「自覚」
広いレンタルスペースの中、私は庭島君とクリスマスパーティー兼ソラシノ君誕生日会用の料理を作っていた。北原君が来るまでに最高のモノを作るんだ。
「お前、ソラシノの事。好きだろ?」
「えっ? いや? そんな、事。ない、と」
「目が泳ぎまくっているぞ。あと包丁振り回すな」
びっくりしたせいか、顔が赤くなった。
動揺しまくっているせいか、顔が幼稚園児の描いた似顔絵みたいな顔になっている。しかし、顔の赤みと目の泳ぎ具合から図星のようだ。
「なんで、そんな事」
「お前、ソラシノがラブレターもらってからおかしかったし。授業ろくに聞いてないし、なんかぼーっとしていたっていうか」
「ああ、ありるれ。そうでした?」
どうやら私という人間はかなり分かりやすい人間のようです。
「いつから好きになったんだ?」
「んー 考えたんだけどよく覚えていないの。決定だとかなくて、積み重なって気づいたらって感じな」
思い返せば、自分でもこれがポイントっていうのはなかった気がする。口にしてようやく自覚した。
「なるほどな。それでどうするんだ? 告白すんの?」
「難しいと思う」
「どうして?」
「庭島君も知っているでしょ? ソラシノ君。恋愛がよく分からないって」
この前、女の子を振った理由が分からなかったからだった。きっと私が告白しても分からないと思う。
「分からないなら教えてやればいいんじゃねえの? この前の子に比べて、お前は有利だぞ。何せずっとあいつをそばで見てきたんだからな」
「庭島君」
「それに本気で好きなら、そんなもん関係ない。当たってみろ。無理だったらいくらでも愚痴に付き合ってやらあ」
そう言って庭島君が口角を上げた。庭島君はいつもぶっきらぼうなところがあるけれど、かなり人の事を見ている。
「あっ! そんな格好いいこと言っても好きにならないよ!」
「悪い。俺は博識な女の子が好きなんだ」
「はっ、白紙?」
「あー その時点でないわ」
「何を!」
「さっ、飯の盛り付けといくか」
「話そらさないで!」
庭島君がそそくさと料理と始めた。私はソラシノ君が好き。多分、自分が思っていた以上に好きだった。
なんでも出来ちゃう彼が実は一番、影で頑張っている。私や庭島君にとって当たり前だったものをソラシノ君が手に入れるのにどれだけ苦労したか、想像も出来ない。
そんな苦労を表に出さないで、頑張っている。きっと告白しなければその背中を見続ける事が出来る。でももし失敗したらその姿を見るのに躊躇っちゃうと思う。
でも庭島君のいう通り。やって見なきゃ分からない。やることはただ一つ。
そんな事を思っているとインターホンが鳴った。
「さて、主役の登場だ。クラッカー持て」
「うん!」
クラッカーを構えて、彼が来るのを待った。
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