伝説アイテム、作りまくった



 付与魔法にチャレンジしている俺。

 理由? 暇だからだよ。


 異世界チート能力を手に入れた俺はもう働く必要がなくなった。

 有り余る時間を、こうして趣味に利用している。


「さて、ようやくこつがつかめてきたぞ」


 俺の部屋にて。

 テーブル上には、100均で買ったやっすい包丁が5本。

 そして、能力付与された宝石が2つ。


「カイトさん、ごはんすよー」


 漫画家の南木曽なぎそなぎが俺の部屋に入ってくる。

 時計を見ると18時だった。結構時間が潰せたな。俺の隣でフェリがぐーすか眠っている。


「何やってんすか?」

「付与魔法で魔道具を作ってた」

「魔道具! かっけー! どんなの作ったんすかー?」


 俺は作った物を説明してみせる。


「こっちは100均の包丁の性能を強化してみた」

「ほうほう……どんなもんすかね」

「そこでこの凍ったお魚を用意した」


 冷蔵庫にあった魚を氷の魔法でかっちかちに凍らせたものだ。

 まな板の上に魚を置いてみせる。


 なぎが包丁を持って、魚の上に刃を置く。

 ストン……!


「おー! すげー! なんかちょー軽くストンって切れたっすよっ?」


 なぎが包丁使って、とんとんとん、と凍った魚を、まるで常温放置したバターのようにサクサクと切っていく。


「最初は加減がわからずに、タタミごとぶった切るほどの威力のものを作ってしまったんだが、込める魔力量をかえることで、強化できる度合いが変わることが判明してな」


 前のは魔力を込めすぎたんだよな。

 俺の場合だと、ほんのちょっぴりで十分すぎるほどだったことが判明。


「そんで、こっちのネックレスが浮遊魔法を能力付与したものだ」


 なぎにネックレスを渡す。

 彼女が首から提げる。


「飛べ、と念じれば浮く」


 ふわ……となぎの身体がほんの少し浮いたのだ。


「おー! 飛んでる! 飛んでるっすよ!」

「よし、慎重に高さをあげてみろ」


 ふわふわとなぎがどんどん高い場所に行く。天井にちょん、と頭をつけた。


「すげー! まじで浮遊魔法じゃないっすか!」

「ああ、これも付与する魔力量によって、魔法の威力が変わるのがわかったからな」


 一度コツを掴めば、なんてことはない。

 なぎがタタミに降りてきた。


「界人さん! これ欲しいっす!」

「おお、いいよ。別に。もう作り方は覚えたしな」

「やっふ~♡ けど界人さん、すごいっすね。こんなすごい魔道具を、趣味で作っちゃうなんて」

「すごいか?」


 うんうん、となぎがうなずく。


「だってこの包丁、めちゃんこ性能いいし、空飛ぶ魔道具も、ちょー便利じゃないっすか。これを趣味で作れるひとなんて、そうそういないっすよ」


 ふぅむ……そうか。すごいか……。

 む? 待てよ……。


「ひょっとしてこれ……高値で売れるんじゃね? 異世界で」


 そうだよ。包丁ですらSランク、伝説の武器なみのスペックを持ってるんだから、売れて当然じゃないか。

 空を飛ぶこの魔道具はどんなもんかわからないけど……なぎがすごいすごいって言ってるんだから、多分良い感じに売れる気がする。


「でも……あー、飯のあとでいっか」


 別に急いでもうけないといけないわけじゃないしな。

 蓄えは十分あるし。それに、異世界で金を稼いでも、こっちの世界に還元されない。


 向こうの金は、ゲームのコインみたいなもんだ。

 だから別に積極的に稼ごうとは思わん。


 それでもせっかく作ったのだから、ちょっとくらいは、リターンがほしいじゃん?


「なぎ、飯いこうぜ」

「うぃーっす」

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