物々交換
俺とフェンリルのフェリは、異世界を冒険するために、洋館を出立した。
途中モンスターに絡まれてる美女を助け、その後、俺は
『アインの村から近くて、一番大きな街は、【ヌウォーマ】の街だな』
「ヌウォーマ……ね。了解」
俺が飛ぼうとすると、フェリが俺のローブを咥えてきた。
『人里が近づいてきたら、飛ばない方が良い』
「そうなのか?」
『吾輩が一人で歩いてると危険なモンスターと勘違いする阿呆がいるからな。ぬしが一緒のほうが都合が良い』
「なるほど、テイムしたモンスターって思わせたいのな。了解」
俺とフェリはしばらく街道を歩いて行くと、やがて街を囲う外壁が見えてきた。
「あれか」
『うむ。検問を通過すれば中に入れる』
「は? ちょっと待て、検問なんてあるのか?」
『ああ。冒険者や商業など、ギルド登録していれば無条件でパスできるが、それらがない場合は入るのに金がかかるぞ』
「まじか……金なぁ」
等価交換スキルは、この世界の物を日本円に変えることができる。
だが、異世界の金にすることはできない。
現状、俺は異世界での金が1円(というか単位もわからん)も無い状態だ。
街へ行って金を稼ごうにも、街にそもそも入らないといけない。
「物々交換で入れてくれないかな」
『それは主の交渉次第だろうな』
ばあさんの家にあったモノを、アイテムボックスに、適当に突っ込んできたのだ。
こんなかの何かで、どうにか入れてもらいたい……
ヌウォーマの街へ到着。外壁に立っていた、鎧を着込んだおっちゃんが声をかけてきた。
「この街へ入るのか?」
「そうだ。目的は、まあ観光だ」
「そうか。ではライセンスを提出せよ。それか、通行料として【5000ゴールド】を払え」
心の中で鑑定スキルを使う。
・ゴールド:異世界ジンナーの通貨単位。
なるほど。どれくらいの価値なのかはやっぱりわからんな。
「すまん、ちょっと遠くからきたもんで、金の持ち合わせがないんだ」
「金がないものを通すわけにはいかん」
「じゃあ、これでどうよ?」
俺はばあさんの家にあった【ポーション】を、おっちゃんの手に渡す。
「これは……ポーションか。いや待て……まさかこれは!!!!」
ぎょっ、と目を剥いている。
フェリが俺に問うてくる。
『鑑定使わないのか?』
「使うまでもないだろ。家に、ものすんごいたくさんおいてあったし。ミネラルウォーター的ドリンクじゃね?」
おっちゃんがわなわな……と唇をふるわせている。
「やっぱこれじゃ足りないのか?」
「い、いいや!? いいや全然! これで足ります! はい!」
急に敬語?
まあ、別に良いけど。
「じゃ、入って良いな?」
「お、おおおまちくだされ! 今おつりを……」
なるほど、【ちょっと】払いすぎだったみたいだ。
「いや、残りは取っといてよ」
「なっ!? よ、よろしいのですか!?」
「ああ、チップだ。じゃあな」
「は、ははあー! ありがたき幸せぇえええええええええ!」
門番のおっさんがその場に膝をついて、深々と頭と手を地面につける。
え、そこまで……?
少し入って振り返っても、頭を下げて続けていた。
ちょっと引くわ。
『くくく、さすが我が主、やることのスケールが違うな』
「なんだそりゃ……てゆーか、あんま驚かれなかったなおまえ。フェンリルは伝説の神獣じゃなかったのか?」
『名前は有名でも実物を見た者はそう多くないのだよ。今はぬしがそばにいることで、ただの愛らしい大型犬だと思われてるのだろう』
なるほどね。確かに名前は知ってるけど実際似合ったことない人って現実には結構居るからな。
たとえば、超有名ラノベ【デジマス】の作者といえばカミマツ先生だけど、会ったことはない人は多いし。
道行く人たちはフェリの姿にぎょっとしているものの、俺を見てテイムモンスターだと思ったらしく、そのまま過ぎ去っていく。
「まずは、あれか。冒険者か商人の登録しとくか」
街に入るのに毎回通行料がかかるのだとめんどすぎるからな。
『だがいずれも登録には金がかかるぞ。また物々交換するのか?』
「いや、自力で稼ぐよ」
あんまばあさんのもの売るの、気が引けるからな。
『ほぅ、自力で、とは?』
俺たちは街を歩いて行き、とある場所を示す。
そこには露店がいくつもでていて、商売をしている。
『なるほど、露天商のまねごとをするのだな』
「そのとおり。日本の便利グッズを売ってな」
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