試験で驚愕される



 俺は冒険者登録するため、試験を受けることになった。

 どうやら魔力量は尋常じゃないレベルだったらしい。


 どういう理屈なんだろうかこれは……?

 ばーさんの孫だからか?

 わからん……。


 さて、魔力量を測った後、俺は街の外へとやってきた。


「それではっ! これよりわたーくしが君をテストしてあげよう!」

「あんたが試験官か?」

「そのっとーり!」


 試験官の男がきらんっ、と白い歯をのぞかせながら言う。


「わたーくしは【モブカマーセ】! 元Aランク冒険者で、今はギルドの試験官を担当してるのだよ! どうだいすごいだろう!」

「はあ……よろしく、モブカマーセさん」


 Aランク冒険者ってのがどの程度のレベルなんだろうな。

 俺、今まで冒険者が戦ってるとこ見たことないし。


 俺の反応が期待した物と違ったからか、モブカマーセはムッ、と顔をしかめるも、すぐに馬鹿にしたように鼻を鳴らす。


「このわたーくしの目はひっじょーに肥えてるからね! あまりにも弱い場合は、容赦なく落とすからそのつもりでねっ!」

「わ、わかりました」


 うーんどうなんだろう。採点基準がわからんし、合格ラインがどの程度にあるのかわからん。

 ただこの男は結構厳しく採点するっていってるし、あんまり手は抜かない方が良いのだろうか。


「では、第一試験の魔力測定は終わったので、第二試験【魔法力テスト】を行う!」


 魔法力テストは、魔法が使えるなら魔法で攻撃、つかえないなら魔法に対応(防御・回避)をするテストらしい。


「なに? 魔法が使えるのかい? 君はテイマーなのに?」

「あ、はい。なので攻撃の方で」

「ふぅん、まあいい。ぬうん!」


 モブカマーセは杖を振るう。

 すると地面がぼこっと隆起して、それは青銅の人形へと変化した。


 おお、魔法か。ばあさんの家の魔導書にもあった、【錬金】だろう。

 鉱物を自在に操る魔法だ。


「さあわたーくしの作ったこの青銅ブロンズ魔導人形ゴーレムに魔法を当てたまえ」

「わかりました」

「もっとも! わたーくしの魔導人形ゴーレムの防御力はドラゴンに踏まれても丈夫……」

「【火球ファイアー・ボール】」


 ボッ……!

 ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!


 俺の放った魔法が、青銅ブロンズ魔導人形ゴーレムとやらを木っ端みじんにした。


「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

「これでいいか?」


 どこをどう評価するのかわからんが、まあ的当てと同じだろう。

 壊せたから多分問題は無いはず。


「ちょ、ちょ、ちょっと! ちょおおおおおっと待て!!!!!!!」


 モブカマーセが目を剥いて叫ぶ。


「なんだ?」

「今の何!? 上級魔法!? それとも極大魔法かい!?」

「上級? いや、普通の火球ファイアー・ボールだけど」

「か、下級魔法であの威力なのか!?」

「ああ、まあ」


 あの威力っていわれても、そもそもこの世界の基準わからないけどな。

 俺、異世界人だし。


「し、しかも君! 詠唱はどうした!?」

「詠唱……?」

「魔法を使うときに必要とされるプロセスの一つだよ!」


 ああ、よくRPGとかであるやつか。【天光満つるところに~】みたいな。


「魔法ってそんな呪文いるのか?」

「いるよ!!!! そんなの常識だろうが!!!!!!!!」

「へー、知らなかった」

「しら……!?」


 てゆーか、さっきまでの余裕の態度はどこへいったのだろうか、モブカマーセ。

 ぱくぱく……と口を開いたり閉じたりしている。


「し、信じられない……おかしすぎる……」

「ん? おかしいって……」


 ああ、なるほど。


「弱すぎるってことか? 下級魔法にしては」


 びきっ、とモブカマーセの額に血管が浮かぶ。


「強すぎるって意味だよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「え、何怒ってるのおまえ……?」

「普通はね! 呪文を使わないと魔法がそもそも発動しないんだよ!!!」

「え、でも発動したけど」

「だから! おかしいんだよ! それが!!!!!」


 そういうもんなのか、ふーん……。

 フェリが『くくく』と忍び笑いをしていた。


 こいつわかってたな……。

 一方でモブカマーセが大汗搔きながら、ぶつぶつとつぶやく。


「……下級の火魔法なんてせいぜい、モンスターに火傷負わせる程度の威力しかないのに。なんだあの異次元の強さは! わたーくしを遥かに超えてるじゃないかっ!」

「あのー……合否は?」


 ハッ! とモブカマーセが正気に戻る。

「う、うむ! まあいちおう、合格としよう」

「おー、やった。じゃあ第三試験だな」

「うむ……わたーくしとの、決闘だ!」


 モブカマーセは杖を剣のように握る。


魔力刀ブレード!!!」


 杖先から光が発生し刃となる。あれだ、ライトセーバーだ。


「これは無属性魔法【魔力刀ブレード】! 魔力を使って刃を作る。その切れ味は竜の肉をも斬るほど!」


 第三試験は直接の戦闘力を見るって試験だったな。

 モブカマーセとタイマンってことか。


 相手が剣を使ってくる場合、こっちも剣を使った方が良いかな。

 俺はアイテムボックスを開いて、ばあさんの家にあった剣を手に取る。


「な、なんだねそのゴツい剣は?」

「実家にあったものだ」


■進化聖剣エクスキャリバー(SSS):いにしえの勇者が使用していた聖剣。切った相手の能力を奪い進化する。


 漫画家のなぎが、ばあさんの家の物置で見つけた物だ。

 護身用にいちおう持ってきたのである。

「うぉ、思ったより軽いな、この剣」


 さて、どうするか。剣術なんてやったことないんだが……。


『(問題あるまい。主はまれびと、人よりも成長速度に補正がかかる。やってみるがよい)』


 俺はうなずいて、モブカマーセと相対する。


「では……いくよ!」


 たんっ! と軽やかに地面を蹴ると、モブカマーセが俺に接近してくる。

 結構な速さだった。


 だが目で追えないくらいではない。


 スカッ!


「なっ!? このっ!」


 スカスカッ!


【条件を達成しました。スキル《見切り》を獲得しました】


 まただ。俺が何か簡単な行動をするだけで、条件が満たされ、新たなスキルを手に入れることができる。


■見切り(SSS):あらゆる物理・魔法攻撃を目でとらえ、自動で回避することが可能となる。


「この! このっ!」


 ムキになってモブカマーセが攻撃してくるが、見切りスキルのある俺は全部回避できる。

 これがまた不思議で、俺は別に避けるって意識せずとも、体が自動的に動いて攻撃を避けてくれるのだ。


「ぜええ……はあ……! くそっ! だ、だがしかーし! 攻撃を当てない限り、勝ちはないぞぉ!」

「おっしゃるとおりで。じゃ、いくぞ」


 といっても、剣なんてどう扱えばいいんだ。

 剣道マンガで見たのをまねて、俺は大上段に構えて、あいつに突っ込む。


「うおー」

「はっ! なんだいその素人まるだ……しぃ!?」


【条件を満たしました。スキル《剣術(最上級)》を獲得しました】


■剣術(最上級)(SSS):称号剣聖が持つスキル。世界最高の剣術を修得。剣聖の動きをトレースし、あらゆる相手に攻撃を当てる。またどんな物も剣で切断する。


 ぐんっ! と俺の体が急に加速する。


「なっ!? なんだ動きが……! はや……!」


 ばきん!

 ぴた……!


「…………おお」


 魔力刀ブレードを出していた杖を切り、そして俺の剣の切っ先を、相手の首筋に当てている。


「ま、まったく……見えなかった……」

「で? 合否は?」


 モブカマーセが両手を挙げて、悔しそうに言う。


「ごう……かく。合格だ……」

「お、やったね」


 モブカマーセがその場に膝をついて頭を抱える。


「なんてことだ……凄まじい魔法力に加え、こんな高度な剣術を……き、君! 一体なにものだね!?」


 何者って言われても……。

 どう答えるか、賢者? 世界魔女の孫?


 いやここは、登録されてる職業を言うべきか。


「ただのテイマーだけど?」


 するとモブカマーセは唖然とした表情をしながら、しかし次第に顔を真っ赤にして……。


「おまえみたいなテイマーがいてたまるかぁあああああああああああああああああああああああああ!」


 まあ何はともあれ、試験をパスし、冒険者となることができたのだった。

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