09.JK、同居。異世界行きたい
俺、飯山界人の家に、漫画家の
「わふー! すっげーす! フェンリルっすよふぇんりる! でけえー!」
フェリにくっついて、もふもふしまくるなぎ。
どう言い訳しようか迷っていたけど、思ったよりあっさりと、なぎは状況を受け入れていた。
「なんてふっわふわなんすか! ふわふわっす! このまま一部毛を抜き取って持ち歩きたいくらいっす!」
『やめよ』
フェリが嫌がっていた。
それと、どうにかしてくれと目で訴えてくる。
「あー……なぎよ。やめてやってくれ」
「うっす」
なぎがあっさりとフェリを離した。
フェリは俺の後ろに回って身を隠す。すっかりなぎを警戒してるようだ。
「で、なぎよ。おまえ……どうしてここに?」
なぎは説明する。
俺が会社クビになったことを聞いたと。
そして、辞めたと。
「以上!」
「判断速すぎだろ……」
はぁ……。つまり俺がこいつを辞めさせたってことになるじゃないか。
「なぎ、悪いことは言わん。戻れ」
「いやっす。うちは界人さんがいるから、漫画がんばれてたんすよ。界人さんがいないんだったら、もう漫画書く意味ねーっす」
ぷいっ、となぎがそっぽ向く。
確かに、俺はこの子がデビューしたときから付き合いがある。
いろいろ励ましもしてきた。
恩を感じてくれているのは、まあありがたいが、だからって俺のせいで辞めて欲しくない。
「おまえの漫画はすごいんだから、やめたら読者も悲しむだろ」
「うちは界人さんがいないと悲しいっす。一番の読者である、界人さんがいないんじゃ、書く意味ないんで」
ううん……どうしたもんか……。
いや、待て。
俺は誰のために説得を試みてるんだ?
会社……タカナワのためか?
いや、違うだろ。
なんであんな俺をクビにした会社に義理立てしなきゃいけないんだ。
読者たちには、申し訳ないけど。
漫画家がやりたくないってことを、無理強いはできない。
「わかったよ」
「じゃあうちもここに住みますね!」
「いやなんでだよ」
急展開すぎんだろ……。
「だって! フェンリルっすよフェンリル! 異世界っすよ異世界! めっちゃ興味あるっす!」
そういや好奇心旺盛なこだったわ、この子。
「うちも行きたいっす! 界人さんの言うところの、異世界!」
……まあ、別にいいか。
他言無用って言っておけば。
俺は世界扉を開く、と念じる。
目の前にでかい鏡が出現した。
「いざゆかん、異世界へ! とりゃー!」
なぎが鏡に特攻をかました……のだが。
「ぎゃん!」
なぎは鏡に顔をぶつけて、うずくまってしまった。
結構いたいのか、鼻を押さえて悶絶してる。
「いってえっすよぉ……」
「え、ど、どうした?」
「鏡に入れ無いっす~」
そんなはずはないだろ。
俺は鏡に手を入れると、するんと入って、向こうの世界へいけた。
『吾輩も入れるぞ』
フェリが後に続いてくる。
だが鏡の向こうで、なぎがばんばん! と叩いていた。
まるで、透明な壁を叩いてるかのようだ。
にゅ、と俺が顔だけを出す。
「どうやら、なぎは入れないみたいだな」
「うぇえ!? そんなぁ! なんで界人さんとフェリちゃんは入れて、うちは入れないのー!」
いやわからん……。
なんか資格的なものが必要ってそういや言っていたな。
俺とフェリニアって、なぎにないもの……。
ううん……わからん……。
「えーー! 異世界いきたかったー! ずるいっす、界人さんずるいー!」
なぎが駄々っ子のようにジタバタしていた。
まあ無理なもんは無理なんだよ。
しかし……なんなんだろうな、条件って。
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