第11話「冷徹姫は素直になれない」
<前書き>
昨日はすみませんでした。
今日からいつも通り投稿していきます。
<本文>
風貌はまさに大人な天使様、いや女神様と言っても差し支えないほどに美しかった。
どこか幼い見た目だった氷波先輩が今ではもう、立派な先輩に見えてきて、正直俺が体を張って助けた女の子はどこに行ってしまったのだろうかと思えてくるほど。
白色のワンピースに、デニムのジャケット。そして手には小さめの手提げバッグ。頭には麦わら帽子に、靴は肌寒そうなサンダルを履いていて、まさに理想的な夏の女子的な姿だった。
まだまだ4月。少し肌寒い札幌では異質でそれも相まって周りの視線がすさまじかった。
しかし、そんな視線をまったく気にしていない当の本人は驚く俺をまじまじと見つめていた。
「—―どうして、謝るんですか。まだ時間ではないですよ?」
最初、しょっぱなから謝るという愚行中の愚行をやらかした俺に対して当然のように疑問をぶつける氷波先輩。
ここは軽く謝って引っ張るといいよと烏目さんに言われたことをもう忘れてしまっていた。
「あ、えっと。ま、待たせちゃったので……すみません。俺が言い出しっぺなのに」
「……別に時間じゃないのに謝る必要ないです。それに私が早く着いちゃっただけですし、10分前なら十分ですよ」
「な、ならよかったですけど……さっき待ちましたって言っていてちょっとドキッとしたっていいますか……」
頭をポリポリ掻きながら目を合わずに呟く情けない俺に対して、彼女は「はっ」と口に手を当てる。
「私、そんなこと言っていたんですか⁉ す、すみません……っ」
急に頭を下げてぺこぺことしだして、あまりの急な行動に驚いて肩に触れて静止させる。
「謝らないでください! ちょっとやったかなって思っちゃってて……と言うか、むしろ
俺が待たせたのは本当ですし……」
俺がそう言うと氷波先輩は少し頬を赤らめて言う。
「い、いえ。本当に癖でして……私、弟がいるんですけど。弟が本当に世話の焼ける子でして」
「いやほんと、大丈夫なのでお気になさらず……え、弟居らっしゃるんですか?」
と、一瞬口走った言葉に少し目がいった。いや、目というよりも口だろうか。
ってそんなことよりも弟がいるのか、この人って。
「えっと……聞いてなかったですか?」
「ま、まぁ。むしろ一人っ子なのかと……」
ぼそっと呟くとさっきまではペコペコしていた彼女がいつも通りの瞳に戻った。
というよりもどっちかと言うとジト目で俺を睨みつける。
流石の鋭さに背中にビクッと電流が流れた。
「あの……念のため聞きますけど、それは悪い意味ですか?」
こ、怖い。
いつもの冷たい目だ。冷徹姫の目だ。
あぁ、これは確かにやっぱり近寄りがたいよな。俺がたまたま近寄れてるだけだな。絶対に、この人は怒らせちゃいけない人だ。
「いやいや! 別にそういう意味は全くないです! ただその、いっつも冷静でいるっていうか静かに見えたのでてっきり……」
「そうなんですね。てっきり、あっちの意味で言っているのかと」
「あははは……」
弟を見てお世話するのが出来なさそう……なんて言えるわけない。
ごめんなさい、氷波先輩。俺は最低な男です。
「でも、よく言われます。一人っ子ですか?って。どうしてなんですかね……個人的には結構弟思いですよ?」
「いやぁ……まぁ、ちょっと近寄りがたいっていうのがあるからなのではないかと」
「近寄りがたい」
その一言に引っかかって、ぴたりと表情が固まった。
「……藤宮君」
「はい?」
「聞いてもいいですか?」
「い、いいですけど」
「私って……関わりにくい雰囲気、出てるんですか?」
純粋な目を俺に向けて、少し心配そうに尋ねてくる氷波先輩。
答えはもちろんのこと「YES」だが、正直どういう風に答えればいいか分からなかった。
「……ま、まぁ」
「ありますか?」
「い、一応……どちらかと言えばそうですかね」
「……ですよね。私、なんか人前でどうしていればよく分からなくてなんかそっけなく接してしまって。どこがダメなんでしょうか」
「く、表情から感情が読めないというか。いつも目が座っているところとかですかね。先輩の存在を知らなかった俺からしても、そう思いましたし」
「……ちょっと、ショックですね」
実は話したいと思っているのに、あんな態度をしてしまう。
気持ちは俺も大いにわかる。
ちょっと親近感がわいて、前のめりになった。
「昔からそうだったんですか?」
「素直になれないっていうか、あんまり自然に笑えなくて。ずっとこうですね」
「……直すのは難しそうですね」
「治したいです」
俯き本音がポロっと出たのに気付いてハッとして口を閉じると、俺の肩をたたいてこう言った。
「って、今日は私の相談をしに来たんじゃありません! あぁ、もう、私は何を……」
今更……。
別に俺はこのままでもいいんだけどなぁと思うも、その純粋な言葉に邪推はできなかった。
「それで、どこに行きましょうか?」
「うーん」
ふと思う。
何か、俺は勘違いしたのかもしれないと。
何か着飾って、遊ぶよりも行きたいところを一緒に行って遊んだほうがいいのではないかと。そう思った。
子供のころからそうだとすればきっと何か原因があるだろうけど、それは俺が突っ込める話ではない。
だったら、今だけは多少なりでも楽しんでもらいたい。
「先輩、ゲームセンターって行ったことありますか?」
「げーむせんたー? 名前は聞いたことありますけど……」
「やっぱり。何も知らないんですね」
「馬鹿にしてますか?」
「いえ、別に」
意地悪に笑みを浮かべると氷波先輩は顔をむすっと
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