘩けんかを売ってるんだから今更過ぎるんだよ、そんな心配。

 それと一回しか言わねぇからな、今からいう言葉をよく覚えておけよ』


『――俺の名前はデュラン・ライオット! 剣神を超えて世界一の剣士になる男だ!! だから!!! だから――妻の願いを叶えるなんて朝飯前だ。

 遠慮なんかすんな、お前は俺の妻なんだろ?』


 そしてその映像の内容がかつてエルフ族の里を出た直後、アリスとデュランが約束をするまでの会話だったことにデュランは目を見開きながら固まったが。

 その頃から何らかの手段を使ってこちらの情報を得ていたのだと理解すると同時、この前斬り捨てた影を支配する能力を持った吸血鬼の男の気配に襲撃されるまで気がつけなかったことを思い出し。コイツだろうと思ったが、黒神へ一応確認することにした。


「……俺が斬ったあの蝙蝠の能力か、これは」


「その通りだ、そして私の最終的な目的も起源統一教団を潰すことでね。ここは一つ情報を与えてみようと思ったのだ。

 仮に起源統一教団を潰せず、戦争も止められなかったとしても魔物にできる死体を大量に手に入れられるのだ。利用しない手はなかろう」


「クソ野郎めッ! 死にやがれ!!」


 自身の予想通りだったことに舌打ちしながらもデュランは黒神へ中指を立てて罵倒ばとうしてから納刀すると、アリスを抱き上げて宿の部屋に戻るため歩き出した。

 そうして宿に戻ろうとするデュランへ手を振りながら黒神は声をかけてきた。


「それでは楽しみにしている、剣神」


「クソくらえだ! 必ず殺してやるから覚悟しとけ、黒神」


 最後にそんな会話を交わした両者は空き地を立ち去り、その場には布団だけが残るのだった。


 そしてその二日後。体の回復とアリスの武器である棒の鍛錬が終わったデュラン達はアルムへお礼をしてからグリード王国を目指して旅立ち、様々なことがあったベルメーアをったがその際。

 デュランが荷車を持ち上げてからすさまじい速度で走り出したので、荷台のアリス達は恐怖のあまり悲鳴を上げることになるのでした。チャンチャン♪

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