第8話 欲望のダンジョン歴 7日目

◇◇◇


「お気をつけて〜!」

「「「またお待ちしてまーす♡」」」


 『暁の剣』の3人は、二日酔いでフラフラしながら『欲望のダンジョン』を後にした。


 最高の酒!最高の女!最高の遊び!


 3人は帰りたくなかったのだが、メグに『今度はお友達も連れていらっしてくださいね♡』と言われて、是非ともダチ連中も連れて来なくてはと、やっと重い腰を上げて街に帰って行ったのだった。


 酔っ払った3人を守るように、ギリースーツでカモフラージュしたゴブリンアーチャーたちが、誘導してることには『暁の剣』の誰も気づくことはなかった。


◇◇◇


―― 時は前日にさかのぼる ――


「キター!お客さんだよ!」


 コアの赤く回転する警告の光と同時にベルが叫んだ。


「よーし!アーチャー初号と2号、上手くここまで誘導できたな!」


「当然よ!私の作品だもの!」


 ダンジョンの外に広がる森から人間たちを連れて来たのは、ウチの新しいネームド、ゴブリンアーチャーたちだった。


 アーチャーのステータスはこうだ。ドン!


=================

種族名: ゴブリン アーチャー

個体名: 初号、2号

性 別: ♂

装 備: ギリースーツ、コンバットボウ

Lv.: 40

スキル: スナイプ、ストーキング、

    カモフラージュ

=================


初号、2号の装備は、言わずと知れた『マスター装備』で、どちらも変わった形をしているが、性能はピカイチだ!


「さてさて、上手く『ポーション』に気づいてくれるかな?」

「ドキドキしますね、マスター」


「よっしゃ!上手く気づいたぞ!」


 右目にキズのある男がポーションに気づいて、入口ホールの正面に作った棚からポーションを手に取った。


「でも、ポーションだって分かるのかなぁ・・・」

「あっ」

「そう言えば、私も生まれ育った街では『ポーション』なんて見たことありませんでした・・・」

「・・・」


「使ってもらえなければ、私の『ポーション』の良さが理解してもらえないわねぇ・・・」


「リヒトの計画、ザルすぎ・・・」

「ほんと困ったわねぇ・・・」


「あっ!あれっあれ!『ポーション』使いそうですよ!」


 髭面の大男が自分の肩に『ポーション』を振りかけた。


「おお、よく効くなあ、『ポーション』・・・」

「エイル様特製だからねぇ。さあ、もっと褒めたたえなさーい!」

「うん、すごいやー。で、もっと作れるの?」

「それな!」


「い、今助手を仕込んでるとこよ!」


「あっ、『湧き水』に気づきました!」

「おお!リヒトの作戦通りだね!」


「ふふふぅ。この『湧き水』の中に、『興奮薬』がマシマシに入ってるとは誰も思うまい!ひひひ」


「あー、悪い顔してるなぁ」


「顔のことは触れるな!」


「マスターはキレイなお顔ですよ!」


「シフォン。そこは触れないのが優しさよ・・・」

「本当です!」


「おっ!3名様『アゲハ蝶』へごあんなーいだな!」


 3人が我が『欲望』のダンジョン自慢のバーに入っていくぞ!


「ただでさえ魅力的な女の子たちなのに、『興奮薬』でドーピングしてるんだからきっとすごいだろうね。」


「ふふふ、それにだな。ここまで来るのに、命の危険にさらされて来たんだ!そこで思いもかけず天女の様な魅惑的な美女にあったらどうなると思う?」


「『魅了』のスキルを使うまでもなく、わ・・・ほら落ちた!」


「う〜ん。この男たち、ずっと彼女たちの胸に釘付けだよね・・・何かムカつく!」


「ははは、そりゃピクシーじゃ無理じゃね?」


「世の中はいつも『持たざる者』が負けるのよ!」


 エイルさん。ベルの目の前で、そのご立派な胸を持ち上げるのはやめたげて〜


「マスターも、その、立派なのがお好きですか?」


「えーっ、そりゃあ男ですから、ロマンは追い求めるものです。はい。」


「エイルさん!私を改造してください!」


「いや、早まるな!シフォン!お前まだ10歳だろ!可能性を信じろ!」


「あー!あの髪の長い男!ベスちゃんのお尻触ってるよ!ケダモノ!」


「いや、それだけとりこにされてるってことだがら、いいんじゃね?減るもんじゃないし。」


「何で虜になると、お尻さわるんだよぉ!」

「えっ、そこにお尻があるから?」


「じゃあ、胸をさわるのは?」

「そこに山があるからだよ!決まってるだろ!

 男は天に挑むものだからさっ。」


 完璧!


「「・・・」」

「マスター。やっぱり胸がお好きなんですね!」


「ごめんなさい。忘れてください。」


「あっーポッチー食べてる!ボクも食べたい!」


「いや、あれも営業の道具だから」


「でも『マスター装備』であんな不思議なお菓子が出せるなんて思わなかったわ。」


「そんな事いったらさ、アイツらが飲んでるウィ・スッキーやアンパーンなんかだっていっしょじゃん。」


「ボクには、ウィ・スッキーが『ふつうのゴブリン』3匹分なのが忍びないよ・・・」


「このダンジョンで1番安いのはゴブリンだからな〜」


「でも、ゴブリンさんたち1番ガンバってくれてます!」


「はは、そうだね。シフォンは優しいね。」


「うっわ!今度は胸の谷間で果物食べさせてるよ!うえーっ!」


「あの目にキズのある男。完全にのぼせ上がってるわね。見てあの顔。」


「いや!素晴らしいよ!男心にクリティカルヒットだね!」


「リヒトも、あれして欲しいの?ん?」

「ですか?」


「だんだん、マスターの性癖が明らかになってきたわね。さすが『欲望』のダンジョンのマスターだけあって、立派な性癖をお持ちですこと。」


「いや!だってあのたわわの中に顔を突っ込むんだぜ!この欲求に逆らうヤツは男にあらずた!間違いない!」


「ハイハイ。おっぱいスキー乙!その変態臭のする妄想をたれ流さないでくださる?」


「あっあれっ!男と女の人って、ああやって口移しするのですか?」

「うん、そうだねぇ。両手でメグの体をまさぐってるねぇ・・・」


「あちゃー、シフォンに見せるのは早かったかなあ・・・」


「いいえ、シフォン。よく見ておきなさい!コレが男の本性よ!純粋なる『欲望』よ!

 私たちは人間の理性というタガを外して、『欲望』に忠誠を誓わせなければならないのよ!」


「そうたな、エイル!これが俺たちの勝利の姿だ!一欠片ひとかけらの理性も残さず『欲望』に踊らされている姿は、生命力に満ち溢れている!この状態こそ究極の【DP永久機関】完成形だ!」



 ウチの看板4姉妹に踊らされた3人組の男は、夕方のご来店から翌朝まで15時間も遊び倒して、欲望のバー『アゲハ蝶』から帰って行った。


「本日の売上発表ー!」

「待ってましたぁー!リヒト、早く早く!」


売上げ報告

――――――――――――――――

+50P  基本売上単価【欲望状態】

×3   来店人数

――――――――――――――――

150P  時間当たり売上げ

×15  滞在時間

+30% 顧客満足度ボーナス

――――――――――――――――

2,925P 売上げ合計

支出報告

――――――――――――――――

-20P  ポッチー×2箱

-120P  ウィ・スッキー×4本

-60P  果物盛合せ

――――――――――――――――

-200P  支出合計

2,925P 売上げ合計

-200P  支出合計

――――――――――――――――

2,725P 利益


「今日の成功は、メグたちコンパニオンシスターズの頑張った成果だ!」


「そうね。よく頑張ったわねぇ、貴方たち。」


「ありがとうございます。お褒めのお言葉、身にあまります。」


 メグの一礼に合わせて、残りの姉妹たちも一斉にお辞儀する。


「アイツら、人間連れてまた来るかなあ?」


「アイツらの『欲望』にギラついた目!貴方も見たでしょ?必ずまた来るわ、近いうちに!」


「よーし!それじゃあ、もっともっと人間をとりこにするために、新しいアイデアをみんなで考えよう!」


「「「「はい!ご主人様♡」」」」

「オッケー!ボクも考えるよ!」

「わ、私もがんばります!」


 こうして『欲望のダンジョン』は、この世界に産声を上げたのだった。



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