第41話 妹のワガママ
家に着いたらすぐに紬祈の足の治療をした。見たところ軽傷なので、湿布を貼って数日休めば良くなるだろう。
歩き回った疲れもあるため早めに寝ることにした。
いつものように、紬祈と2人でベッドに横になる。
「兄さん兄さん」
背中を向けていたのだが、指先でちょんちょんと突かれてしまい、仕方なく紬祈の方へ身体を向き直った。
大きくて宝石のように美しく純真な瞳と、暗闇の中で出会う。
「どうした?」
「……ワガママを、言ってもいいですか?」
「どんとこい」
紬祈は控えめに俺の小指を握りながら、ふんわりと微笑む。
「あの、ですね……迷惑なのはわかっているのですが……」
「迷惑なんかないって」
「……っ、ならその……えっと……」
そして、意を決してこちらを見つめた。
「この夏休み、ちょっとでいいので紬祈と遊ぶ時間を作ってほしいです……! 兄さんの勉強の邪魔にならない範囲で、少しだけ……!」
爛漫と揺れる瞳には、期待と不安が入り混じる。
紬祈はさっそくめんどうくさい妹を実践してくれていた。それがとても嬉しくて、思わず亜麻色の頭を撫でてあげる。
「オーケー。勉強の合間になるけど、一緒に遊ぼう。足が治ったらどこかお出かけもしようか」
「……っ! はい! ありがとうございます! 兄さん!」
「いいよ。俺もむしろ、いい息抜きになると思うから」
さらにわしゃわしゃと撫でると、紬祈はされるがままで気持ちよさそうに目を細めた。同時に緊張が解けたのか、トロンと垂れてきた。
「じゃあ、はやく足治さないとですね……むにゃ」
「ああ、そのためにも今はしっかり寝ような」
「……はい。おやすみなさい。兄さん」
スッと瞳が閉じられて、すぐに綺麗な寝息が聞こえてきた。
その晩はさすがの妹様も自家発電することなく、俺にとっても平穏な夜となった。
◇
それから数日は、紬祈のケガの様子を見ながら勉強を進めた。
「デート〜♪ デート〜♪ 兄さんとプールデート〜♪」
足の痛みが完全に癒えて、すっかり上機嫌な鼻歌が聞こえる。
今日は2人で出かける予定だ。
「紬祈〜? 準備できたか〜?」
「できました! すぐ行きます〜!」
玄関で待ちながら声をかけたらすぐに笑顔を振り撒きながらテクテクと駆けてきた。
大きな麦わら帽子に涼しげなワンピース。こう言っちゃ悪いがまるでオタクのツボを押さえたような、エロゲヒロインらしい可愛らしさだった。
「兄さ〜ん♪」
一緒に外へ出ると、紬祈はこの炎天下でもお構いなしに抱きついてくる。
「兄さん兄さん兄さ〜ん♪ ふふふっ♪」
「おいおい、暑くないか?」
「いいんです。ここは妹の場所ですから。それに最近はこうして隣を歩けませんでしたし〜。やっぱり兄さんの腕は太くてがっちりしていて、抱き心地抜群です♪」
「そ、そっか……そうですか……」
その腕もすぐ汗でべちゃべちゃになってしまうと思うのだが……。
まぁ、すぐにプールに入るわけだからと納得することにした。
目的地は街で1番大きなレジャープール。
バスに乗って向かった。
「じゃ、また後でな」
「はい、兄さん。また」
施設に着いたら着替えるためにそれぞれの更衣室へ別れる。
俺はさっさと水着に着替えて、紬祈を待つことにした。
「それにしても、この筋肉……」
プールサイドで、思わず自分の筋肉を見つめてしまう。
さっき紬祈にも言われたことだが、腕だけに限らず脚も胸板も腹に至るまで全てバキバキである。
まさに理想の細マッチョ体型。
転生してからは身体を鍛えていないというのに、きっと前世とは身体の構造からして違うのだろう。
不思議と、自身の身体を晒すのが嫌な感じがしなかった。もちろん、羞恥心はあるが。
なんというか、自信のようなものを感じる。そこらの中年男性の弛んだ腹を見ればちょっとした優越感まで湧いてしまう。
もしかしたら、この身体に心まで馴染んできているのかもしれなかった。
「あ、兄さんっ。お待たせしましたっ」
そうこう考えてるうちに紬祈が小走りでやってくる。
一瞬にしてその姿に視線を奪われた。
2つ結びされた長い亜麻色の髪がぴょこぴょこと跳ねる。
それだけでも愛おしさが全開なのに、水着はなんと大胆にもビキニスタイルだった。眩い肌色に映える白を基調としたフリルのある水着。
妹としての可愛らしさと女性的な魅力が見事に融合して、魔性の義妹が誕生していた。
寝取りゲーのヤリチン竿役に転生したらすでにヒロインが義妹で脅されメス奴隷だった。〜奴隷解放して家を出るつもりが、なぜか義妹に愛される〜 ゆきゆめ @mochizuki_3314
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