勇者一行は、彼を捕捉する


 カイトが祖母の館で、朝食を取っている一方。

 

 若き勇者、ブレイバは相方とともに王都へ帰還し、とある場所へと向かっていた。


「ねー、ブレイバ。どこいくの?」


 魔法使いの少女カリスがリーダーに問いかける。


「ウォールナットさんのとこだ」

「げー……あたしあの女きらーい。尻とか胸とか無遠慮にさわってきて、おっさんかっつーの」


 はー、とため息をついた後に尋ねる。


「でもどうしてそのおっさんのもとへ?」

「先日、あの偉大なるお方からいただいたこのナイフ、あるだろう?」


 偉大なるお方とはカイトのことだ。

 彼はブレイバたちを新米冒険者と勘違いし、自分が作った魔道具(※ヒャッキンナイフその他)を与えたのである。


「このナイフはものすごい。古竜の外皮すら濡れた紙のごとく切れる……しかし、ナイフは少々使いにくくてな」

「なるほど。ブレイバの得意な武器は長剣だものね」


 そのとおり、とブレイバはうなずく。


「そこでこのナイフを加工し、剣に変えてもらおうって次第さ」


 そもそも、とカリスが言う。


「頼めばいいんじゃないの? 剣がほしいって」

「それができるなら苦労しないじゃないか……」


 あれ以降、魔道具のお礼がしたいので各地で調べているが、彼の名前も、居場所もわからないでいる。


「おれはあの人にすごい恩がある。また会いたいものなのだが……」


 ほどなくしてブレイバたちはマリク・ウォールナットの工房へと到着した。

 彼らがもとより使っていた武器は、マリクが作ったものである。


「ウォールナットさん! おひさしぶりです、ブレイバです!」

『おう、入りな!』


 入室の許可をもらったブレイバ一行は、マリクの工房へと入る。

 出てきたのは栗毛のドワーフ、マリク。


 世界最高の職人と誉れ高い女だ。


「ひっさしぶりじゃあねえか。おまえら、どうした?」

「実は……」


 ブレイバは事情を説明する。

 話を聞いてるうちに、マリクは首を傾げた。


「そんなすんげえナイフがあるのか? どれ、見せてみろ」


 マリクがブレイバからナイフを受け取ると……。


「な!? こ、これはぁああああ!?」


 マリクが驚愕する。それは……カイトから譲り受けたものと、全く同じナイフだったからだ。


「お、おまえらこれをどこで……いや、誰から!?」

「奈落の森でおれたちを助けてくれた人からです」


 この世界にある四大秘境の一つ、奈落の森。

 そこでブレイバたちが修業中に、カイトに出会ったのだ。


 そう、カイトの住んでいるあの森は、実はものすごい危険な場所で、ほとんど人が立らないような人外の魔境である。

 ……もっとも、住んでいる本人はまるで気づく様子はないのだが。


「ちょ、ちょっと待ってろ!」


 そう言ってマリクは、カイトからもらったナイフをもってあらわれる。

 勇者一行は、マリクが、あのお方(※カイト)からもらったものと、同じナイフをもって現れたからだ。


「う、ウォールナットさん! それ、どこで……! おれたち、そのナイフをくれた人に、あってお礼がしたいんです!!!!」

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