10.スライム、テイムしてみた

 

 いろいろと試してみた結果。

 たとえば、手をつないで一緒に入るとか、抱っこして入るとか。


 しかし全部試しても、彼女はここを通ることができなかった。


『うぇええん……異世界~……せっかく夢の世界がそこにあるのにぃ~……』

「ま、まあ……お土産もってくるからさ」

『うぃーっす……』


 ということで、俺単独で異世界探索。

 フェリはもうちょっと現実を謳歌したいんだとさ。


 俺は館を出てみることにした。


 そう、前から気になっていたんだよな、この館の周りが、どうなっているかが。

 異世界にこれるようになってから、まだ館の中の探索しかしてなかったし。


 どういう感じになってるのか、興味はあったんだ。

 ……まあ、もっとも外にはモンスターがうろついてて、怖かったってのもあるが。


 今は竜王ぶったおして、レベル9999という、最強の存在になった。

外に出るのも怖くなくなったから、出てみようと思う。


「で、周りは森っと……」


 ばあさんの館は森の中に存在している。

 周りを見渡しても、うっそうとした木々が生い茂っているばかりだ。


「そういや、ここってどういう森なんだ? フェンリルとか、竜王とか、普通にうろついてたんだけど……」


 異世界ってみんなそんな物騒なんだろうか。

 この世界の常識を知ってるフェリは、今向こうにいるし……帰ったら聞いてみよう。


 バリアの外に出ても、俺は平然と出歩けている。

 

と、そのときだ。


「きゅー」

「ん? あれは……スライム?」


 俺の前に、一匹のスライムが現れた。

 おお、スライムだ。ゲームとかに出てくる水色のあれだ。


 今までドラゴンとかフェンリルとか、やばいモンスターばっかりだったから、ほっこりするな。


「きゅ、きゅー♡」


 ぴょん、とスライムが俺のもとへ飛び込んできた。

 俺はボールのように受け止める。


【ギフト、《毒耐性》を獲得しました】


 は? 毒耐性……だと?

 なんで? 今このタイミングで?


「きゅ、きゅー?」


 俺の胸の中にいるスライムが困惑していた。

 ……いや、待て。スライムの身体の色、なんかさっきと違うぞ。


 今は、毒々しい紫色になってるし……まさか!


「か、【鑑定】」

 暴食王スライム・キング(SSS)。古竜1000匹を一瞬で食べつくす無尽の食欲を持つ。食べた相手の能力を奪い、己の力と変えて、あらゆる攻撃をしかけてくる、最強のスライム。


「き、君やばいスライムだったのね……」

「きゅ~……」


 たぶん毒のスキルをこいつは使ってたんだ。で、触れた俺を毒で殺して、食べる作戦だったのだろう。


「かわいい顔してなんつーエグいことを。倒させてもらう……」

「きゅ~……」

「たお……」

「きゅ~……」


 ……半泣きになってるスライムを、殺すのは、ちょっとなぁ……。


「おまえ、もう悪さしない?」

「きゅ!」

「よし、じゃあ逃がしてやろう」


 俺は暴食王を下ろしてやる。まあかわいそうだったからな。


「きゅ、きゅ~♪」


 逃がしてやった暴食王が、俺の足にくっついて、すりすりしてきた。


「おまえ……もしかして、仲間になりたいのか?」

「きゅー!」


称号調教師《テイマー》を獲得しました】

調教師テイマー?」


 鑑定結果によると、どうやら特定のモンスターを、支配下に置くことができるようになったらしい。

 テイムしたモンスターには、自分の力を共有して使えるようになったり、五感を共有することができるとのこと。はー……便利。


「まあ、じゃ、帰りますかね。あんま遠く行って帰れなくなるの嫌だし」


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