第26話 試練の空間 ― 龍人騎士

「アダムー!お前いつからバトルジャンキー世紀末ヒャッハーになったんだよ!頭冷やしやがれ、こんにゃろ!」


『コブー!』


 十字路の中央で、3方向から『デスナイト』に押し返され半包囲されてたアダムとカイン、アベル親子を助けるため、『ゴブリン ザ ウィザード』の兄弟が手に持つ杖を振りかざし、魔術『マジックアロー』を左右の通路から押し寄せる『デスナイト』に叩き込んだ!


 白く長い髭を蓄えて、見た感じで千年も生きているように見える『ウィザード』たちだが、アダムの息子としては突撃隊の中で一番若い・・・


 そんで彼らのステータスはドン!


=================

種族名: ゴブリン ザ ウィザード

個体名: ガンダルフ、 ベルガラス

性 別: ♂

Lv.: 50

スキル: 魔導の極、 森羅万象の理

    ミラー

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(*イメージ画像となります)


 世界の趨勢すうせいを委ねたくなるような見た目と名前だが、スキルもアダムとイブチルドレンの例にもれずにぶっ壊れ定期!


 アダムとカインたちに左右の通路から迫っていた『デスナイト』の群れは、ガンダルフとベルガラスの魔術 ― 魔法と呼ぶと本人たちから怒られる ― によって倒されていく。


『ゴブー!』


 左右の通路からの増援が、『ウィザード』たちの魔術で倒されていくのを目の当たりにして、『デスナイト』に動揺がはしった!

 その瞬間を見逃すことなく、アダムは凶悪なスパイクのついたショルダーアーマーから『デスナイト』の並べられたカイトシールドの列に突っ込んで行った!


 アダムのショルダータックルは、娘であるブリュンヒルデのスキル【英雄礼賛えいゆうらいさん】によってバフがかけられており、通常の3倍のパワーとスピードで『デスナイト』の隊列を吹き飛ばし、ついに『デスナイト』の防御陣を突破した!


『コブー!』


 我に続け!と叫んだ父王に答え、カインとアベルも、妹『ワルキューレ』であるビルドとスクルドの【英雄礼賛】によってバフられたパワーで目の前の『デスナイト』を【シールドバッシュ】で吹き飛ばしながら、父王アダムの後に続いた!


「ちょっとー!前衛がいなくなってどうすんのさぁ!戻ってきてボクらを守んなさいィ――!」


 ベルが怒るのもごもっとも!


「ブリュンヒルデ!ビルド!スクルド!前衛を頼む!ガンダルフとベルガラスはその後ろで砲台になれ!

 いざとなったらコレを使う!相手をできる限り近づけるな!」


 ワルキューレが軍神の剣をスラりと引き抜いて、突進してくる『デスナイト』にその切っ先を向ける!


 すると、突進していた『デスナイト』がバタバタと倒れだした!


 付与魔術系に思われがちな『ゴブリンワルキューレ』であったが、実は前衛もこなせるデキた娘たちたのだ!


 ついでに彼女たちのステータスはこうだ!ドン!


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種族名: ゴブリン ワルキューレ

個体名: ブリュンヒルデ、ビルド、スクルド

性 別: ♂

装 備: 戦乙女の兜・鎧・盾、軍神の剣

Lv.: 45→55

スキル: 大神の加護、死者選定

    英雄礼賛、ラグナロク(new)

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(*イメージ画像となります)


 直接戦闘前に『デスナイト』たちが倒れた訳は、そう彼女たちのスキル【死者選定】!

 50%の確率で、敵をヴァルハラ死する戦士の国に送ることが出来るのだ!


 『ワルキューレ』たちは、舞うように『デスナイト』をヴァルハラに送り続けた・・・


◇◇◇


 一方、アダムたち親子3体は、第5階層の迷宮をまるでナビゲーションに導かれるかのように、正しい攻略ルートを階層出口に向かって駆けていた!


 アダムの瞳は、このダンジョンに入った瞬間から凝視していた。己の全存在を賭けて倒すべき強敵を!


 迷宮の角を曲がった時、その不倶戴天な強敵が、アダムの目の前に姿を現した!


『ゴブー!』

『ゴグワアァァー!』


 アダムの咆哮に、口から火炎を撒き散らしながら叫び返す龍人のモンスター!


 階層出口前の広場に立っているこのモンスターこそ、『試練』のダンジョンの第1使徒たる『龍人騎士』、ドラゴニュートのゴーディエだった!


 『龍人騎士』ゴーディエは、左右に『デスナイト ザ ブラック』を従えて、3メール近い巨躯でアダムを蔑むように見下ろした。


『貧相なネズミめ!』


試練空間アナザーワールド】っ!


 ゴーディエの叫び声と共に、階層出口前の広場にいた敵味方双方のモンスターたちは、その姿を一瞬で消し去った・・・


◇◇◇


「リチャード!どうだ、アダムたち鉄砲玉は見つかったか?」


 『デスナイト』たちと戦ってるうちに、『ゴブリンラット』の大軍団が追いついたので、先行偵察に行かせた。


『恐れながら、マイロード。階層出口まで探索致しましたが、アダム様御一行は発見できませんでした。』


「えっ、そんじゃあ、次の第6階層に降りたんじゃないの?」


 確かに、それあるかも・・・


『その可能性はございません。ベル様。』


「どうしてなのさぁ?」


『何故ならば、次の階層は『コア』ルームでございますれば。』


「『コア』ルームたと!」


『イエス マイロード。突入した100余体の臣下が、一瞬で消されました。が、消される瞬間、『コア』を目撃しております。』


「とにかく、先を急ごう!」


 俺たちは第5階層を更に奥へ進んだ。



 第5階層の出口前広場には、『ゴブリンラット』約10万の大群が天井までびっしりと張り付いている。パッと見がコウモリっぽい・・・


ザワザワザワザワ・・・


 『ラット』が俺たちの進む道を開ける。


『マスター!』


 俺の前を進んでいたガンダルフが声を上げる!


「どうした?ガンダルフ・・・」


 『ウィザード』のガンダルフとベルガラスが足を止めて、石造りの床を調べ始めた。


『魔力の残滓がここに・・・』


『・・・術式の操作跡もありますな。』


 石畳を調べていたガンダルフとベルガラスが立ち上がり、仲間たちへ警告した。


『敵の魔術を複製展開する!』


『皆、敵に備えよ!』


【魔導の極】


【ミラー】


 【魔導の極】で術式の残滓から敵の魔術を読み解き、全ての魔術をコピーするスキル【ミラー】でガンダルフは敵の魔術を完璧に再現した。


―― 暗転する世界


ガキィ!キィーン!

ガンガンゴン!

ギィン!ガンゴン!


 切り取られた世界の中で、アダムとカインとアベルが敵と戦っていた!


 がしかし、カインとアベルは片腕を切断され、アダムもシフォンの防具で守られた箇所以外は切り刻まれ、骨まで露出している!


「『ワルキューレ』!援護を!助けろー!」


【【【大神の加護】】】


 ブリュンヒルデとビルドとスクルドが、両手を胸の前にかざして『治癒』のスキルを発動した!


【ライトニングドラゴン】

【サンダラー】


 父と兄を救うために、ガンダルフとベルガラスが敵に魔術を打ち込んた!


『ッ!・・・・・・』

キシャー!

グシャー!


 漆黒の鎧を纏った『デスナイト』が、ベルガラスの魔術に撃たれて声にならない悲鳴をあげたが、アダムをなぶっていた龍人はガンダルフの雷魔術に撃たれてもノーダメージに見える!


『『『フェオ ウル ケン ウォルド ユル オセル ウル!』』』


 『ウィザード』たちが稼いだ一瞬の時間で、『ワルキューレ』姉妹が最大奥義のためのルーンを詠唱した!


【【【ラグナロク神々の黄昏】】】


 三姉妹の最大奥義スキル発動と共に、霊的事象『風の冬』と『剣の冬』と『狼の冬』が『龍人騎士』と『デスナイトブラック』たちを飲み込み、龍人たちのステータスをごっそりと削る!


 そこに3人の戦乙女の祈りにより、ついに神々の終焉たる2頭の『フェンリル』、スコルとハティが召喚され、『龍人騎士』と『デスナイトブラック』を軽々と咥え、その鋭く尖った牙で噛み砕いた!


「やったー!」


「ベル!それフラグー!」


 ベル吉のフラグと同時に、ノータイムで『龍人騎士』が『フェンリル』に噛み砕かれた身体からだを回復させた!


『何という生命力!流石はドラゴン最強生物の眷属!ドラゴニュートかっ!』


 獅子心王リチャードの折れない心までも震え上がらせるのか、この龍人は!


『『欲望』のダンジョンマスターよ!我が主君の『聖墓』に土足で踏み込むとは万死!この魔剣ファフニールで魂ごと喰らってくれるわ!』


 龍人が、禍々しい気を放つ魔剣を振り上げ、アダムたちや『ワルキューレ』、『ウィザード』たちを躱して一瞬で俺との間合いを詰めてきた!


 俺は反応することも出来ずにただ棒立ちしてしまう!


『マイロード!』

「きゃー!リヒトー!」


 リチャードとベルの叫び声が、どこか遠くで聞こえる・・・


 世界の全てか、コマ送りのようだ・・・


 俺の頭目掛けて振り下ろされる魔剣・・・俺は・・・


『ゴブ―――!』


グハッ!


 アダムと俺の立ち位置が瞬時に入れ替わった!


 そして・・・・・・・・・・・・『龍人騎士』の魔剣ファフニールをショルダーアーマーで受け止めながら、アダムは魔剣ジャジメントで龍人を逆袈裟斬りに切り上げた!


『ゴッブッ!』

 

 血の塊を吐き出しながら膝を折るアダム。だが、シフォンの鎧はアダムを守りきった!


 一方、『龍人騎士』は、胴体が斜めにズレ、そのまま2つに別れたまま地面に倒れ落ちた・・・


 それは絶対的なレベルの差を跳ね除けて勝利を掴み取る【覇王】のスキルと、神の裁きを代弁する魔剣ジャジメントの裁きによる勝利だった。


 いかな強者、ドラゴンと言えども、神の裁きの前に逃れる術など無かった・・・


「かっ勝ったよ〜!リヒト!アダムが勝ったよ――!」


 ベルが喜びを爆発させたその瞬時、俺は別の次元の狭間に跳ばされた・・・


「良くぞ余の使徒を倒した。『欲望』のダンジョンマスターよ。そしてさらばだ!」



******************


熱い日に幸せな事・・・白くまアイス


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