第3話 欲望のダンジョン歴 2日目


『ハァハァハァハァ・・・ゴ、ゴブー!』

『ゴブゴブゴブゴブゴブ・・・ゴブー!』


「うるさいよ!」


 ゴブリンエリート アダムのつがいとして、新しくイブが改造されて『コア』から出てきた。そしたらアダムのヤツ貪るようにイブに飛びついて、以来ずっとサカっている。


 途中コアルームの端に移動してもらって戦力増強に励んでもらってるのだが・・・とにかくうるさい!


「もともとのゴブリンがこうなのか?それとも改造ゴブリンだからこうなのか?なかなか興味深いところでだね!」


「そうねえ、昨日から盛っているから、もう受胎してるはずよ。受胎してたら大人しくなるはずだから、『コア』で鑑定してみてよ。」


 イブの鑑定結果はこうだ・・・あっ


=================

種族名: ゴブリン エリート

個体名: イブ

性 別: ♀

状 態: 妊娠

Lv.: 40

スキル: 絶倫 統率

=================


「妊娠してるぞ」

「妊娠してるねえ」

「・・・・・・」


「おい、エイル。妊娠しててもおさまるどころか、ますます盛んになってるんだが!」


「ちょっといじりりすぎたかしら?それとも【絶倫】スキルのせい・・・?

 まあ、とにかく2日後には第2世代が生まれるはずよ。」


 目を逸らしながら言い訳するポンコツ改造魔。


「こうなるとゴブたちの部屋を分けたくなるな。でも空の『ルーム』でも1000P以上かかるからなぁ。はぁDPダンジョン ポイント欲しい・・・」


 それで、現在の収支はドン。


650P 1日目残金

-30P アダム素材ゴブ費

-30P イブ素材ゴブ費

+100P 回復ポイント

-50P アンパーン(5個入り)

-20P 水(ペットボトル入り×2本)

―――――――――――――――

620P 残金


「全然たりない」


「人間が来てくれたらDPダンジョン ポイントが稼げるんだけど・・・来ないかなあ・・・」


 ベルがそうボヤいた時、突然『コア』が赤い光を放ってその光をグルグル回転させた!


「目がチカチカする!何だこれ?」


「キター!侵入者だよ、リヒト!」


「あら、かしら?」


「エイルのは絶対に本来の意味じゃないと思う。素材的な意味でだよな?」


「あらぁ、どうでしょ」


 わざとらしい・・・


「ねえねえ、リヒト。どんな侵入者か見てみようよ!」


 練習してたとおりに『コア』に両手を当てて、ダンジョン入口の様子を映し出すように念じた。



 狭いダンジョンの入口を少ししゃがみながら男たちが入ってきた。


 武装した男が9人と女が1人。後は手足を鎖で縛られた男女が6人引きずられるように、ダンジョンに引き込まれてきた。これは多分奴隷だろう。


 ダンジョンの入口ホールは、なにも手が加えられてない洞窟仕様で、ゴツゴツした床に奴隷が運んできた荷物を下ろさせた後、奴隷たちは床に座らせられた。


「全部で16人か?」


「いいや、もう1人いるねぇ。ほら、荷物のところにボロきれみたいな、あれは子供だねぇ。」


 エイルは冷静に観察していた。


 俺は武装した男達がコアルームを見つけて、突撃してこないか気が気ではなかった。


 今はコアの回転する赤い光も、ゴブたちの生産活動も止まっている。こんな緊迫した雰囲気のなかでもサカれるのなら、俺はお前にキングの称号をあげるよ。アダム君。

 

 おっと、武装した男たちが何やら荷物を2つに分け始めた。


『ガエーダ。約束通り金と商品の半分は貰っていくぞ。それと奴隷だが、健康な男と女はこのまま連れていく。そこの死にかけのガキは処分してくれ。』


『ちょ、ちょっと待ってくれ。分け前なんだが、俺達も色々苦労したんだ。だから、分かるだろ?なあ、そこの奴隷女1人置いて行っちゃあくれねえか?』


 強欲そうな顔をした男が、話をしてた男たちの間に強引に割って入った。


『おい、ガエーダ。それがお前たち鷹の爪の決定なのか?盗賊騎士団が仕切ったこの話を反故にするってのか!あん?』


『ミヌム!この野郎!盗賊騎士団の仕切りにケチつけやがって、俺たちまで裏切り者にするつもりか!このゲス野郎!これでも喰らえ!』


 顔に傷のある男が腰の剣を素早くぬくと、ミヌムと呼ばれた男の胸に剣を突き刺した。


『ぎゃー!』


ピロン♪


 男が殺されると、『コア』から音が鳴った。


「リヒト!ポイント、ポイントだよ!早く『ダンジョンの書』を見て!」


620P 残金

+100P 人間の命

―――――――――

720P 残金


「やったー!初収入だね!」


「でも、どうなんだ。人間1人の命がアンパーン2袋分って・・・・・・なんて、全然気にしないけどね。」



『 あんあん、はぁん・・・ああん・・・』


『ゴブゴブゴブゴブゴブ・・・ゴブー!』


「もうどうにかしてくれ!なんなんだよコレは!」


 武装した男たちが奴隷を連れてダンジョンから出ていくと、ガエーダと呼ばれた男は、手下二人に自分が殺した男を外に埋めてくるよう命令した。


 そして、仲間の女と二人になった途端、コイツらサカり始めやがった!


 その様子を『コア』が写した映像で見てしまったアダムとイブが、こりゃ負けられんとばかりに生産活動を再開しやがりました・・・


「はあ、人間たちもサカってる間はダンジョン探検なんかしないだろうから安心だろうが・・・。でもな、このダンジョン、『欲望』じゃなくて『性欲』のダンジョンの間違いじゃね?」


「あはははは」


 ベルも乾いた笑いしか出なさそうだ

・・・


ピロン♪


 その時『コア』が鳴った。


「おっ!これはどう言うこと?」


720P 残金

+100P 滞在ボーナス(1H × 2人)

+10P 滞在ボーナス(1H × 1人)

―――――――――――――――

830P 残金


 なんと『ダンジョンの書』にボーナスが振り込まれた!


「なあ、この10Pって、あの死にかけの奴隷の子供だろ?じゃあこの100Pって、あの自分たちだけ楽しんでる2人の分か?」


「うん。そうみたいだね。普通は1人1時間で10Pしかポイントにならないんだけど、5倍の50Pって・・・どうしてかなぁ?」


「励んでるからじゃない?ヤッてる最中って『欲望』に忠実だからじゃないのかしら?」


「「それだ!」」


「なら、人間って殺すより、ダンジョンの中で飼ってさ、四六時中セ○クスさせてた方が儲かるんじゃない?」


 天才か!俺


「でも、ウチのゴブリンじゃあるまいし、人間ってそんなに続けられるものなの?」


 俺を見るな!ベル。俺はやった事もないから、知らんし・・・そもそも俺は人間じゃないから。


「あら、簡単よ。私が改造しちゃばね。」


「ポイントを楽して稼げる永久機関!考えちゃいました!」



 『欲望のダンジョン』に侵入してきた男女4人が寝静まったころ、俺はアダムを連れて入口ホールに忍び込んだ。


 アダムとイブに入口ホールへ繋がる通気口を広げさせたんだが、相手を起こすんじゃないかと冷や汗を流して心配したよ。でも幸いにして柔らかい土だったから、ゴブたちが手で崩しても気付かれなかった。


 そして俺は手に持った黄色い秘密兵器を構えた。


 これの名は『TASERテーザー 7』と言う・・・らしい。


―― 話は少しさかのぼる ――


「でもさあ、どうやってアイツら殺さずに捕まえる?アイツら武器もってるからさあ・・・」


「あら、ある程度の傷や怪我なら大丈夫よ。私が直してあげる。」


 エイルにウインクされてもなあ・・・


「それじゃあ、『マスター装備』を試して見まようか。DPダンジョン ポイントも貯まったしね。」


「『マスター装備』?何それ。なんかカッコよいね!」


「えへへ、それはだねぇ、『ダンジョンの書』に載ってるモンスターや武器などの装備は、ポイントさえあればどのマスターでも購入できるけど・・・」


「ウチはまだゴブリンしかないけどな。」


「ふふふ、でも、『マスター装備』は、そのマスターでなければ召喚出来ない、ユニークな装備なのです。」


「ほうほう。それでどうやるの?」


「じゃあ、やってみようか。

 まず『ダンジョンの書』を手に持って、もう片方の手で『コア』に触り、欲しいものを思い描いて。するとDPダンジョンポイントの予算範囲で買えるものが頭に浮かんでくるから。」


 早速試して見た。


『ええと、静かに安全(俺が)に相手を制圧できる武器をちょうだい・・・』


 それで出てきたのがこの『TASERテーザー 7』という訳。


 何と、それを手に持ったら、使い方まで頭の中に入ってきたよ!


―― 話は戻る ――


 俺は寝てる男女 (さっきまで頑張ってた二人)に近寄る。

 3メートル位に近ずいて『TASERテーザー 7』を構えてトリガーを軽くひくと、あら不思議!上半身裸の男の胸と腹に緑と赤の点が光かって、更にトリガーを引くと・・・


パシュ!ジジジジ!

「っん!」


 『TASERテーザー 7』から発射された端子が光の点に命中!そして本体から伸びた2本のワイヤーを『電気』が伝って、寝ている男を声も出させずに『感電』させた。


 男は体を一瞬強ばらせると、そのまま棒のように固まってしまった。


 後は『TASERテーザー 7』のカートリッジを交換しながら、あっという間に残り全員を制圧してしまった。


 スゴいなぁ!このスタンガンってヤツ!撃たれた人間は、自分で体が動かせなくなるんだそうだ!


 何かこの武器、ウチのダンジョンにピッタリな気がする!エイル的な意味で・・・


「すごいや!リヒト。簡単だったね!」


 ベルが奥のコアルームがら飛び出してきた。


「何言ってんだよ!こっちはもう心臓が飛び出しそうなくらいドキドキ緊張してたんだからな。」

 

「ねえ!早く運んできてぇ!」


 エイルがお待ちかねだ。せめてねぎらいの言葉くらい・・・


「アダム。コイツらをエイルのとこまで運んでくれ。」


『ゴブ!』


 棒のように硬直した男たちを両脇に抱えて、アダムはコアルームへ運んで行った。


 俺もコアルームへ戻ろうと振り返った時、ぼんやりと目を見開いていた奴隷少女と目が合った。


「・・・たす・・け・て・・・」



******************


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