第27話 リヒトの最終試練
「良くぞ余の使徒を倒した。『欲望』のダンジョンマスターよ。そしてさらばだ!」
少し高くなったひな壇に存在する黒曜の玉座から、王者は片手で斬撃を飛ばしてきた!
「うぐぁっ!・・・・・・ごふっ!」
躱すこともできず、正面から斬撃を受けてしまった・・・
衝撃で足元に崩れ落ちると、胸に開いた傷口から生暖かい血が俺の命と共に流れ落ちて行く・・・・・・・・・
俺は震える手で腰のポーチを探って、エイルが持たせてくれた『ハイポーション』を取り出して、何とか『ハイポーション』を飲むことができた。
「ほう、アレで死なぬか。では、その薄汚い生命力に免じて、名乗るとしよう。」
黒曜の玉座から、ソイツは豪華なマントを翻して立ち上がった。
「余の名はゴドフロワ ド フランドルである!
聖墓守護騎士王として、この『試練』のダンジョンを守護するマスターである!」
ギョロりと見開かれた両目が異様な老人だが、豪奢な衣服でも隠しきれない肉体を持っていることが一目で分かる
・・・
「余の第1使徒たる『龍人騎士』ゴーディエと、第2使徒である『デュラハン』の黒騎士デュゲクランが倒されたのは、かの者共との絆が断ち切れたことで分かっておる。」
聖墓守護騎士王 ― 肩書き長すぎな件 ― が血の凍るような雰囲気を纏った魔剣(に間違いない!)の切っ先を俺に向けながら話す。
切っ先が向けられた心臓の辺りに鳥肌が広がる・・・
「故に、貴様のような蛆虫をこの玉座の間、『最終試練』の隔絶領域に隔離した!フハッ、ハハハハハハっ!」
突然ゴドフロワが高笑いしだした・・・ついに狂ったか?
「貴様の配下のゴブリンが、余の『最終試練』領域に干渉しようとしておるわ!ハハハハハ!無駄無駄無駄っ!
余の『コア』のユニークスキルに、ゴブリンなどが干渉出来るものかっ!フハハハハハハハ!」
両目に狂気を称えながら、ゴドフロワが俺の仲間を嘲笑う!
「余が
「・・・・・・」
奴はエラいご機嫌だ!
「なに、簡単なことよ。この『最終試練』の隔絶領域ではな、敵の全ての支援魔法やスキルが無効になるのだ!
貴様は己の持って生まれた力だけで戦うしかない!
だかなぁ!余はこの空間では、全てのステータスが3倍となるのだ!ひぃやははははははは!どうだ、悔しいか?恐ろしいか?絶望したか?」
ゴドフロワは狂喜にヨダレをたれながしながら、俺を嘲笑うのを止めない・・・最早そこには王者の風格はなく、ただ獲物を
「・・・・・・」
「フハハハハハハ!何?何と申した?下郎!」
「・・・能力3倍バフがあって、俺も嬉しいよジジイ!」
「キーサーマー!」
おれは腰のポーチから、素早くそれを2個取り出すと、左手でピンを2本引き抜いて玉座の足元にそれを投げつけた!
ゴドフロワは、3倍のバフがかかった目で足元のそれを見て、踏みつけようと足を上げる。
俺は両耳を抑えながら、キツく目を閉じて足元にうずくまった!
バキイイイイイイイィィ―――!
バキイイイイイイイィィィィ―――!
M84スタングレネード!
俺が投擲したそれは、180デシベルの轟音と800万カンテラの閃光が2つゴドフロワの足元で炸裂した!
「ぐぁっ!め、目がー!耳がー!」
「どうだ、王様。3倍のステータスで味わってくれた?俺からのプレゼント?」
俺はゴドフロワに近づきながら、話しかけた・・・どうせ聞こえてないだろうがさ。
俺は元々詰めていた耳栓を両耳から外して、黒い円筒型の筒を構えた。
「お前が傲慢なやつで助かったよ。もっと玉座に近かったら、俺の耳もやられてたかもな。耳栓つけてもさ。」
『最終試練』の隔絶領域で、俺は玉座から30メートルくらい離されて召喚されていた。
よっぽど蛆虫の俺に、格の差を距離で見せつけたかったのだろう。
「でもさ。油断したのはお前の方だったな。俺たちは、最弱のゴブリンの軍団だぜ?忘れたのか?
端から力でお前たち肉体エリートに勝とうなんて思ってやしないさ!」
「うおおおおおああお!」
ゴドフロワががむしゃらに魔剣を振り回すが、明後日の方向だぞそれ。
俺は手にした黒い筒の胴体部に付いている、赤いボタンを押し込んだ!
パシャ!
黒い筒から発射された『ネット』が広がって、闇雲に魔剣を振り回しているゴドフロワに絡みついた!
『ネットランチャー』!意外と大きいから、持ち運ぶのに苦労したよ。
でも、『欲望★』のダンジョンでは既に使用実績があるんだ。『アゲハ蝶』や『大富豪』でね。
時々いるんだよ、酔っ払って暴れるバカが。
そんな時、この『ネットランチャー』が活躍するわけ。
『黒服』たちが捕縛したバカは、人知れず『人間牧場』で・・・
まっ、人間誰しもそれぞれ活躍する場ってのはあるものさ・・・・・・そして、今
「うがっ!おのれ!正々堂々余と戦え!ゴミクズが!」
ついに生物でも無くなったらしい俺氏。
四肢に絡みつかれた『ネット』のせいで、玉座から転がり落ちるゴドフロワ。
俺は玉座のひな壇をゆっくりとした歩調で登って、黒曜の玉座に腰を下ろした。
「硬いなぁ。痔になりそうだよ。あっ、だから怒りっぽいのか?お前さぁ。」
『ネット』を振りほどこうともがく『試練』の王ゴドフロワ。
至近距離で2発もM84スタングレネードが炸裂して、見当識失調になっても暴れられるなんて、流石はフィジカルモンスター!
「だが、残念。ウチのヤンチャなカインやアベルでも、絡まったら振り解けなかっんだから。無理無理。」
そう言って、玉座からたちあがり、喚きながら『ネット』を振りほどこうともがく聖墓守護騎士王を見下ろしながら構えた。
スリングで肩から吊り下げたFN 7.62mm機関銃 MINIMI Mk3。今回これが俺の最後の切り札だ!
コッキングハンドルを引いて、初弾をチャンバーに送り込み、そしてゆっくりとトリガーを引いた!
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!
ロングバレルの銃口から、マズルフラッシュと共に7.62mmのフルメタルジャケットがコドフロワの身体に浴びせられた!
そして・・・『試練』の聖墓守護騎士王は、自らの血の池に沈んだ・・・・・・
【只今をもちまして、『欲望』のダンジョンの勝利による『ダンジョンバトル』を終了します。】
「リヒトー!」
隔絶されていた『最終試練』の空間から解放された俺は、『試練』のコアルームで仲間たちに迎えられた。
ベルが鼻に抱きついてくる・・・くすぐったいからやめれ!
「みんな無事だったか?」
『ゴブ!』
アダムがドヤ顔で、いつものサムズアップ!でも、今回だけはやり遂げた顔が頼もしい・・・・・・ゲフンゲフン
『マスター!この度の勝利・・・・・・』
仲間たちと勝利を喜びあっていた、その瞬間!
コアルームの隅から、影が飛び出してきた!
『グハッ!』『キャー!』
アベルとスクルドが影の攻撃で弾き飛ばされた!
なんと飛び出してきた影は『始祖の人狼』アセナ!
『獣』のダンジョンから追放したアセナが何故ここに?!
アダムが俺とアセナの間に割って入ろうとするが・・・間に合わない!
アセナが俺の喉笛を噛みきろうと、口を大きく広げて飛びかかってきた!
俺は腰から倒れ込みながら、腰のポーチからソレを取り出した!
シュ――――――――!
キャインキャインキャーン!
俺が取り出して、息がかかるほど頭を近づけたアセナの鼻先に吹き付けたのは・・・催涙スプレー!
凶悪な
絶叫を上げてのたうち回る『始祖の人狼』アセナの胸に、アダムの魔剣ジャッジメントとカインの大地の剣が深々と突き刺さって、アセナを床に縫い付けた!
ゴブゥォ!
血の塊を吐き出しながら、アセナの瞳からは命の輝きが失われていった・・・・・・
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熱い日に幸せな事・・・冷えたスイカとアサヒ生ビール・・・・・・カッシュ!
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