第12話 開戦ダンジョンバトル!
作戦決行の判断リミットである2300まであと10分!俺は正直焦っていた。
「マスター・・・」
「リヒト、落ち着いて。トートちゃんを信じよう!ねっ」
「頭では分かってるんだ。だが、本当にこのタイミングでよかったのか、もっと準備に費やしたらよかったのでは・・・どうしても迷ってしまうんだ。」
「1日延ばしたからって、必ずしも私たちに有利になるとは限らない。時間は等しく相手にも対応の時間を与えるわ。
この決定だけは私たちが口をはさむことができないの。分かってるでしょ、マスター。」
目にクマをつくり、綺麗な銀髪をボサボサにしてくたびれ果てたエイルが、例の『死にかけの爺さんが、婆さんに襲いかかる【強壮薬】』をストローでチュウチュウ飲みながら、珍しく真面目な声で真剣に話した。
「分かってるさ。」
今は信じて待つだけだ・・・
「2300よ。リヒト・・・」
ベルが決断を促した・・・
「仕方ない、作戦は延k・・・」
「マスター!トートちゃんです!トートちゃんが帰ってきました!」
コアの映像に、荷物を山ほど背負った『ゴブリンポーター』を引き連れて帰ってきたトートが映し出された!
「間に合った!作戦は予定通り決行する!『
『『『ゴブ!!』』』
「「はい!」」
◇◇◇
『ゴブリンニンジャ』が森の木々から飛び出した!
目指すは『狼の丘』の頂きにあるダンジョンの入口ただ一点!
『狼の丘』を警護していたウルフたちが、次々に『ニンジャ』に襲いかかる!
だが、圧倒的レベル差と高い身体能力で、襲いかかるウルフたちを次々に切り飛ばしていく
彼らに下された指令は・・・
『明朝0300に敵のダンジョンに突入しろ!お前たちの突入を以て、『ダンジョンバトル』の開戦だ!』
◇◇◇
【『欲望』のダンジョンが、『獣』のダンジョンに『ダンジョンバトル』を挑みました。
只今を以て双方の入口が空間接続されました。これは『ダンジョンバトル』が終了するまで解除されることはありません。】
俺の頭の中に、無機質な女性の声が響いた。
「カイン!アベル!進撃開始!頼んだぞ!」
『『・・・!』』
入口に接続された特別な『ルーム』に配置されていた『レギオン』と、その指揮官であるカインとアベル。さらにその2人の指揮をサポートする『ワルキューレ』12体が、『欲望』のダンジョンの入口を越えて『獣』のダンジョンに侵入していった。
「
「何かっこつけてんだよ!リヒト。」
「すまんすまん。てへぺろ」
「あ、あのぉ、マスター。『ワルキューレ』のお姉さんたち、とても綺麗で強そうには見えないのですが・・・」
「心配かい?」
「はい・・・」
「大丈夫よシフォン。あれで『ワルキューレ』はアダムとイブの子。第2世代のチートゴブリンだから。」
「ねえ、リヒト。じゃあさあ、もう一度彼女たちのステータス見せてよ。」
「あいよ」
=================
種族名: ゴブリン ワルキューレ
個体名: ブリュンヒルデ+11体
性 別: ♂
装 備: 戦乙女の兜・鎧、軍神の剣
Lv.: 45
スキル: 大神の加護、死者選定
英雄礼賛
=================
あのアダムとイブの子供だとは思えない高スペックなスキルだ。
「シフォンが頑張って作った装備で身を固めているんだ。大丈夫たよ。」
「そうよ。背徳の街ジュミラで売ったら、それこそ王侯貴族が列を作って買いに来るわ!だから、ねっ」
ダンジョンに戻ってくるなり、疲れて寝落ちしていたトートが起き出して話しに加わってきた。金の匂いでもしたのか?
「ダメだ!これは売れない!ウチのダンジョンでもメチャ希少なミスリル製なんだからな。グラム1000
「涙を流しながら、ミスリルを『鉱山』に配置してたもんね、リヒト。ぷぷぷ」
「うるせー!攻撃はカインとアベルを信じて待とう。後は防衛だが・・・」
「人間たちの避難は・・・というか、久々の『サービスデイ』にお祭り騒ぎで浮かれ騒いでるわぁ。『興奮薬』盛らなくても大丈夫だったわねぇ。残念。」
俺は『獣』のダンジョンの侵攻に備えて、30分前から現在ダンジョン内にいる全ての人間たちの『保護』に手を打った。
◇◇◇
―― 0230 『欲望』のダンジョン
「ダンジョンの中にいるすべての『欲望』の
これから『欲望』に忠実なオマエらに大事なことを告げる!」
ダンジョン内の全ての場所に、リヒトの声が響いた。リヒトは続ける
「たった今から、みんなのアイドル ベルの胸が1ミリ成長したお祝いとして、欲望のバー『アゲハ蝶』とカジノ『大富豪』をなんと無料で解放するぞー!
もちろん『大富豪』で稼いだコインは全部オマイラのもので、換金も自由だ!『アゲハ蝶』のお嬢もせいぞろいでオマイラをまってるぞ!
この機会を逃がすな!急げ、『欲望』の下僕たちよー!」
「「「・・・・・・うううおおおおおぉぉぉぉ!!!!」」」
『迷宮』や『鉱山』の潜っていた男たちが、目をギラギラ輝かせて駆け出した!中には重い装備を投げ捨てて駆け出した男までいる・・・
『トート商会』にいた男たちも、あるものは大急ぎで『貢物』のプレゼントを買ったり、換金のために持ち込んでいたダンジョン資源を換金せずにあわててカウンターに預けて、推しを目指して駆け出していった。
そんな騒動の最中、密かにダンジョン配置の入れ替えが行われた。だがそのことに気づいた男たちは、誰一人としていなかった・・・
◇◇◇
『獣』のダンジョン内1stルーム。
そこは『欲望』のダンジョンより広大な半径500メートルの円形の草原フィールドだった。
その入口から入ってすぐの位置で、『ゴブリンニンジャ』の4体が千を軽く超えるウルフの大群に囲まれていた。
ヴォォ―!
キャイン!キャン!キャン!
ライゾウの口から放射された火炎がウルフたちを焼く。
『うあっちっちちち!ライゾウのおっちゃんてば、あちいってばよー!』
ライゾウの火遁の術に巻き込まれたニャルトが文句を口にする。
『ニャルト!うるさい、黙って敵を倒せ!』
イケメンなサスケが、クールにクナイを投げてウルフを倒しながらニャルトに文句を言った。
『ガキども、真剣に戦え!でなければ、お前たちも殺す!』
ウルフたちに背後を取られないよう、巧妙に立ち回っているのはハンゾウ。
ハンゾウの一足一刀の間合いに迂闊に入ったウルフは、みなハンゾウの必殺の
『ニンジャ』たち4人(?)全てに託された刀は忍刀『村雨』!
天才鍛冶師シフォンが精魂込めて作った『魔剣』であった。
だが、いかに個々の能力が高くても、隠れる場所のない草原のフィールドでは、『ニンジャ』たちはジリジリ壁際に押し込まれていた!
ニャルトが渾身の『渦巻丸』をウルフに叩き込んだその時・・・・・・
ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ!
『やっと来たか!みな、入口まで後退!散れ!』
ライゾウの合図で、4人の
すると、ウルフの大群に向かって土煙を上げて突撃してきたのは、『欲望』のダンジョンが送り込んできた鋼の『レギオン』!『ゴブリンスケルトン』の軍団であった!
『ゴブリンスケルトン』は、元々たった5
『スケルトン』たちはみな、白骨の
その数は2,500!
エイルとその部下の『アルケミスト』たちが、禁断の『強壮薬』を飲み続けて何日も不眠不休で作り上げ、トートがジュミラの街でかき集めたカイトシールドと長槍で武装した『
素材が『よわいゴブリン』だった『スケルトン』は、レベルがたったの5でしかないが、カインとアベルの巧みな指揮と、『ワルキューレ』のスキル【英雄礼賛】のバフによって侮りがたい軍団となっていた!
何よりも、戦士がアフロなのか、はたまたアフロが戦士なのか!
アフロの戦士は、群体となってウルフの群れを噛み砕き、分断し、孤立させて倒していった!
1列目の『スケルトン』が、盾を隙間なくくっつけてウルフの動きを防ぎ、2列目と3列目の『スケルトン』が盾にぶち当たって動きを止めたウルフを長槍でタコ殴りにする!
初めは方形陣のファランクスで密集隊形だった『
戦いの
ワオオォォォ―――――ン!
3割ほど減少したウルフの大軍の後方に、2匹の灰色のワーウルフを従えた、1匹の巨大なシルバーのワーウルフが現れた!
このシルバーのワーウルフこそ、この『獣』のダンジョンの使徒である、『始祖の人狼』であった!
群体としての強さに特化した『スケルトン』軍団であったが、純粋な個としての卓越した暴力の前には、成すすべもなかった。
『始祖の人狼』と、それに従う2体の『ワーウルフ』によって、『レギオン』の戦線は壊滅して、『スケルトン』の白骨が砕けて宙に舞った・・・
ワオオォ――ン!
ワオオオォ――ン!
『欲望』のダンジョンに傾いていた勝利の天秤が、ガクンと音を立てて『獣』のダンジョン有利に大きく傾いた!
だが、崩壊した鋼の
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