「テスト勉強」
冷房が効いた図書室の中、僕はノートに向かっていた。その隣では北原と庭島が暑さのせいで伸びていた。
「二人とも大丈夫?」
「ダメだ。数字が悪魔に見える」
「同感。ソラシノ君。よくこんなの出来るね」
「まあ、訓練の一環で座学はかなりやらされたからね。それよりも二人ともテスト勉強、本腰入れないと不味いんじゃないの?」
そう。俺達は期末テストを迎えている。これを乗り越えさえすれば、晴れて夏休みだが、大きな問題がある。
二人とも勉強が苦手なのだ。
「そうなんだよ」
「うああああ! 夏休み補習なの嫌だあああ!」
北原の叫び声が静かな図書室に響いた。遠くの方で図書委員の人が口に指を当てて、こちらを睨んでいた。
「まあ、分からないところは俺が教えるよ。二人とも。どこは分からないの?」
「全部」
「全部です」
どうやら俺はとんでもなく過酷な任務に当たってしまったようだ。それから俺はテスト本番までみっちり教えることにした。
一人なら問題ないが二人ともなるとさすがに骨が折れた。人に教えるというものがこうも難しいとは思わなかった。
俺に剣術を教えたシライさんや他の教官を改めて尊敬した。そうこうしているうちにテスト当日になった。
「二人とも。ここまでよくやった。あとは最善を尽くすだけだ」
「うん!」
「任せろ!」
北原と庭島が熱意を帯びた目を俺に向けた。二人なら必ず赤点を回避できる。俺も堂々とテストに臨もう。
数日後、緊張感が張り詰めた教室の中、答案用紙が手渡されていく。北原と庭島も受け取って席についた。
二人とも、表情が険しい。まさか、赤点を取ったのか。不安が頭をよぎる。
学校の屋上。俺は北原と庭島とともに答案を確認した。結論、三人とも赤点回避に成功した。
「あぶなかったあああ」
「本当。心臓が破裂するかと思った」
「それはこっちのセリフだよ。なんであんな表情が険しかったんだ?」
「いやー。もっと点数取れていると思ったもんだからさ」
「そうそう」
「まあ良かったよ」
俺は胸をなでおろした。赤点を取ると後が面倒だと耳にする。ともかくこれで忙しいテスト期間は終わりだ。
「それでソラシノ君は何点だったの?」
「ああ、俺は」
俺はテストの答案を見せた。二人の目がこれでもかというくらい見開いていた。
「すっごい! 百点じゃん! 間違い一つもないよ!」
「予想はしていたけどお前やっぱ怖いわ」
「たまたまだよ」
俺の点数は全教科満点だった。問題のいくつかは訓練のカリキュラムで覚えていた。
「ともあれ、これでテストは終わりだな」
「よーし! 夏休み楽しむぞ!」
北原が両手で拳を掲げて、青空に叫んだ。
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