宝くじを当ててもいないのに150億稼ぐ男


 俺は世界扉を通って、現実へと帰還を果たした。


「ふぅ……面倒なことになった」


 まさか新人冒険者だと思った相手が、勇者だったとは。

 後ろからフェンリルのフェリが、世界扉をくぐって、現実に降り立つ。


『くく……面倒になったなぁ主よ。あれで世界中に、知られてしまったぞ。勇者より強い賢者が、異世界にいるとはなぁ』

「何でおまえは楽しそうなんだよ」

『主がほめられると、下僕である吾輩もうれしい』


 そういうもんかね……。

 しかし勇者に、そして周りの奴らに力を知られてしまった。


 スローライフのためには、何か対策を講じる必要があるな。

 まあ一番手っ取り早いのは、もう異世界に行かないこと……だが。


「そうなると、こっちの金を、楽して稼ぐ手段がなくなるのは痛手だな」


 異世界で適当に狩りをしたり、アイテムを見つけてきて、換金する。

 それだけで莫大な金が楽して手に入る。だから異世界に行かないって手はないのだ。


『で、主よ。先ほどの若者からもらった装備一式は、いったいいくらになるのか?』


 世界扉はばあさんの館の、土蔵の中に開かれてる。

 俺たちは土蔵を出て、本宅へと向かう。


「どうだろうな。まあでも、勇者の武具っていうんだから、けっこーするんじゃないの?」


 まあもっとも、それ売って良いのか問題ってのが発生するわけなんだが……。


「あ! 界人さんおかえりっすー!」


 軒先でスケッチブックに何かを描いていたのは、漫画家の南木曽なぎそなぎだ。

 なんだかひさしぶりに彼女と会う気がする。


 まあ異世界での日々がいろいろありすぎたからな。

 なぎはスケッチブックを放り出して、俺に抱きつく。


「長かったすね」

「まあいろいろあってな」

「ほほー! なにしてんたんすかー! おしえてほしっす!」


 俺は簡単に、向こうでの出来事を話した。


 ややあって、軒先に座る俺たち。


「はえー……すごいっすね。いろいろやらかして、さすが界人さんっす」

「それほめてるのか?」

「もちろんっす。んで、勇者君からカツアゲしたアイテムはおいくらで?」

「言い方よ」


 俺には等価交換っていうスキルがある。

 異世界で手に入れた素材や財宝を、現実のお金に還元するスキルだ。


 勇者からもらったのは、剣と鎧、そして盾だ。


「防具はどんぐらいか……」


 5,000,000,000円


「…………」


 半透明なステータスプレートの上に、表示された金額が、おかしかった。


「界人さん、どんなもんすか?」

「これ……」

「いちじゅーひゃく……え? ご、五十億円ぅうううううううう!?」


 宝くじで大当てしたのと、同じくらいの値段がついていた!

 しかもこれ、鎧だけの値段だ!


「剣も盾も同じ……値段」

「つ、つーことは……あの勇者くんの一式で、150億円!? す、す、すげえええっす!」


 いやすごいってレベル、遥かに超えてしまってるんだが……!?

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