Sランクの化け物を、100均ナイフでワンパンした結果



 世界扉ワールドドアをくぐって異世界へとやってきた。

 フェリが本来の姿になる。


「……お帰りなさいませ、ご主人様」


 ばあさんの屋敷に顔を出すと、そこにはメイド服を着た、エルフの奴隷が出迎えてくれた。

 

「イージス。久しぶりだな」


 彼女はイージス。俺が購入した、億単位が値段が付くほどの超美人エルフだ。

 ビー玉と引き換えに彼女を手に入れたあと、テイムして、この屋敷の管理を任せている。


「何か変わったことは?」

「おるわけなかろうが。こんな化け物のすみかに近づく愚か者など」


 相変わらず口の悪い奴隷だ。

 まあこんなので、ベッドの上ではあんあんと可愛い姿で俺に敗北するんだけどな。


「…………」


 もじもじ、とイージスが内股になっている。なんだ?


「どうした?」

「な、なんでもない!」

「ふむ……『命令だ、今言おうとしたことを言え』」


 ぐ、ぐぐう……とイージスがうなる。

 彼女は俺の購入した奴隷である。だから、命令に逆らうことができない。


「……ご、主人様……わらわのからだが、ほてって……おります」

「は? 体が……ほてってる? なんで」

「……言いたくない。あっ、ぐぅ……この首輪の……せいで、強制的に、発情……させられるの……です」


 …………え?


 イージスのクビには、麗子も付けてるごつい首輪がある。

 これは奴隷契約を結んだときについたものだ。


 にやにや、とフェリがにやつきながら言う。


『主よ、奴隷の首輪には異性の奴隷を発情させる効果があって、性的な満足感を覚えぬかぎりこの状態はずっと続くのだよ』

「まじか。そんなのが。なんでまたそんなエロ機能ついてるんだ?」

『奴隷にもいくつか種類があってな。そこの長耳は、カテゴリー的には性奴隷。つまり主人を性的に愉しませるよう売られてる商品なのだよ。一定時間が経過すると強制的に発情する』


 な、なるほど……。しかし別に性奴隷として買ったわけじゃなかったのだが。

 まあそういう風に売られていたのならしょうがない。


 それに女の奴隷の用途に、そういう行為も含まれてても不思議じゃないからな。


「ぐ……わらわは……こんな……あっ♡ 負けぬ……こんな、呪いなんぞに……!」

「ああ、そう」


 さてどうしよう。

 別に今はエロいことしたい気分じゃないし、本人も望んでいないのなら……いっか。


「じゃあ、俺でかけるから」

「え……?」


 なんか、すごい絶望的な表情になるイージス。やっぱり、夜の方のテイムされたいのか?

 彼女は耳まで真っ赤にすると、そっぽを向く。


「さ、さっと行くが良いわ!」

「あっそ。じゃ」

「あ……♡」


 イージスは甘い声を上げて、その場にぺたんと尻をつく。なんだこいつ?


『くく……どうやらこの女、つんつんした態度してるくせに、冷たくされるのが好みのようだなぁ……』

「ああそうなんだ。Mってことか」


 まあ何にせよ相手するつもりは無い。俺はフェリの背中にまたがる。

 彼女の首には浮遊魔法の付与されたネックレスがかけられている。


 ふわり、とフェリが浮く。

 そしてそのまま屋敷を後にした。


 まあ帰ってきて暇だったら相手してやってもいいな。


『さて、主よ。どこへ行く?』

「とりあえず街かな。銀鳳ぎんおう商会んとこいって、作った付与アイテムを売ろうかなって」

『承知した……む?』


 ひくひく、とフェリが鼻を動かす。


『主よ。人の気配だ。魔物と交戦してるようである』


 ばあさんの屋敷は森の中にある。

 だからモンスターが結構うろついていてやばいとこなのだ。


 モンスターと戦闘になってる、ってことだろうか。

 まあ別に助ける義理は無いが……。


「ちょっと性能の確認したいな」


 せっかく作ったものが、モンスター相手にどの程度通用するのか、まだ未検証だったからな。

 フェリに言って現場へと急行する。


 そこには、2人組の【冒険者らしき】パーティがいた。

 青い鎧を着た剣士に、魔法使いの女と。


 冒険者たちの前には馬鹿でかい蛇がいて、苦戦しているようだ。


「さて、じゃあこれの出番かな」


 アイテムボックスから取り出したのは、俺が付与して作った、100均ナイフ。

 テーブルごと畳ぶった切った性能をもったナイフである。


「これでどのくらいの威力なんだろうか。そいっ」


 俺は付与ナイフを適当に放り投げる。

 ひゅるるうう……とナイフは放物線を描きながら、大きな蛇の頭に、ぷすっと刺さった。


 実に情けない音がした次の瞬間……。

 ザフッ……!


 なんと蛇が一瞬で消し飛んだのだ!


「え、ええー……威力やばくね?」

『主の魔力がたっぷりと付与され、性能強化されたナイフだ。あれくらいは当然できる。さすがだな!』


 まあ、モンスターを倒せる程度のスペックはあるようだ。

 これなら売れるかな?


 眼下では馬鹿でかい蛇に襲われていた冒険たちが、ぽかんとした表情で俺を見上げていたのだった。

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