03.異世界到着、現状確認

 俺、飯島 界人は、祖母の家で不思議な鏡を見つける。

 そこに手を触れた瞬間、気を失った。


 ……気づくと、知らない天井がそこにあった。


「なんだ……なにが、起きたんだ?」


 少なくとも、土蔵のなかじゃないってことはすぐ理解できた。

 雑多なものにあふれていた土蔵と違い、そこはベッド以外何もない部屋だった。


「はは、んな、馬鹿な……」


 脳裏に一つの可能性がよぎる。

 中学生の時に読んだラノベでは、鏡を通って、主人公は別の世界に来ていた。


 気づいたら土蔵とは別の部屋。これって、もしかして……。


「異世界に来た、とか?」


 いや、いやいや、どこのラノベだよ。

 いやでも、じゃあこの状況はどう説明するんだ……?


「と、とにかく情報集めないとな」


 俺は部屋の中を改めて見回す。

 木造の部屋だろうか。やたらと豪華なベッドが一つ。そして振り返ると……。


「あの、鏡だ……」


 ベッド後ろの壁には、土蔵で見つけた大鏡が置いてあった。

 鏡の向こうには、土蔵が映し出されている。


「これって、いったい……?」


世界扉ワールド・ドア:ランクSSS】


「うぉお!? な、なんだよこれ!!!」


 目の前に半透明の板が出現し、文字列が浮かんできたのだ!

 板には、この鏡の説明らしい文章。こんなの、まるでネット小説でよく見る、やつみたいじゃないか……。


「鑑定……そう。そうだ、なんか聞いたような。気絶する前に……称号がどうとか」


 ここが異世界、である可能性が非常に高い。

 目の前に現れた半透明な板の文字通りなら、この鏡は世界扉。


 そんなものが現実にありえるわけない。

 ならば……。


「す、ステータス、お、オープン」


 すると、俺の前にまた、半透明の板が出現する。


~~~~~~

飯山 界人

レベル 1

称号 異世界のまれびと

恩恵ギフト

 世界扉、鑑定、アイテムボックス、ステータス確認、等価交換


~~~~~~


 ネット小説おなじみの、ステータス画面だ!


「まじで異世界じゃん……すげえ」


 我ながら、あほな感想しか出てこない。いやだって、まじで来るとは思わないじゃん。


「さっきのは鑑定スキルの力だったのか……」


 俺はもう一度、世界扉を見やる。

 今度は、はっきりと。


「【鑑定】」


【世界扉:ランクSSS。世界を自由に行き来できる。なお、所有者以外は使用不可】


 ま、まじで? 世界を自由に行き来できるって……異世界と現実の日本とをってこと!?

 これ、リスクとかないんだろうか。いや、あるなら明示されてるだろうし……。


「ん? 所有者ってなんだ。この鏡の所有者って……俺のこと?」


 次に俺は称号を鑑定してみる。


【異世界のまれびと:世界扉の所有者に与えられる称号。成長速度に補正がかかる】


 世界扉の所有者……つまり俺のことか。

 これは、俺にしか使えないってこと?


 他のやつは潜らないのだろう。

 で、成長速度ってのは、お決まりだと能力値的なことだろうか?


「でもステータス画面には、数値的なもんか書いてないんだよな」


 お決まりだと、攻撃力とかさ。

 そういうのないんだよね。

 

 でも称号【異世界のまれびと】の効果で、成長率に補正がかかってるって記述は、どういうことなんだろうか。

 わからんな……


「さて……ギフトについて確認してみるか」


 鑑定を使って調べたところ、


・アイテムボックス(SSS)

→無限に収納できる。数、大きさ問わず。また中に入れてる間は時間が止まる。


・等価交換(SSS)

→異世界の金貨、アイテムを、等価値の現実の金に変換可能。

※日本円の場合は電子マネー変換


・ステータス確認(SSS)

→ステータスを確認し、調整ができる。


「アイテムボックスは定番として、等価交換……って、やばいな。異世界のものを、日本円にできるんだろう?」


 これなら……たとえばこっちで冒険者とかやって、稼いだ金で、もうけたり。手に入れたレアなアイテムを使わずに、金にできるって訳!?


「すげえ……あ、でも電子マネーなんだ」


 まあ現実の金(札や硬貨)が謎パワーで増えていたら、さすがにオカミも不審に思うだろうしな。

 それに今の世の中じゃ、電子決済で大抵の買い物ってできるし。


「おいおい……まじか……はは、なんか、未来に展望が出てきたぞ!」


 俺には異世界を行き来する力がある。


 たとえば日本で売ってるライターとか、安く仕入れて、こっちで高く売って、それを日本円に【等価交換】すれば……。


「楽して金儲けできるんじゃないか……ゆ、夢が広がるな……!」


 ……まあとはいえ、貿易商的なことをするにしても、まずは現状把握だ。


「まだ部屋から出てすらいないからな……物を売るにしても、人のいるとこにいかないとだし。そもそもどこの、どんな建物なんだここ……?」


 ひとしきり、俺の持つ力を確認したので、お次はこの部屋のある、建物の探索を開始することにした。

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