スライムでお掃除



 俺はクゥジョーのとこで魔道具を売った。

 百均ナイフと、軽井沢のショッピングモールで買った装飾品を売ったところ……。


「あれで5億か……」


 もちろん、異世界での単価、である。現実ではまったく使えない金だ。

 手間がほとんどかかってないのに、そんな大金ゲットして良いんだろうか。まあ……いいか。


「てゆーかビー玉五袋と、魔道具が同等って改めて考えるとバグってるよな、いろいろ」


 付与魔法もすごいけど、あの小さなガラス玉を作る技術はもっとすげえんだってさ。

 まあそんなもんか。


「ただいまー」


 ばーさんの屋敷へと帰ってきた俺とフェリ。

 ぴょんぴょん、と足下に何かが近づいてくる。


「おお、おまえは暴食王スライム・キングじゃあないか」


 この森でテイムしたモンスターである。

 フェリと違って人間に変身する力が無いため、こっちに置いてきてる。


「暇そうだなお前」


 こくんと暴食王がうなずく。そこへ、ほうきを持ったエルフ奴隷のイージスがやってきた。


「ふん。帰ってきたのか」

「ああ。おまえ何してるの?」

「見てわかるだろう? 掃除をしておった。まったく、広くてかなわんわ」


 ふーん……掃除ねえ……あ。


「そうだ、暴食王。おまえ、暇してるならイージスを手伝ってやりな」

「なんじゃと?」


 暴食王は結構使える。いろんな物を食べられるし、分身だってできる。


「掃除やおまえが買い物行くときとかに、便利かなって」

「……おまえ、妾が外に出てもいいのか?」

「ああ。別に。ここの管理をしっかりしてくれてるならな」


 イージスが目を丸くしている。「……おかしなやつだ」と小さくつぶやいた。


「妾が逃げるという可能性は?」

「まあ、逃げても感覚共有でどこにいるかわかるし。おまえ馬鹿じゃないから、そんな無駄なことしないだろ」


 うぐぐ、とイージスが言葉に詰まっている。


『主よ、このスライムを掃除に使うと言ってたが、どうするのだ?』

「言葉通りだよ。ほれ」


 俺はポケットに入れておいた、屋台のゴミを、ぽいっとスライムに投げる。

 するとスライムはゴミを食べた。


「暴食王は何でも食べる。ならゴミも食うだろう? 地面にゴミが落ちていたら拾って食え、って命じておけば、自動で掃除してくれる」

『なるほど……スライムをそんな使い方するやつ、初めて見たぞ。さすがだな』


 さすがってほどだろうか、これ。

 ちょっと考えれば思いつくだろうと思うんだけどな。

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