欲望のダンジョンの貧乏マスター 〜 最弱のゴブリンだけのダンジョンって・・・詰んでね?貧乏なので知恵を絞って、現代兵器使って、ダンジョンバトルに俺は勝ち抜く!

ろにい

第1話 チュートリアル


天上天下唯我独尊てんじょうてんげゆいがどくそん]と言って生まれた偉いお方がいたらしいが、目が覚めた時俺が口にしたのは・・・「はらへった」だ。


 ゴツゴツした床から体を起こすと、明かり一つない5メーター四方くらいの真っ暗な洞窟なのが分かった。


 ・・・明かりがなくても見える不思議よ・・・


 そして、この暗い洞窟の真ん中に、30センチ位の大きさの丸いたまが浮いていた。


【マスターの起動を確認。『欲望』のダンジョンシステム ブートします。】


 不思議な声と同時に、洞窟の真ん中で浮いているたまが淡く虹色に光り始めた。


「不思議な光だなあ。一体何なんだろ、これ」


 まるで生きているみたいに、虹色の光の波を放つたまに見とれていると・・・


「説明しよう!これは『欲望』のダンジョンのだよ。そして君はそのさ!」


 いきなり珠の中から小さな羽根を持った妖精が飛び出してきた。


「ちんまい・・・」


「ちんまいゆーな!ボクはチュートリアル ピクシー!のマスターのお手伝いをする者さ。」


 ちんまいピクシーが、ちんまい胸をそらして説明した。ピクシーはボクっ


「俺がマスター?それに、これがダンジョン?」


「そう。キミがマスターで、ここは『欲望のダンジョン』。でも、生まれたばかりのダンジョンとマスターだから、ここにはコアしかないけどね。」


「生まれたばかり?・・・あれ、そう言えば、うう何も思い出せない・・・よ」


「うんうん、そうだね。でも、名前は覚えているはずだから、思い出してごらん。」


 なにも覚えてなくて、メチャ不安になってきた。とりあえず、ピクシーの言ったとおり自分の名前を思い出してみる・・・


「リヒト」


「それが君の名前か、マスター リヒト。」


 馴染みのない名前だったけど、口にしたらさっき覚えた心細さは大分やわらいだ。


「では、マスター リヒト・・・」


「リヒト。ただのリヒトと呼んでくれ。」


 ちんまいピクシーは嬉しそうに微笑みながら言った。


「じゃあ、リヒト。まず初めに、ダンジョンの存在意義から話そう。」


「ダンジョンの存在意義?そんなのあるの?」


「もちろん、あるさ。石ころ一つにだって存在意義はあるのだから。まっ、そんな話は哲学者にまかせるとして、ダンジョンの存在意義とは・・・」


「ダンジョンの存在意義とは?」


「それは、成長進化すること!」


「えっ、何それ?」


「ダンジョンはDPダンジョン ポイントで成長し、他のダンジョンを喰らうことで進化する。」


 ピクシーは俺が理解したか確認するように、腰に手を当てて俺の目をのぞき込んできた。


「そして、十分に成長し進化したダンジョンは、やがて別世界の新しい宇宙となり、マスターはその宇宙の神になる。

 それがダンジョンの存在意義なのさ。分かったかい?リヒト。」


 色々と疑問だらけだが、ひとまずは分かったとうなずく。


「そして、成長進化のスタート地点に立ったばかりの新しいダンジョン マスター

には、三つのルールがあるんだ。」


「三つのルール?」


「そう。三つのルールだよ。

『ダンジョン マスターの三つのルール』


一つ、ダンジョンコアを死守せよ。壊されたらコアとマスターは死ぬ


二つ、他のダンジョンコアを破壊せよ。さすればその能力を奪える


三つ、1年以内にダンジョンを3つ攻略せよ。しからずんば死に、さすれば扉は開かれる


以上。分かったかい?」


「ごめん、何かに書いて・・・ちょうだい」


「ぷぷぷ、大丈夫だよ。後でこのルールが書かれた『ダンジョンの書』を渡すから。」


 可愛らしく笑うピクシーに、俺も笑ってしまった。


「それじゃあ、生まれたてのマスターへのボーナスタイムだよ。これから一生リヒトの片腕となって君を支える1番目の使徒を召喚するよ。」


「1番目の使徒?」



「そう。リヒトがダンジョンを成長進化させるために、どうやってダンジョンを守り、どうやってダンジョンを攻略するのか。

 そのリヒトのダンジョン戦略を手助けするのに必要な存在を思い描いて・・・そしてコアに手を触れてお願いしてみて。さあ・・・」


「俺のダンジョン戦略を手助けする存在

・・・必要な存在・・・」


 俺は必死にその存在を思い描いて、ダンジョンコアに両手を触れた。


 するとダンジョンコアはひゃっくりを起こしたように光をまたたかせたが、やがて小さな洞窟を眩しい光で溢れさせた。


 真っ白になった視界が収まった時、そこに使徒が立っていた。


「貴方が私を召喚したの?冴えないマスターねぇ。」


 黒光りするボンデージドレスに白衣を羽織った銀髪の美しいダークエルフが、白衣のポケットに両手を入れて立っていた。

 このダークエルフは間違いない、エロフだ!


 でも、このエロフったら、解剖しそうな怖い視線で俺の全身を舐めまわしている・・・コワッ


「ではリヒト。この使徒に名前を付けて、契約を完了させてごらん。以後、使徒はマスターの忠実な下僕になるんだ・・・(基本的には)・・・」


「おい、なんか不穏なこと言ってなかったか?最後に!」


「えっと・・・、たまにね、本当にたまに使徒がマスターに反乱を起こすことがあるみたいなんですよ・・・そ、そんなの極まれだから!」


「そうよ。私たちだって意に沿わな命令や待遇を受ければ、そりゃあ反乱くらい起こすわよぉ。」


 ヤバいやばい!俺が楽してゴロゴロできるような、とびきり優秀な使徒を願ったら、とびきり危険なヤバいダークエロフが召喚されてしまった!


「それで、どうするのぉ、マ・ス・ター?」


 ダークエロフが俺の顎をグイッと片手で持ち上げて、顔を近ずけながら語りかける・・・。柔らかくて豊かな胸を俺に押し付けて、甘い吐息が俺の顔にかかって・・・なんかヤバい!


「リヒト!早く名前を付けて、契約を完了させるの!早く!」


「君の名は、エイルだ!俺の使徒になって、従え!」


「ちっ!」


 俺がダークエロフに名を付けた瞬間、彼女の褐色の胸に魔法陣が輝いて、俺との間に契約のパスが繋がった。


 契約が完了した途端、エイルは俺から体を離してつまらなそうにそっぽを向いた。

 

 エイルが離れても、俺はエイルの太ももまで覆う黒いロングブーツの高いピンヒールに目が釘付けになる。ゴクリッ・・・


「危なかったね、リヒト。使徒は契約が完了するまでは何の制約もないから、最悪マスターが殺されちゃうこともあったりするんだよ。極々々たまにだけどね。」


「うわーっ!それってメチャ危ないヤツじゃん!先に話してほしかったわー!」


 と言ってエイルを見ると、彼女はそっぽを向いた・・・。どうやら確信犯だった。


「でも、大丈夫!そうならないために、ボクがいるんだよ!」


 うん、平たい胸はどれだけ反らしても平たい胸のままなんだね、ピクシーさん。


「それじゃあ最後、お待ちかね『ダンジョンの書』を召喚してみようか。」


 ピクシーは盛り上げるうにコアの上を飛び回る。


「リヒト。コアに手を当てて、『ダンジョンの書』を呼び出して!」


「『ダンジョンの書』!カモン!」


ドサッ!


 俺の手の中に、大きくて分厚い魔法の書が落ちてきた。


「お、重い・・・」


「これが『ダンジョンの書』だよ。ここにダンジョン戦略の全てのカギが書かれてるよ。」


 俺はワクワクしながら、最初のページを開いてみた。


 そこには、さっきピクシーが語ったダンジョンの存在意義と、マスター三つのルールが不思議な書体で書かれていた。


「いいかい、リヒト。忘れないで。生まれたてのマスターにはDPダンジョン ポイントが1000P与えられているよ。

 君はそこから必要な武器やらモンスターやダンジョンの『ルーム』を買わなければいけない。」


 ピクシーが俺の目の前で静止して言った。大事なことなので、一言一言指で強調しながら。


「1日何もしなくてもDPダンジョン ポイントは100P回復する。でも、ダンジョンに侵入した人間を殺せば、1人で100Pが入るんだ。

 DPダンジョン ポイントで購入出来るものは、その『ダンジョンの書』に書いてあるから、良く考えて使ってね・・・」


 ご利用は計画的に・・・と。どこかで聞いた言葉だ・・・


「それじゃあ、ボクのチュートリアルはこれでおしまい。リヒトがこのダンジョンで素晴らしいマスター生を送ること・・・」


「ねえ、ちょっと待って。チュートリアル ピクシーって、このままずっとここにはいられないの?」


「えっ?か、可能だけど、300Pもかかるんだよ!ボクは戦力にならないから、大事な初期投資でそんなポイント使っちゃったら・・・」


「たった300Pでずっと仲間でいられるなら、安くないかい?それに、さっき記憶も何も無くて心細かった時にさ、キミがいてくれてとても嬉しかったんだよ。だからさ、これからも一緒にいて欲しいんだ!」


「物好きなマスターね」


 あはっ、エイルにもあきれかえられる。まっいいじゃん、気楽に行こうよ!


「うん。ありがとう、リヒト。ボク、すごく嬉しよ!あのね、そしたらボク、リヒトに名前を付けて欲しいんだ!」


「そっか、じゃあ君の名は、ベルだ。」


「ありがとう!リヒト。これからよろしくね!」


【チュートリアルを終了します。新たなダンジョンとマスターに祝福を】



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