寝取りゲーのヤリチン竿役に転生したらすでにヒロインが義妹で脅されメス奴隷だった。〜奴隷解放して家を出るつもりが、なぜか義妹に愛される〜

ゆきゆめ

第1話 ヤリチン転生

 どうやら俺は死んだらしい。


 本当に、ろくでもない人生だった。


 友人も恋人もなく、家族にさえも半ば見捨てられながら、底辺派遣として馬車馬のように働く日々。仕事終わりに頭のおかしい通り魔に刺されて死亡した。


 どうせ死ぬならせめて身辺整理くらいさせて欲しかったなぁ。唯一の趣味であるエロゲのパッケージやグッズ類で小さな部屋は溢れかえっている。いわゆる、オタ部屋だ。

 久しく会っていない親の軽蔑の瞳が目に浮かぶようだ。

 申し訳ない、最後まで。俺のヒロインたちを頼むよ。どうか酷いことだけはしないでおくれ。

 

 画面の向こうの2次元ヒロインだけが、俺の癒しであり、救いだった。

 彼女たちにもう会えないのだと思うと、それだけはちょっと、寂しいな……。

 

 これからどうなるんだろう。


 少しずつこの意識も薄れて、消えてゆくのだろうか。

 そして天国へ? いや、地獄かな? 

 法に触れるような悪いことをした覚えはないけれど、社会にとって役立たずのロクデナシには違いない。


 ああ、それとも、転生とか————?


 まぁ、どうでもいいか。


 ただ、もしも次の人生があるのなら、純愛エロゲのような甘酸っぱい恋のひとつでもしてみたいなぁ……。


 そんなことを思っていると、俺の意識は突然シャットダウンするように途切れた。


 


「は?」


 そして、目覚めた。


「どこだ、ここ……俺、死んだのに……」


 ベッドに寝ていた。だいぶ広い部屋だ。空っぽの本棚に、机とノートPC。あとは段ボールが数個積み重なっている。

 引越ししたばかりみたいな生活感のなさ。

 

「キズは……ないな」


 刺されたのは腹のあたりだったが、傷跡ひとつ見受けられなかった。

 

「つーか、なんだこれ。本当に俺の身体か……?」


 自らの筋肉質な身体に驚愕する。

 胸板は厚く逞しく、腹は6つに割れていて、腕も脚も太い。そのどれもが鉄のように硬かった。

 俺はヒョロガリ陰キャだったはずなのに、これはなかなかのマッチョだ。


「あー、あー、あー」


 声も低くて、男らしい。


「くっそ、どうなってんだ……!?」


 焦りを感じ始めた俺は、冷や汗を垂らしながら立ち上がる。

 部屋の隅に姿見があるのに気づいて、すぐにその前へと移動した。


「なっ…………ぁ……!?」


 鏡に映った姿を見たとき、仰天して床に転げそうになった。もういっそのこと思考を放棄してしまえたらどんなによかったか。

 それほどまでに、非現実めいていた。


「これって……」


 そこに映っていたのは、身長180センチ以上はあろうかという体躯と、顔のパーツに恵まれたイケメンだった。

 

 死ぬ前のブサイクな俺とは似ても似つかない。


 そして、同時に気づいていた。


 この顔を俺は知っている。


「月城、拓真……!?」


 パッケージヒロインに一目惚れしたからという安易な理由でついつい手を出してしまって後悔したエロゲ。

 タイトルは「学校1の美少女が義妹になったので寝取って調教して奴隷にしてみたww」


 そのゲームの主人公にして最低のヤリチン竿役——月城拓真つきしろたくまだった。


「俺はゲームの世界に……月城拓真に、転生したのか……!?」

 

 はぁ!?

 どうしてよりにもよってこんな最悪のゲームに……!?


 俺はエロゲの寝取り竿役ってことか!?

 ふざけんな!?


 い、いや、落ち着け……。

 寝取らなければ、いいのか……? 


 いくら転生したと言っても、これからの月城拓真の行動は俺の意思に委ねられる。

 物語冒頭で義妹になるヒロインとは、兄としてふつうに仲良くしていけばいい。


 ヤリチンなんて辞めてしまえ。

 

 それならこんなイケメンになれてむしろラッキーじゃないか。今度の生には美少女とのラブコメが待っているかもしれない。


「ぐっ————!?!?!?」


 その時、頭が猛烈に傷んだ。


 そして、俺の中に知らない記憶が上書きされていく。


「あ、あぁ……!? な、なんだよこれ!? うわぁぁぁああああああああ!?!?!?」


 これは、月城拓真の記憶?

 数々の女を寝取り、調教し、犯し尽くし、自分の思い通りにしてきた過去。

 

 ……吐き気を催すほどにおぞましい。


 この身体は、罪で溢れている。


「————!?」


 ふいに部屋の扉がノックされる。


 これは、まさか……いや、そんなわけ!? だって俺はまだ、この世界に目覚めたばかりだぞ!?


「お、おはようございます……ご主人様……」


 しかしその声とセリフは、俺の希望をこれでもかというほどに打ち砕いていく。


 ああ、もうすでに記憶で見て知っていた。


 


 

 

「ご主人様、いらっしゃいますか?」

「あ、ああ……いるよ……」

「……失礼します」


 彼女が、部屋に入ってくる。


「あ、あなたの専用……メス、奴隷が……朝のご奉仕に参りました………………」


 真っ赤な顔で俯きながらそう告げたのは、この物語のヒロイン。


 ——有佐紬祈ありさつむぎ


 美しい亜麻色の髪を揺らす彼女は学校1の美少女であり、月城拓真の義妹——そして、メス奴隷だった。


 




(あとがき)


ヤリチン脱却学園ハーレムラブコメとなっております。ヒロインたくさん。たまにえっち。


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