「文化祭!」

「あっつ」

 澄み渡る青空の下、俺達は三人で学校の屋上でくつろいでいた。


「夏休みあっという間に終わったな」


「本当だよ! もっと欲しかったああああああああああああ!」

 北原が手すりに乗り出して、夏休みの終わりを嘆いた。


「うっさ。というか暑い!」

 夏休みは終わったとはいえ、この暑苦しい規制が終わるわけではない。


「そういや。次の授業って何だって」


「確か文化祭の出し物についての話し合いじゃなかったっけ?」


「そうだよ! 文化祭だ! 文化祭! 文化祭!」

 先ほどまで悲観していた北原が突然、手首がねじ切れんばかりの切り替えを見せた。


「お前はさっきから何なんだよ! 情緒不安定にも程があるだろ?」


「情緒不安系?」


「何で系統になってんだよ。複数あっても困るわ」

 庭島が頭を押さえながら、ため息が付いていた。文化祭。学園内で行われる祭りのようなものらしい。そうこうしているうちにチャイムが鳴り始めた。


「うお。やっべ」


「ソラシノ君。早くしないと遅れるよ」


「うん」




 教室に戻った後、早速文化祭のアイデアが出され始めた。


 パンケーキ。たこ焼き。クレープ。たこせん。次々と黒板に書き記されていく中、北原が手を上げた。


「私、メイド喫茶やりたあああい!」

 北原の発言で一斉に周囲の目が彼女に集中する。メイドカフェ。以前聞いたことがある。侍女の格好をした女性が客に料理を振る舞う店の事らしい。


「いやいや!」


「落ち着いて恵那ちゃん!」


「いいぞ! 北原ちゃん!」


「おー! イエス! ナイス!」

 教室内が一気に混沌とし始めた。文化祭というものの内情はよくわからないが、こういうものなのだろうか。


「何でメイドカフェ?」


「だって楽しそうだし! みんなで可愛い格好したら絶対楽しいよ!」


 北原が体を振り回すというオーバーな態度で進行役の女子s生徒に問いかけていた。


「ソラシノ君もそう思うよね!」

 いきなり彼女の意識がこちらに向いた。内心、驚きつつも思考を巡らせる。


「まあ、さっき出したメニューをカフェに組み込む事は可能だと思うし、悪くはないと思う」


「確かに。それなら男子は執事の格好をしてもらおうかな」


「えっ?」


「ファッ!?」


「マジで言ってんのか!」


「よっしゃあああ! 他校の女釣るぞ!」


「彼女捕まえるぞ!」


「オオオオオオオオオオ!」

 男子生徒から文句、野望。様々な意見が上がった。文化祭についての話し合いは思った以上にコトが進んだ。



 放課後、夕焼けが照らす中、ハンバーガーショップで時間を潰していた。


「文化祭。楽しみだね」


「そうだな」

「メイドカフェなんて提案が通った時はビビったけどな」

 庭島がそう言って、ケラケラと笑い声をあげる。


「ソラシノ君は文化祭とか初めてだっけ?」


「生まれてから一度もないよ」

 人生初の体験。一体どんなものなのか、かなり楽しみだ。


「なら。最高に楽しいものにしようね!」

 北原の向日葵のような笑顔が俺を優しく照らした。その優しい顔に俺は軽く頬英返した。

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