「最高学年」
早朝。俺は目を覚ました。軽いトレーニングとジョギング。学校の課題の復習を行なった。今日で俺は最高学年だ。年月の早さには驚かされる。
学園をこなしながらも、任務にも出動するこの生活にもかなり慣れてきた。しかし、この生活スタイルを続けるのも学園生活中だけだ。
この学園を卒業すれば俺は再び、争いの日々が始まる。それが当たり前といえばそうなのだが、この平和な日々を知ってしまうと違和感を覚えざる得ないのだ。
少し前までの俺なら恋人がいるなんて想像もしていなかっただろう。人生、本当に何が起こるか分からないものだ。
そうこうしていると家を出る時間になった。
「出るか」
俺は玄関扉を開けた。扉を開けると春の匂いが鼻腔に流れ込んできた。今までろくに季節というものを意識してこなかった。仕事に支障をきたすかどうかばかりだった。
しかし、今は違う。心に季節の変化を理解して、楽しむ余裕が生まれている。そして今日から高校三年生だ。待ち合わせの場所に向かうと恵那が先に待っていた。
「おっはー! ソラシノ君!」
「おはよう恵那」
朝から有り余る元気を放出する恵那。そんな彼女を見て、笑みがこぼれた。
「相変わらず朝から騒がしいな」
庭島が大きなあくびをしながら、近くにやって来た。
「元気いっぱい! それが私の長所だよ!」
「その通り」
「バカップルがよ」
「バカップルだってー やったねソラシノ君!」
「だな」
「お前らなあ」
庭島がため息をついた後、優しく微笑んだ。彼だってなんだかんだ言いつつ、俺達の事を見守ってくれている。
「私達とうとう三年生だねー いやー季節の変化はあっという間ですなー」
「忘れるなよ。俺達はソラシノがいなかったら進級危うかったんだからな」
庭島の言う通りだ。二年最後のテスト。俺は彼らに勉強をつきっきりで教えた。
特に恵那は教えるのにかなり苦労した。それでも彼女が困っているのなら支えるのが彼氏の役目だ。俺は見事に任務を完遂したのだ。
「本当その節はどうも」
「かなり難易度の高い任務だけど成功してよかったよ」
本当に難しかった。まあでも組織内で部下を持った時、教える機会もあるだろうからこれも予行練習だと思えば、乗り越えられた。しんどかったけどね。
談笑しながら歩き続けていると俺達の学び舎が見えて来た。正門をくぐると無数の生徒達がいた。
おそらく今年入学して来た新入生達だろう。不安そうな顔をする生徒やにこやかな笑みを浮かべる生徒達がいた。
かつての俺もこんな顔をしていたのか? それはないな。彼らと出会ってから楽しい毎日が始まったのだから。
「さて。残り一年頑張ろう!」
「そうだな」
「うん」
俺達は生徒達がひしめく体育館の中に入って行った。
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