洗脳

「……こ、ここは、ど、こ、にげ、な、きゃ」


 助け起こした少女の不意打ちで僕は魔力のほとんどを奪われて気絶してしまい、次に目を覚ました時。どれだけの時間が過ぎたのか分からず。

 それでも早く逃げなければと四肢ししを動かそうとしたが。ガチャンッ、という金属音共に僕は四肢をくさりで縛られていることに気が付いて絶望した。


「ようこそ、聖女よ。私の物になりに来てくれて嬉しいよ」


「ぼ、くは、おま、え、の、ものじゃ、ない」


「今はそうだな、だがこれからそうなるのだよ。私の能力、洗脳によってね!」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330665321504464


 僕は洗脳という単語を聞いて恐怖した。

 何故ならもし、この背中に蝙蝠こうもりの羽がある男が言っていることが本当なら、彼は意思も思いも無視して僕を自分の物にできてしまうということに気が付いたからだ。


「い、いや、だ。でゅら、ん――た、た、すけ、て」


「助けなんてこないわよ、おバカさんね」


 僕は必死でこの場にいないデュランへ助けを求めたが、それを嘲笑あざわら蝙蝠こうもりの羽を生やした少女に再び首筋をまれた。

 すると次の瞬間。僕の体は僕の意思を無視して発情し、またからはいつもデュランと寝る時のように液体がダラダラとれだしてしまう。


「魔力を少し返してあげたわ、発情する媚毒びどく入りだけどね。

 弱り切った体じゃ、アグリ様の太くて長~い物を入れても反応がうすくてつまらないですもの」


「よくやったぞ、めて使わす。では、これより洗脳を始める。

 具体的にはデュランとやらへの感情を全て、この私アグリへ向けるようになるのだ! 嬉しいだろう、聖女よ!!」


「い、イヤァッ!! お願いやめてェッ!!!」


 そう叫ぶ僕を無視してアグリは僕の頭の上に手を置くと洗脳能力を使い始めた。

 すると僕の中のデュランへの思いも感情もアグリという魔王の手で全てえられていく、アグリのことが好きで好きでたまらなくなっていき。デュランとの大事な思い出はアグリとしたことになっていく。


 ――ごめんね、デュラン。僕は君のことを忘れるなんてこんなの耐えられない、だから僕はここで死ぬ・・・・・


「やめて!!! デュラン、助けてッ!!!!」


 婚礼こんれい前夜に初めてデュランと一緒に過ごした夜も、里の仲間達に祝ってもらった思い出の式も、ドライ王国で綺麗きれいな着物を買ってもらったことも。

 何もかもがデュランとの思い出ではなく、アグリとの思い出だと記憶をゆがめられる。


 ――僕はここで死んじゃうけどできるなら、僕のことを覚えておいて欲しい。


「イヤアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」


 そうして記憶が塗り替えられていく中で僕はデュランに助けを求めたが、それでも間に合わないことは僕自身が誰よりも理解していた。だから。


 ――さよなら、デュラン。


 そう心の中で呟いた後、僕は残った魔力を暴走させて自爆した――







 ――はずだった・・・・・


「死なせる訳ないじゃない、おバカね」


 ――えっ


 決死の思いで暴走させた魔力は何者かの手で元の状態に戻っていく。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330665300966374


 僕はこちらをバカにしたような顔で見ながら笑う少女の顔を目の当たりにし、自爆できなかった理由を悟った。彼女に魔力を返された時、何か細工されたんだ。

 けど、それが分かった所でもうどうしようもなかった。


「――アグリ、今日は僕の処女しょじょをもらってくれるって本当?」


「ああ、本当だとも。何故今までこれほど上物じょうものの処女をうばわなかったのか。

 私は今までの自分自身に・・・・・対して・・・理解に苦しむよ・・・・・・・


 もう僕の体に僕の意思はなかった。

 四肢の鎖はもうないけど僕の体は完全に洗脳されてしまい、アグリに向けて満面の笑顔を向けている。

 心の片隅かたすみに正気の僕がいるけど、もう指一本動かすことができなかった。


「――嬉しい! 僕ね、ず~~とアグリに処女をあげたかったんだ!! だけどアグリったらお尻でいつも満足しちゃうんだもの。遠慮なんてしなくてもいいのに。

 忘れられない夜にしてね、アグリ!!!」


 僕の体はアグリの物を迎えようと股を開いた。――ああ、最悪だ。


「グフフ、まかせてお――」


「死ねええええええッッッ!!!l」


「――グガバァッ!!!?? き、貴様は剣神! ど、どうやってここまできた!!!」


 そうして僕が全てをあきらめようとしていると、ここにはいないはずのデュランの声が聞こえてきた。


 ――デュランだ! 助けに来てくれたんだ!! 大好き、愛してる!!!


 そうして無邪気むじゃきに喜ぶ僕の目の前でデュランは、魔物の毒が大量に付着ふちゃくしたナイフで脇腹わきばらを刺し貫かれた――僕の手で。


「――アグリに手を出すなんて絶対に許さない!! 死んで!!! ここで死になさいよ、このクズ!!!」


 洗脳された上での行動とはいえ、とんでもないことをしてまった僕は僕自身のことが許せなかったが。指一本動かせない体じゃあ、自殺もできない。

 お願いデュラン、僕を殺してと心の中で涙を流していると。


「ごめんな、アリス。助けにくるのが遅れて。今、ゲホッ、アイツを倒してやるからな」


 という声と共にデュランが僕の体を気絶させたのだろう、心の世界が消えていく。

 そして世界ごと僕の意識が消えるまで、僕はデュランにあやまり続けるのだった。






「――デュラン! 分かっているの!! 貴方のたましいはもう、限界なのよ!!!」


「……分かってるさ」


 目を覚ました僕の耳にそんなヴィンデさんの声が聞こえてくる。……どうしたんだろう?

 そう思いながらなんとなく話しかけている方へ視線を向けてみると、そこには心臓付近を押さえてうずくまるデュランがいた。


「デュラン? ――デュラン!!! どうしたの、胸が痛いの!!?」


「たく、よりにもよってこんな時に起きるなんて、運が悪いな。

 大丈夫だからなアリス、心配すんな。――ヴィンデ、余計なことは言うなよ」


 デュランはそう言って何事もなかったかのように立ち上がって部屋を出て行ってしまったが、僕にはとてもじゃないけど大丈夫だとは思えなかった。

 だけど素直にデュランへたずねたとしても絶対に答えてくれないのは分かってたので、ヴィンデさんの方へ顔を向けて頭を下げた。


「お願いします、お母様! デュランに何が起きているのか教えてください!!」


「……言うなっていわれたけど、いいわよ。正直私ももう隠し通せないと思ってたしね、全てを教えてあげる」


 そうしてヴィンデさんが話してくれたのはデュランが魔法を使うたび、反動で自身の魂を傷つけて寿命じゅみょうを削っているという事実だった。

 ヴィンデさんの見立て通りならもう二年分の寿命がデュランから失われており、二度と元には戻らないと断言された。


「な、なんで隠してたんですか!! お母様!!!」


「……貴方に教えたら私と同じように魔法を使おうとするのを全力で止めたでしょ、だから言わなかったのよ」


 僕はその言葉に当たり前でしょうと返事をしようとして――


「それでもデュランは止まらないからせめて、アリスには絶対の味方であって欲しかったの」


 ――ヴィンデさんの顔を目の当たりにして息を飲んだ。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330664561399179


 その壮絶そうぜつ笑みはヴィンデさんの決意を表しているかのように綺麗で美しく――そして何処までも狂っていた。

 デュランのためなら彼女は文字通りなんでもするのだろう、そんな自身との違いを感じ取って一瞬気圧けおされたけど。だったら僕は僕でもできることをするとその場を後にしてデュランのことを探し回っていると。

 宿のうら側にある空き地でデュランの姿を見つけた僕は、まずは誠心誠意せいしんせいい謝るのが先だとその場で頭を下げた。


「デュラン、洞窟どうくつでは本当にごめんなさい。能力で洗脳されていたとはいえ、取り返しのつかないことをデュランに!! 

 お願いします!! 何でも言うことを聞くから僕のことを嫌いにならないでください!!!」


「大丈夫だって、あんなのかすり傷だったからな!! あの後だってちゃんと怪我を治してから闘ったから勝てたんだしな。

 だから大丈夫、あれくらいでアリスのことを嫌いになったりしないよ」


 その言葉がくるのを僕は分かったいた僕は涙を流しながら――


「だったら僕の処女をもらってよ、デュラン!!!」


 ――そう叫んだ。


「えっ、アリス? どうしたんだ?」


「僕は後もう少しでデュラン以外の人に処女を奪われる所だったんだよ。それもあんな気持ち悪い人に!

 だから他の誰かに奪われる前にデュランのおちんぽで、僕の処女を破り捨てて欲しいの!!」


 その言葉でデュランの目つきが変わったのを見ながら僕は勝利を確信し、上目遣うわめづかいでトドメの一撃を放った。


「デュランが手を出さないなら棒を使って自分で破るか――」


「――俺を元気づけるためにこんなことを言ったんだろうが、相変わらず詰めが甘いな。最後まで気を抜いちゃダメだよ」


「――ら、って、えっ」


 気が付いたら僕はいつの間にか空き地にかれていた布団の上へ寝かされ、衣服を脱がされた上でデュランにマウントポジションを取られていた。

 そしてデュランを元気づけるという本来の目的が何故かバレているのを理解して冷や汗を流したが、結果的に目的を果たせそうなので黙り込んだ。


「前アリスには訳あって一カ所にとどまらないよう旅をしてるから子供が出来るようなことはしないって、言ったけど。あれ半分は嘘なんだ」


「う、嘘とは」


「俺のちんこはちょっとデカすぎるんだ。だから、アリスの体を開発かいはつして入れられるようになるまでずっと我慢がまんしてた」


 僕は目的を果たせそうなのになぜ冷や汗を流したのか、デュランのおちんぽを視界に入れて理解した。

 つまり信じたくない真実だけど、いままでデュランは一度たりとも僕と寝る際、おちんぽを勃起ぼっきさせてなかったんだ。

 ――あの時目に入ったアグリの物の倍以上長いおちんぽへ対して、僕は恐怖を覚えながら無意識に後ずさった。


「でゅ、デュラン、始めてでそれはちょっと入らないと、僕は思うんだけど」


「入るよ、そのために毎日アリスを開発したんだから」


 僕はそのデュランの言葉で全てを諦めると、せめて少しでも優しくしてもらおうと笑顔で「初めてなので、優しくしてください」とデュランに言ったが「悪いけど、今日は優しくできない」と満面の笑みを浮べたデュランにそう返されたので。

 僕はもう液体がダラダラと流れ始めている股を自分で広げて、大人しくデュランのおちんぽを待った。


 そうしてその日僕の処女はデュランに奪われたのですけど、気持ちいいとか痛いよりも。あのデカいおちんぽが全部入ってしまった自分の体への恐怖の方が強かったです。

 ただ最後には気持ちいいしか分からなくなったので、僕はきっとデュランに一回こわされてしまったのだと思います。――気持ちよかったぁ♡

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