04.初戦闘、ドラゴンをワンパン

    

 しばらく調べて、ここが森の中の小さな洋館であることが判明した。

 2階建て。小さなとは言ったけど、部屋数はそこそこあった。


 廃墟って感じでもない。ホコリなどが見当たらない、館の中は実に整っていた。


 誰かが掃除してるのか、あるいは、使っているのか……それはわからない。

 ただ、気になることがあった。


 それは、屋敷を鑑定したときのこと。


【ラブ・マリィの館】とあった。


「ラブ・マリィ……ばあさんじゃねえかこれ」


 そう、何を隠そう俺のばあさん、ミドルネーム持ちなのだ。


 飯山いいやま・ラブ・万里。

 ラブって……ラブって……って昔から思ってたけど……。


「なんでばあさんの名前がここに……?」


 わ、わからん。なんなんだ?

 ばあさんは、何者なんだよ?


「ま、まあ、とにかく、ここがばあさんの家だってことは明らかだ。なら……孫の俺が使っても、怒られない……よな?」


 わからんことだらけだが、まあかんがえててもしかたない。

 てがかりもないしな。


「とりあえず、中を調べるか」


 俺は館のなかに、気になる物を見つけていたのだ。

 それは書斎。


 すごい量の本があって、その中のひとつに、こんなもんがあったのだ。


【魔女の魔導書】


 適当にぺらっとめくって読んでみたところ……。


【初級・火属性魔法;火球ファイアー・ボール習得しました】


「読んだだけで魔法覚えられた!? なんで!?」


 色々考えて、ふと、異世界のまれびとの影響だろうかと結論を出した。

 あれには成長率を上昇させるって書いてあった。


 単にステータスの伸びがよくなるのかって思ったけど、魔法修得も成長と捉えることができるのではなかろうか。


「つまり、習熟度も上昇してるってこと……だよな」


 本を適当に見るだけで、俺はみるみるうちに魔法を修得していった。

 魔法には初級・中級・上級、そして最上位の魔法【極大魔法】ってやつがあるらしい。


 俺はその一つを修得できた。

 となると、使ってみたくなるのが人情ってもんだ。


 俺は屋敷を出て、手を前に出す。


「【煉獄業火球ノヴァ・ストライク】!!!」


 しーん……。


「は、発動しない……は、恥ずかしい……」


 しかし魔法が修得できたのに、放てないとはこれいかに。


 ん? まてよ……。


 鑑定を使って、魔法について調べてみる。

 するとこんなこと、こんなことがわかった。


【魔法には、ある程度の魔法力が必要】

【魔法力:魔法を行使する総合力のこと。この数値が低いと、上位の魔法が放てない】


 やっぱりそうだ。つまり極大魔法を使うためには、それ相応の魔法力が必要ってこと。


「どうやりゃステータスが伸びるんだ? やっぱり……戦闘、とか? あとは武器を装備したり……みたいな」


 ばあさんの家を探してみたところ……。


「なんじゃ、このアイテム、武器の山は……?」


 館の中には、武器庫があった。

 そこには杖やら剣やらが乱雑に置いてある。


 調べてみるとどれも、ランクSとか、SSとかSSSとかあって、びびった。


 そんな中に、こんなもんがあった。


【竜神の杖(SSS):装備すると魔法力に+10000される】


 長めの杖に、竜が巻かれてるようなデザイン。先端には宝玉がついてる。


 これを使えば、魔法力が上昇するし、極大魔法も使えるんじゃ……?


 と。そのときだった。


「GIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」


「うぉ! な、なんだぁ……!?」


 獣のような悲鳴が外から響いてきた。

 俺は杖を持って、慌てて外に出る……。


「ひっ……!」

「GIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」


 そこに居たのは、黒くて、デカくて……ごつい……。


「ど、ドラゴンだぁあああああああああああああああ!」


    ★


 外へ出てみると……馬鹿でかいドラゴンが居た。


「無理無理無理! レベル1にこれは無理ぃいいいいいいいいいいい!」


 どう見ても死ぬだろこれ!?

 

「GIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!」


 ドラゴンが雄叫びを上げながら、おれに向かって走ってくる。

 逃げようにも……に、逃げれない。腰が完全に抜けてしまっている……。


「ああもう終わりだ……!」


 館の前で動けない俺めがけて、ドラゴンが突進し……。


 バチィンッ……!


「………………へ?」


 ドラゴンが、俺の前で止まってる……いや、違う。


「バリア……?」


 そう、バリアだ。俺……というか、この館を覆うようにして、半透明、半球状のバリアが張られているのだ。


「そうか、やたらと館の状態が良かったのは、このバリアのおかげだったんだ……」


 森の洋館、しかもドラゴンが出るような場所だ。

 建物が無事で済むわけがない。


 裏を返せばここで生活できるだけの力が、この館には備わっていたってこと。それがこの、バリアってことか。


「GIGA! GIGAAAA!」


 ばちんっ、ばちんっ、とドラゴンが体当たりするも、バリアに阻まれてこっちには入ってこれない様子。

 ……ていうことは、この中に居れば安心ってこと……。


「はぁ……びびったぁ……」


 しかしなんだろうな、このバリア。

 もしかして、屋敷を守る結界的な?


 だとしたら、ラッキーだな。


「しかし、これからどうする……? ドラゴンはほっといても、中に入ってこないけど、このままにしとくのもな」


 俺はいずれ、森の中、そして外の世界へいきたいと思ってる。貿易をするにしても、モンスターを倒して金を稼ぐにしても、人里へいかないと始まらない。


 そうなると、このドラゴンは邪魔だ。

邪魔者はどうすればいい?


「……倒す?」


 いや、俺にはそんな力が……いや、待てよ。


「この杖と……極大魔法があれば……」


 いける……いけるか?

 いや、やってみよう。

 俺は杖をドラゴンに向けて、魔法を発動させる。


 魔法なんて、使ったことないから、最初は不安だった。

 けれど、わかる。杖をつかんで、使うぞって念じた瞬間、使い方が、理解できた。


 ……これは、どういうことなんだろうか。


 だが、内側にわだかまる大いなる力が、体の外へと、放出される……!


「【煉獄業火球ノヴァ・ストライク】」


 杖先を向けた先……ドラゴンの頭上に、巨大な魔法陣が出現する。

 そこから現れたのは、これまた尋常じゃないくらいの大きさの火の玉だ。


 それが、凄まじい勢いと熱量を持って、ドラゴンの脳天に直撃する。


 ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!


 ……轟音、そして、煙……。

 バリアがなければ……死んでたな俺……。


【経験値が入りました。レベルアップします】


 ふと、そんな音がどこからか聞こえてきて……。


【経験値が入りました。レベルアップします】【経験値が入りました。レベルアップします】【経験値が入りました。レベルアップします】【経験値が入りました。レベルアップします】【経験値が入りました。レベルアップします】【経験値が入りました。レベルアップします】……。


「ちょ、ちょっとレベルアップしすぎじゃね!? どんだけレベル上がるんだよ!」


 何十分くらい、レベルアップ音がしていただろうか……。


「ステータス、オープン」


~~~~~

飯山 界人

レベル:9999

~~~~~


「きゅうせん……9999!?」


 なんじゃそりゃ……!

 てゆーか上がりすぎだろ!


「なんでこんな、一気にレベル上がったんだ……?」


 そんだけ強いドラゴンだったってこと……?

 ああもう、消し飛ばす前に鑑定しておけば……。いや、あんな怯えた状態じゃ、無理か。


「しかしレベル上がりすぎだろこれ……称号による成長率上昇の恩恵ギフトがあったとしても……ってあれ?」


 なんか、安心したら、気が抜けて……意識が……

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