第22話 開戦の決意
それは、背徳の街ジュミラの
「お忙しいところ、時間を頂きありがたく。リヒト殿。」
「
俺はレストラン『黄金樹』の個室で2人を迎えた。
もちろんトートも同席させている。
「ご承知のとおり、ジュミラの街の南方にはゴルチェスター王国が存在しており、ジュミラから1番近い都市はボルトゥール伯爵が治めております『迷宮都市リッチブル』となります。」
「そのボルトゥール伯爵から自治都市ジュミラの『トリナス』に対して、正式に傭兵の派遣要請が届きました。」
俺はいつもの香り高い紅茶を飲みながら質問した。
「傭兵の派遣って、その伯爵様ってのはどっかと戦争でもするつもりなのか?」
「いいえ、戦争ではございません。リヒト様。ダンジョンモンスターの間引きが依頼の目的にございます。」
ティーカップをそっとソーサーに置きながらカメリアが答えた。
大きく開いた胸元を強調するドレスを着ている・・・。正直、エロい・・・一体何歳なんだ?この人・・・
「伯爵家からは、『スタンピード』の兆候あり。至急傭兵を派遣されたしとの内容でございました。」
「元々はボルトゥール伯爵家との付き合いがあった、盗賊騎士団のルードがこの仕事を請け負っておりました。」
「ですが、ルードとその傭兵団が壊滅したため、我々はその代わりとなる『傭兵』を迷宮都市リッチブルへ送らねばならんのです。リヒト殿・・・」
ボッシオが汗を拭きながら説明する。その様子からも、今回の趣旨が見えてくるというものだった・・・
「そこで、リヒト様。先の盟約に従い、リヒト様の『戦力』をご提供頂きたく・・・」
「どうか、お願い致します。リヒト殿・・・」
「依頼の件、承知した。だがその前に・・・トート・・・」
「はい、お任せ下さい。」
と言って、トートが静かに頷いた・・・
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「迷宮都市リッチブルのダンジョンは5年前に出来た、比較的新しいダンジョンだってことが分かったわ。リヒト。」
「元々はボルトゥール伯爵領の領都オスティアに隣接する小村だったのが、5年前にそこにダンジョンが出来たことによって迷宮都市リッチブルに発展したものです。
街の経済全てが、『ダンジョン資源』で回ってます。」
今日はカジノ『大富豪』のVIPルームに集まって、トートとアメリアの報告を聞いている。
あの日、ボッシオとカメリアからの依頼の後、直ちに迷宮都市リッチブルに関する情報を集めてもらったんだ。
「これまでに5回スタンピードが起きてるわね。リヒト。」
「年1回のペースなのか?ん?」
「いいえ、最初の1年で4回発生し、最後のスタンピードは3年前となってます。
スタンピードの発生に周期性は見られません。」
アメリアの説明に、頭を悩ませる。相手は
・・・でも何故今なんだ?
『マイロード。ボルトゥール伯爵家に関しては、裏を取りましたが、怪しき動きはございませんでした。』
『
領都の酒場で、傭兵たちが酔いながら語り合ってるのを『臣下の者共』が確認しております。』
『ゴブリンラット』のキング
「そうか・・・。報告ご苦労!」
そう言って、手に持ってたピースタッチオをキングとクィーンに手渡した。
『有り難き幸せ!』
『『ゴッド セーブ ザ マイロード!』』
「いや、そこまで畏まらなくてもいいから」
ピースタッチオの殻を器用にむいて、実を食べてる様子が可愛い・・・
「そんで、どうするの?リヒト。この件さぁ」
ベルは、『ゴブリン ナイト オブ ナイツ』のカインにピースタッチオの殻をむかせて、その成果たる実だけを食べている・・・。もういい加減お腹が膨れすぎて、飛ぶのが辛そうだ・・・
アダム?ヤツは今産気づいたイフに付き添っている。その流れでエイルも一緒だ。
だから、アダムの代わりにカインとアベルのイケメン2人が参加してた。
「俺はこの迷宮都市リッチブルのダンジョンだが・・・」
「『試練』のダンジョンと呼ばれています。」
「『試練』のダンジョンか・・・ありがとう。アメリア。」
今ここにいるメンバー、トート、アメリア、ベル、シフォン、カイン、アベルと、メンバーの顔をゆっくりと見渡した。
『バニー』ちゃんもいるが、今はノーカンだ。
「俺は、『試練』のダンジョンが活性化していると言う話だが、『ダンジョンバトル』の準備なんじゃないかと思ってる。」
「5年前に出来たダンジョンだとすると、少なくとも3つのダンジョンは倒しているってことでしょう?リヒト?」
トートの理解は正しい。
「そうなるな。恐らく相手は
「「「・・・!」」」
敵の格にみんなが言葉を失う・・・
「ねえねえ、ダンジョンが活性化してるって、どんな感じなの?」
ピースタッチオを食べ過ぎたためか、飛ぶのを諦めたて、美しく磨きこまれたテーブルでヘタっている残念ピクシーが質問した。
『下層のモンスターの姿が上層階で確認され・・・』
『・・・全階層のモンスターが、より好戦的になっているとの事です。ベル様。』
「だからさ、俺はこの『試練』のダンジョンを叩こうと思う。」
「「「ッ!」」」
息を飲む幹部たち・・・
「格上の相手になりますが、それでもやるのですか?マスター?」
やっとの思いで、シフォンが心配そうな顔で問い返す。
「ああ、そうだよシフォン。」
「「「・・・」」」
格上とのダンジョンバトル!その事実がみんなの口を重くした。
「『試練』のダンジョンがどこのダンジョンを狙っているのかが分からない以上、開戦のタイミングは俺たちが握りたい!」
「何故だい?」
「・・・それは勝てるタイミングで仕掛けるということ・・・でいいのかな?」
ベルの質問にトートが問いを重ねる。
俺はもう一度、仲間たちの顔を見渡してから答えた。
「そうだ。今度のバトルも勝つべくして勝つ!
そのために、トートとアメリア。お前たちに頼みがある・・・」
◇◇◇
薄暗い迷宮の奥深く、壁にはめ込まれた黒曜石の大きな玉座にそのモノは深く座っていた。
『・・・王よ!
玉座の前に控えていた黒曜の鱗を持ったモンスターが、鋭い牙から炎を零しながらその主人に告げた。
黒曜の鱗と翼を持つは、『試練』のダンジョンの第1使徒たる『龍人騎士』、ドラゴニュートのゴーディエであった。
『・・・3日後には、攻撃に派遣する精鋭1万、御前に揃えてご覧に入れます。陛下。』
『龍人騎士』ゴーディエの隣に控えし暗黒の鎧に身を包んだ首ナシの騎士、第2使徒たる『デュラハン』のデュゲクランが、魔法の鎧を鳴らしながらその主に報告した。
「・・・不要に人と交わる不愉快な羽虫を叩き潰すのだ!」
『『御意』』
ほの暗い玉座の間の隅には、影に潜む白銀の瞳が静かに燃えていた・・・
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