エルフの奴隷姫ゲット
森の中で出会った商人、クゥジョー。
彼から奴隷を買うことになった俺。
ビー玉と引き替えに、最高級奴隷をもらえることになったのだった……。
馬車はこの国の北東部にある、王都ニィガへと到着した。
ゲータ・ニィガ王国の王都らしい。
俺が異世界に来て、二つ目に訪れる街。
文明レベルは、まあ、中世ヨーロッパってとこだ。
建物は軒並み低い。まだ上に建物を作る技術がないのだろう。
でも、治安は良さそうだ。
結構人が居るのにどこでもケンカは起きていない。子供も女も普通に出歩いてるしな。
馬車は王都の中でも、ひときわ立派な建物の中へと入っていった。
ここがクゥジョーのギルド【
「さささ、お座りくださいぃ。今すぐ、うちで最高級の奴隷を連れて参りますので!」
「あ、ああ……」
俺は応接間のようなとこに通される。
デカい豪華な部屋には、これまた立派なソファがあった。
フェリのやつはフェンリルの姿で、ソファの隣に丸くなる。
てか、フェンリルが普通に入ってこれるんだな。
『楽しみだな、高級奴隷。どんな女だろうな』
「うーん、未だにちょっと億単位の奴隷もらうの、申し訳ないんだけど」
200円くらいのビー玉ごときで、凄い奴隷ゲットできるなんてな。やっぱり気が引ける。
『かか! いいではないか。もらっておけ。向こうがそれを欲してるのだから』
「うーん……ま、そうだな」
別に詐欺ってるわけじゃないし。
「お待たせしましたぁ、カイト様!」
お、クゥジョーが帰ってきた。
どれどれ、どんな女……。
「…………」
思わず、見とれてしまう。
いやまじで、びっくりするくらい、どえらい美人だ。
身長は高い。
長い金髪に、バランスの取れたプロポーション。
出るとこは出てて、それ以外には無駄な脂肪が一切無い。
そして……特徴的なのはその長い耳。
「エルフだ……」
そう、エルフ。ファンタジーものでお約束のそれ。
もうやばいくらい綺麗なエルフが、クゥジョーと一緒に入ってくる。
だがその手には手錠、そして首にはごつい首輪。
奴隷の首輪的なもんだろう。
だが……。
「なんで手錠?」
「いい女なのですがぁ、少々、問題がありましてねえ」
多少難があっても、この美しさなら無視できるな。
「彼女は【イージス】」
「イージス、ね」
俺は鑑定能力を使う。
■イージス=フォン=アネモスギーヴ
称号:王女、呪いの姫
スキル:魔剣技(極)、武芸全般、交渉、美貌(極)、騎乗
結構凄いスキル持ってるな。てか……。
「呪いの姫……?」
「! カイト様、今なんと……?」
「え、いや。なんか呪われてるのこいつ」
「なっ……!」
クゥジョーも、そしてイージスすらも驚いてるようだ。
「そ、そんな……カイト様。い、言いがかりは……いや、待て」
クゥジョーがブツブツとつぶやく。
その間にも、イージスは黙っていた。
「……カイト様。確かにこの女には、2つ問題があるのです」
「え、おいおい。問題ありの奴隷を億で売ってるの?」
「ただ、この美貌に、魔剣技という稀少なスキルを持ち、そしてなんと元王女! 性奴隷としては、十分かと」
まあたしかに呪われていようと、高貴なる血筋で、こんだけ綺麗なら欲しいって思うやつはいるだろう。
「でも呪われてるんじゃ……」
「ご安心ください。呪いはふたつ、【消音】と【消魔】です」
「しょうおん? しょうま?」
「声が出せなくなる呪いと、魔力が出せなくなる呪いです」
「へえ……そんなのが」
まあ確かにどっちも、性奴隷として売るのには問題ないか。
きっ……とイージスが俺をにらんでいる。
「裏を返せば、この二つ呪いがなければ、もっと高値で売れるということですぅ」
「あー……なるほど。呪いがあってこの値段なのな」
……ん?
あれでも……。
「なあ、この呪い、」
『主よ』
黙って聞いていたフェリが、初めて声を上げる。
『吾輩は腹が減った。さっさと帰ろう』
「え?」
『今すぐ、さあ早く』
「あ、ああ……」
どうしたいきなり?
わからんが、多分何かあったんだ。
「それでは手続きを行いますねぇ」
俺はクゥジョーから羊皮紙を渡された。
これは所有者の証明書のようなものらしい。
血を一滴垂らすと、契約が完了した。
「これでイージスはカイト様のものでございますぅ」
呪いはあれど、どえらいエルフ女をゲットした。
フェリがにやりと笑う。
『商人よ、これでもう主との取引はおわったな? 後から返せと、言ってこないな?』
「女神様に誓って、そんなことはしませぬ」
『よし、主よ。さっきやろうとしていた、
「なっ!? でぃ、
ばあさんの魔導書で、俺は各種魔法を習っている。
その中には、あらゆる呪いを解除する魔法、
「あ、あり得ません!
『ところが、いるのだよ。なあ主よ』
あ、ああ……と俺はうなずく。
イージスに向かって、俺は右手を差し出す。
きっ……! とイージスが俺をにらみつけてきた。
だがすぐに、がくん……と力が抜けたみたいにその場にうずくまる。
「ど、奴隷は主に逆らわぬように、魔法がかかっておりますぅ。意に沿わぬことをすれば首輪から電流が流れるのですぅ」
「な、なるほど……猛獣みたいだな……」
まあいいや。
俺が彼女に手を伸ばす。
だが向こうはにらみ返してきた。そしてまた電流。気の強い女だ。
「
右手のひらに魔法陣が浮かぶ。
ぱきん! という何かが壊れた音がした。
「貴様! わらわに何を……って、なっ!?」
「お、しゃべったな」
呪いが解けたようだ。
「な、な、なぁあああああああああああああああああああああああ!?」
クゥジョーが、腰を抜かすほど驚いていた。
「ほ、本物だ! 本物の、賢者さまだ! まさか、無詠唱で
そんな驚くほどか……?
するとフェリが、にやりと笑う。
『この女は主の物でよいのだよな? 呪いは解けたようだが……買い戻すなんてことはせぬよなぁ?』
あ、なるほど。
取引をする前に呪いを解いちゃったら、元の値段で取引しなきゃいけなかったわけか。
『呪い無しでこの美貌にスキル、10億……いいや、100億はくだらない。が、もうこいつは主が買った。そうだなぁ?』
「そ、それは……」
つ、つーかビー玉数個で、100億円レベルの美女を手に入れたわけか、俺。
なんてこったい。
まあ向こうからすれば、もうちょっともうかるとこだったのに、安く売ってしまったわけだ。
やがて……ふっ、とクゥジョーが笑う。
「もちろんでございます、賢者様。どうかそのイージスを、かわいがってあげてください」
『ほぅ、潔いではないか』
「賢者様とは、仲良くした方が良いと、商人の勘がささやいておりますのでぇ」
『賢明な判断だな』
とまあ、なにはともあれ、俺はエルフの元王女を奴隷として手に入れたのだった。
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