美少女と平日から悠々とショッピングする



翌日、俺は、なぎを連れて買い物に来ていた。


 場所は東信(※長野の東側のこと)地方で最も大きな買い物スポット。

 軽井沢駅前にある、ショッピングモールへとやってきた。


 北陸新幹線の駅すぐ目の前にあるモールである。

 いろんなテナントが入っていて、県外からも人が来るほどだ。


 俺たちが住んでいるのは中信(長野県の中央)地方で、結構距離があるものの、世界扉ワールドドアがあれば一瞬で移動が可能。

 軽井沢のショッピングモールには、ガキの時分に一度行ったことがあったのだ。一度行ったことがあれば、たとえ過去に一度行っただけだろうと、いけるらしい。便利ぃ。


 で、ド平日の真っ昼間から買い物に来た次第。


『主よ、なぜ買い物に?』


子犬くらいの大きさのフェリがそう尋ねてくる。

いつもは馬鹿でかい姿のフェリ。


 彼女は魔力を消費することで、身体のサイズを変えることができるらしい。

 まあ疲れるからめったにやらんそうだ。

 

「まあ、お詫びだな。黙って留守にしてたし」


 なぎは俺が何も言わず数日帰ってこないだけで、大泣きしてしまった。

 異世界で討ち死にでもしたと思われたらしい。


 まあそりゃ、異世界は魔法も剣もあり、モンスターまでいるような世界だからな。

 命の価値がこっちよりも軽い。死んでしまったと誤解しても無理ない場所だ。


 とはいえ、連絡は入れておくべきだったと反省。

 迷惑かけた分、買い物で補填しようってわけだ。


「軽井沢のショッピングモール来るの初めてっす! あざます!」


 なぎが感激した様子でそう言う。


「さて、と。今日はまあ、お詫びだから、好きな物遠慮無く言ってくれ。全部買ってやるから」

「全部……!?」

「うん、全部」


 まあ金はあるしな。無駄金使うなーってばあさんなら思ったろうけど、1億円も稼いだばかりだし、今後も楽に大金は稼げそうだから、今日くらい金を使ってもいいだろう。


「ほ、本当にいいんすか?」


 なぎが不安そうに言う。こいつも漫画家で大成したはずなんだが、感覚は庶民なんだよな。俺と一緒で。


「もちろん。欲しいもの全部買ってあげるから」

「い、いやでも……さすがに気が引けるっていうか……」

「いいっていいって、遠慮しないで。金が有り余ってんだ」


 あんまり遠慮されてもいやだから、ちょっと成金ぶってみました。

 なぎが目を輝かせながら言う。


「すげえ……界人さん、なんかちょーかっけーっす」

「そう?」

「そっすよ! 身体的なのはもちろん、精神的な余裕も感じられて、すっごい魅力的っすよ! 界人さん!」


 社畜時代は金もなければ、元気もない、未来もないな、ないないづくしだった。

 女性からそんなかっこいいなんて言われたこと一度もなかったな。


 異世界を行き来できるようになって、マジで世界が180度変わったわ。ありがとう、ばあさん。和菓子買っておこう。


「じゃ、電子マネーチャージするからスマホを出して」

「え?」

「いや、お金あげるから好きなものかってきなさいって意味なんだけど……」


 がし、とJKが俺の腕を掴んできた。


「え、なに?」

「せっかくのデートなんですから、一緒に楽しみましょう!」


 は、はあ……。単に一緒に買い物にいくことが……デートか。デートだな。うん。

 まあ別にいいか。俺も暇だったし。


 ぶらぶらなぎといっしょに外を見て回る。

 ショッピングモールには平日だというのに、結構人がいた。多分休日が休めないタイプの人たちが来てるのだろう。もしくは、観光客か。


 男達がなぎをみて、恨めしそうな目で見てきた。


「チクショウなんだよあいつ……」「こんな昼間っからデートなんてよ」「なんだよ金持ちかよ」


 周りの視線が痛い。休日に来た方が良かったかな?

 いやでも人がいるなか買い物したくないしな。幼い頃の記憶だが、休日のここはめちゃこんでいたのをよく覚えている。尋常じゃないくらい混むからねここ。


「本当に何でも買っていいんすか? バッグとか服とか」

「おうよ。好きなのでいいよ」

「んじゃ服見に行きましょ!」


 なぎが近くの服屋にはいる。

 割とこじゃれた服が飾ってあった。値段は……当然のように万単位。


 でも……不思議だな。全然萎縮しない。

 前は買い物する際、財布の中身と、値札とを何度も何度も見比べた。


 今は、そんなことしない。だって別に財布の中を気にしなくても、全部買えるからな。


「やっぱ、界人さん落ち着いてて、大人の余裕感じられて素敵っす♡」

「そりゃどーも。まあ買い物楽しんでくれよ」

「はーい!」

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