約束

https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330667780146696


 アイディール神国からデュラン達が飛び立った頃、大樹ユグドラシルではヘルトが異空間いくうかんへ連れ去られた影響えいきょうで彼がい止めていた魔王三十人と数百万の魔物が大樹を目指してれ込んできていた。

 光竜こうりゅうライオードとクラウンの創り出した数十体の巨大な木製の巨人が中心となって対処たいしょしていたが、数の暴力で押し切られるのも時間の問題だった。


まったくもってりがないないですなw、このままだとはい達の魔力が先に底をいてしまうでござるよww」


「クラウンッ! 無駄むだぐち叩いてないで闘うのに専念せんねんしろ!! このままだと押し切られるぞ!!!」


「相変わらずルイス殿は頭カチカチでござるなw、どの道デュラン殿が片付けるのですから我々は時間稼ぎとり切った方がいいでござるよww。

 一生いっしょう懸命けんめいやっても疲れるだけでござるからなww」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330664561572543


 東側ではあんまりなクラウンの言葉に青筋を立てながらルイスが魔物を剣で溶断ようだんしてその数を少しずつ減らし、盾で魔物を吹き飛ばすことでなんとか魔物の注意を己へ向けさせている。

 しかし魔物の軍勢に突っ込んで闘っているため能力持ちの魔物から何度もひどい反撃を受けており、いつ力きてもおかしくない状態だが。根性こんじょうだけで闘い続けていた。


「お婆様ばあさま幻実げんじつ魔法を使います! わせて下さい!!」


「何度も言うけどお婆様は止めて!! お願いだからッ!!」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330667780137111


 西側では十歳になったステラとヴィンデが実体のある幻を創り出す幻実魔法で巨人族の手足を空中へ出現させて魔物の軍勢を叩き潰している。

 それでもまだ十歳のステラと妖精であるヴィンデの二人は魔力量が少ないため長時間は闘えない、魔力が底を突けばその命が危なかった。


「アワワッ、杏香きょうかちゃん。無理しちゃダメですの! 危ないですわ!!」


「これくらい平気! それよりノアはちゃんと足場を創りなさい!! 危ないでしょ!!!」


「うぅ~、ごめんなさいですの……頑張がんばるから怒らないでください」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330667780162439


 南側では二十歳となり守天しゅてんから受けいだ破壊震はかいしんを手に杏香が闘っており、ノアが創り出した土壁の足場を使っての連続攻撃を魔物の軍勢へ仕掛しかけている。

 杏香はまだまだ余裕があったが徐々に杏香のスピードへノアが追いつけなくなってきているが、高速で移動している杏香の速さに魔物が追いつき始めてきていたため。スピードをゆるめることはできなかった。


「興味深い。素晴らしい強さだ、この闘いが終わったらその体を調べさせてくれないか光竜様――解剖かいぼうはしないと約束するから」


「……そんな約束をしなければいけない相手に体を預けたくない、悪いが他を当たってくれ」


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330664561822932


 北側ではグリード王国から盗み出した光線銃でリーベが援護しながら光竜ライオードが闘ってブレスや牙で魔物の軍勢を倒し続けているが、正直光竜は魔物の軍勢よりも背後で目をかがやかせているマッドサイエンティストの方が恐かった。


始源しげん魔法――シューティング・スターレインッ!!」


嵐流刃らんりゅうじん――らんッ!!」


 そんな感じでそれぞれが限界を迎えようとしていた時、デュランとアリスが戻ってきた。


「デュラン! 待っていたぞ!! よく戻ってきた!!!」


「光竜? 何で涙目なんだ?? まあいいか――それよりも光竜! ヘルトはどこにいる!!」


「あぁ、そのことなのだが。実は――」


 光竜は威厳いげんもクソもない姿を見せてしまったことにとても落ち込んでいたが、デュランからそう言われると気を取り直して説明を始めた。

 そしてヘルトがなんらかの能力で異空間へ連れ去られたことを教えると、デュランは見たこともないほど殺気さっきち。この場をアリスに任せて飛び出していった。


「……あれは大魔王達は恐ろしいめにあうのう、桑原くわばら桑原くわばら


「アホなこと言ってないで闘ってください!!」


「あ、ごめんなさい」


 光竜はあれと・・・対面たいめんする大魔王達はどれほど恐ろしいのだろうかと考え、敵である大魔王達へ思わず同情してしまっていたが。アリスから怒られたので真面目に闘い始めた。

 一方デュランは異空間のヘルトの気配を見つけると空間を斬り裂き、ヘルトの嵐流界刃らんりゅうかいじんを上空へ移動することでけた大魔王達の首をねていた。







https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330667780153635


「ヘルト、よく頑張がんばったなぁ。後はとうちゃんにまかせとけ」


「……ちち、う、えぇ」


 目を覚ましたヘルトはあの黒一色の不思議な空間から現実の草原へ戻ってきていることに目を丸くしていたが、己を力強く抱きしめている人がデュランだと気が付くと涙を流し。強い安心感からそのまま眠ってしまった。

 デュランは布団ぶとんを創り出してその上にヘルトを寝かせた後、レスレクシオンの能力で復活した大魔王達をにらけた。


「――殺す」


「こ、これはまずいですね。みなさん、げま――」


 デュランは逃げだそうとした大魔王達を一瞬で斬り殺し、レスレクシオンを起点きてんに復活するのを確認するとレスレクシオンだけを斬り続けてその魔力を削りきった。

 そうしてレスレクシオンを殺して復活できなくすると残りの大魔王達も斬り殺したが、現実改編でレスレクシオンへその負傷を押しつけることで残りの大魔王達は生き残った。


「――鳳凰剣ほうおうけん


 しかしデュランは一人たりとも逃がすつもりがなかったため鳳凰剣を使うことで更に攻撃速度を上げ、逃げ出した大魔王達全員を殺しきった。

 今だ回復しきっていない体で鳳凰剣を使ったため口から血を吐いたがなんとか治し、ヘルトを抱きかかえて大樹ユグドラシルまで戻るとアリスがもう全ての魔物を片付けていた。


「デュラン! ヘルトは大丈夫だった!!」


「あぁ、この通り無事だ。アリス、もう残ってる魔物はいないか?」


「うん、これで全部だと思う」


 デュランがその言葉を聴いてやっと全部終わったと安心し、アリスとこれからのことについて会話をしていた時。突然とつぜん大樹ユグドラシルがれた。


https://kakuyomu.jp/users/kokubyouyamana/news/16817330667780175542


「クソッ、やられた。大魔王達も含めて全部囮かよ・・・・・、あのへび野郎やろうめッ!!」


「デュラン! どうしよう!! このままだと大樹が!!!」


 デュランは眠るヘルトとアリスの顔を見つめた後、覚悟を決めるとヘルトをアリスに預けた。


「デュラン?」


「俺が竜穴に飛び込んで中から浄化してくる、アリスはここで待っていてくれ」


「やめて!! 今そんなことしたらデュランが死んじゃう!!!」


 デュランは必死に己を止めようとするアリスのことが好きだと心の底から思い、だからこそ逃げることはできなかった。

 ――死ぬことになると、分かっていても。


「アリスが生きていてくれるのなら、俺は死んだっていい」


「なっ、何をバカなこと言ってるの!! そんなこと、絶対に許さな――」


「――だけど・・・


 デュランはそう言ってからヘルトごとアリスを抱きしめ、心からの笑顔を浮べた。


「俺はまだアリスと一緒に生きたい、だから必ず戻ってくる。信じてくれ」


「……バカ」


 デュランはそうつぶやいてからただ涙を流すアリスの頭をなでた後。


「お前が俺のものになるのなら――世界くらい救ってやる」


「――はいっ、よろしくお願いします」


 かつてエルフ族の里で結婚の約束をした時のように約束を交わし、暴走する竜穴の中へと飛び込んでいった。

 それから半年、今だデュランはアリスの元に帰ってきていなかった。

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