第14話 祭りの終わり

◇◇◇


―― 『獣』のダンジョン 1st『ルーム』


 『ゴブリンスケルトン』を粉々に粉砕した『ワーウルフ』2体に、ライゾウとハンゾウ、ニャルトとサスケが2組に別れて対峙していた。


 『始祖の人狼』に対しては、カインとアベルに4人の『ワルキューレ』が対峙しているが、『始祖の人狼』は笑みすら口元に浮かべている!


 身体能力はその全てにおいて『ワーウルフ』が『ゴブリンニンジャ』を圧倒しているが、ペアで巧みに立ち回る『ニンジャ』たちは辛うじて『ワーウルフ』の蹂躙を押しとどめていた。


ガヴワァ!


『うわっ!ぐっ!』


 『ワーウルフ』に切りつけたニャルトが、逆襲をくらってウルフの鋭い爪で切り裂かれ飛ばせれてしまった。


『うかつだ!ニャルト!』


 サスケは咄嗟に雷をまとったクナイを3本『ワーウルフ』に叩き込んでニャルトを庇う。


 傷つき倒れたニャルトに、『ワルキューレ』が【大神オーディーンの加護】のスキルで治癒を行う。


『『ワルキューレ』のお姉ちゃん!ありがとうってはよ!』


 すかさず立ち上がったニャルトにサスケが命令する。


『ニャルト!ヤツを1秒でいいから抑えろ!』


『偉そうに命令すんなってばよ!サスケ!』


 そう言いながらニャルトは『ワーウルフ』に突っ込んた!


『影分身の術』


ボンッ!


 ニャルトが煙に覆われると、そこから20数人のニャルトが現れて、『ワーウルフ』の巨体に掴みかかった!


 『ワーウルフ』に次々と噛み砕かれ引き裂かれるニャルトの影たち、だがその一瞬こそサスケが待ち望んでいた瞬間!


 サスケは右目に開眼した『魔輪眼』に魔力を込めて、『ワーウルフ』の喉元に焦点を合わせた!


【イザナギ】


 サスケの『魔輪眼』の焦点を結んだ『ワーウルフ』の喉元に暗黒の炎が燃え上がった!


ギャャィーン!


 『ワーウルフ』が喉を掻きむしるが、【イザナギ】の炎は1度燃え上がったら、ソレが燃え尽きるまで消えることはない!


『『ワルキューレ』の姉ちゃん!』


 ニャルトの呼びかけに、『ワルキューレ』のビルドとカーラが答えた!


『『英雄礼賛えいゆうらいさん』』


 ニャルトに二重のバフがかかった!


『こんにゃろー!【二重反転渦巻丸】!』


 分身したニャルトが2人がかりで互いに逆回転する2つの『渦巻丸』を合体させて、正と負の相克する性質を持った暴れ狂う『渦巻丸』を『ワーウルフ』の胸に叩き込んだ!


ギヤァァァァ――ッ!


 半身を黒炎と渦巻きに吹き飛ばされても、『ワーウルフ』は憎悪を瞳に燃え上がらせて、立ち上がった!


『ま、まじかよ・・・』

『クソっ!』


 『ワーウルフ』の執念に気圧されるニャルトとサスケ。だが、その瞬間!


シュッ!シュッ!シュッ!


 3本のカーボン製の矢が、『ワーウルフ』の両目と心臓を射抜いた!


 草原に倒れ落ちる『ワーウルフ』。

 サスケとニャルトが振り向くと、はるか後方の草むらがムクリと立ち上がって、ニャルトとサスケにサムズアップして見せた。


『『アーチャー』のおっちゃん!』


 『アーチャー』初号は、いつかの仕返しをここで果たした。


―― ニャルトたちが『ワーウルフ』に勝利したその一方で、残ったもう一体の『ワーウルフ』と『始祖の人狼』、それらと向かい合っていた『欲望』のダンジョンの幹部たちとの戦いも、最終局面をむかえていた・・・


 その一方で残ったウルフたちは、両手で数えられるまでに減らされた『ゴブリンスケルトン』と4人の『ゴブリンワルキューレ』によって、『始祖の人狼』と『ワーウルフ』から引き離されたいた。


 『ワーウルフ』と対峙しているライゾウとハンゾウは、圧倒的なパワーと反射を見せる『ワーウルフ』に手をこまねいていた。


ガルル!


 だが、『ワーウルフ』自身もライゾウやハンゾウの幻影や火遁、雷遁の忍術に翻弄ほんろうされて、『ニンジャ』たちを押し切ることができずにいる。


 『ワーウルフ』と『ニンジャ』たちとの間に、ある種の緊迫した膠着状態が生まれた、その時!アベルの『大地の剣』によって切られたブルーやブラックのウルフが、『ワーウルフ』に牙を向いてきた!


 これこそがアベルのスキル、【不和の種】の力だった!


 手足の腱や喉元に飛びかかってくる『裏切り』のウルフたち!

 『ワーウルフ』が振り払おうと噛み付いているウルフごと体を捻った瞬間、足元に散乱していた『ゴブリンスケルトン』の白骨が集まって巨大な拳を作って、『ワーウルフ』を殴り倒した!

 この白骨の巨大な拳こそ非力な『スケルトン』の唯一の力、スキル【骨合体】!


 その隙を狙っていたライゾウは、走り抜けながら倒れる『ワーウルフ』の喉元を深く切り裂き、『ワーウルフ』が悲鳴をあげる暇も与えずにハンゾウがシフォンの作った忍刀『村雨』を深々と『ワーウルフ』の心臓に突き刺した!


 だが、その様子を見ていた『始祖の人狼』であるアセナが、聞くものの魂を凍らせる『威圧』のこもった咆哮を上げた!


ガウオオオオオオオォォォォン!


 だが、アセナの咆哮に耐えたカインも大声で叫び返した!


『キング!行けー!』


 カインの叫びに、隠れていた『欲望』のダンジョンの最後の切り札が飛び出した!


 それは2万匹を超える『ゴブリン ラット』の大群で、これまでは『ゴブリンスケルトン』のいなせなアフロの中に隠れて潜んでいた者たちだった!


 アフロの揺りかごから飛び出した『ゴブリンラット』の大群は、キングとクイーンの指揮のもと、大きな1つの群れとなって『獣』の草原フィールドを駆け抜けていく!


 キング『リチャード獅子心王 』に率いられた『ゴブリンラット』は群体となって、慌てて攻撃してくるウルフをかわしながら草原を駆け抜けていく!


シュパッ!

ギャイン!


シュパッ!

キャキャン!


 『ゴブリンラット』に攻撃を仕掛けるウルフたちも、草原に潜んでいた『アーチャー』たちの狙撃で次々と倒れていく!


 あっという間に1000メートルを走りきった『ゴブリンラット』の群れに、『リチャード獅子心王 』は次のフロアへの突撃を命じた!


 その隣でクイーン『ビクトリア 』は、傷ついた『ラット』たちをスキル【慈愛】のエリアヒールで一気に癒していく。


 『ラット』の最後の集団と共に次のフロアに侵入した『キング』と『クイーン』が目にしたものは、『獣』のダンジョンの『コア』だった!


 『コア』の周りには10匹のブラックウルフしかいない。


 キング『リチャード獅子心王 』は『ラット』の群体にウルフの攻撃を命じて、自分は近衛の『ラット』に作らせたネズミの階段をかけ上って行った!


 目の前に迫ってくる『獣』の『コア』!


 キング『リチャード獅子心王 』は『コア』に向かって飛び上がり、そして『コア』に体でダイブした・・・


ピシィ!


【只今をもちまして、『欲望』のダンジョンの勝利による『ダンジョンバトル』を終了します。】


 ワウォ――――――ン


 遠くで『始祖の人狼』の遠吠えが響いていた・・・


◇◇◇


【只今をもちまして、『欲望』のダンジョンの勝利による『ダンジョンバトル』を終了します。】


「やったー!」

「きゃー、やりました!マスター!」

「よっし!」

「うそっ!やったー!」


 俺は力が脱け、床にへたりこんてしまった。


「は、はははは・・・」

「マスター!」


 シフォンが抱きついてくる!嬉し涙を流しているシフォンの頭を撫でてあげる。


「おめでとう、リヒト。見事だったわ。」


 トートがそう言って手を差し出してきた。その手をとって


「ああ、ありがとう。みんなのおかげだよ・・・。それしか思いつかないな・・・」


「あなたらしいわね。ふふふ。」


 クスクス笑いながらトートが言う。


「でも、早いとこ『ベルちゃんの胸の1ミリ成長記念大サービス祭り』終わらせないと、破産しちゃうわよ」


「あー!それそれ!なんだよ、その変てこな名前は!」


 ははは、ベルがぷりぷり怒っている!


「それじゃぁ、私は『研究室』で休ませてもらうわよ・・・ふあ〜あ」


 エイルは5徹のダメージを引きずりながら『研究室』へ戻っていった。


 エイルの手下である『ゴブリンアルケミスト』たちは、既に『コアルーム』の床でイビキを立てている。


 アダムがイケメンなサムズアップで、白い歯が眩しい笑顔を見せてイフの肩を抱きながら『ゴブリン王国』へ戻っていった。あの雰囲気なら、これから休まずにのだろう・・・


 こうして、『欲望』のダンジョンの全てをカケた『祭り』が幕を下ろした。



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