第14話 これは甘い空気の予感……
ひかりに選んでもらった服装に着替え、うっきうきでデートを再開する。
次に来たのは、
「まじでなんでもあるのな」
「逆に無いものを探す方が難しいわよ」
定番と言えば定番、あるとは思わなかった映画館。
古いものから最新のものまで、ラインナップも素晴らしい。
さらには、
「おいおい、しかも表では公開前のものもあるじゃねえか」
「そうね、そんなこともあるわ」
「いや、ないだろ」
二週間後に公開のものなども入っていた。
これが国家の裏権力か、中々やるな。
ここ経由のネタバレをしようものなら、もちろん消されるだろうけど。
「何観る?」
「そうだなあ」
結局観たのはコメディが多めのラブコメ。
陰キャが、青春っぽい甘酸っぱいものを求めた結果だ。
手を繋ぐ勇気は……なかった。
というか、付き合う前で繋ぐ方がないか。
そうして、大体おやつの時間帯。
ポップコーンも食べたことだし、映画を見た後はお昼を挟まずに外の開けたベンチで少し語り合う。
気持ち良い程度の暖かな風が吹き、上から見下ろすような裏商店街もとても眺めが良い。
「面白かったわね!」
「いやー、笑った笑った」
付き合っていない男女が恋愛系を見るのは賛否両論あるそうだけど、今回のはコメディ色が強くてとても楽しめた。
ひかりも満足そうで嬉しい。
「たくさん歩いたし、ちょっとのんびりしよっか」
「そうだな」
ひかりはそれこそ無限に歩けるだろうけど、俺を気遣ってくれてるのかな。
でも、こうしてのんびりするのも悪くない。
デートとは言っても、何も急ぐことはないと思うんだ。
「なんだか眠くなってきそう」
「ここ、気持ち良すぎるよな」
「そうね」
デートは最高に楽しい。
だけど、こんな昼寝をしなければ損という程の気候は、うとうとと眠気を誘う。
主にひかりの。
「……ちょっと借りる」
「!?」
そんなひかりが、突然俺の肩に頭を乗せてる。
当然俺は眠気も吹っ飛び、肩に全神経が
おいおいこれ、本当にあのひかりだよな?
おねむで思考能力が低下してるのか?
しかし、さらに異変は続く。
「……ねえ、聞いて良い?」
「は、はいっ! なんでもどうぞ!」
目をそっと閉じながら俺の肩に寄りかかるひかりから、突然の質問。
一体、どんなのが飛んでくるって言うんだ。
「賢人は好きな人とか……いないの?」
「!?!?」
ひ、ひかりさんっ!?
それってどういう心境で聞いてるんですか!?
「……すぅ、すぅ」
「あ」
と思えば、ひかりの意識はどこかへいったよう。
やっぱり思考能力が低下していたか。
だよな、女の子がそんな質問をするときっていうのは大体……
「……」
いや、さすがにないよなあ。
なんたって相手は学園のアイドルだぞ。
いくら幼馴染だからって……うん、期待し過ぎだ。
「……もう」
「?」
ひかりが何か言ったような気がしたけど、特に気にしなかった。
そんな楽しかったデートも、その後に早めの夕食をとったところで終わりの時間が来てしまう。
今までほとんど感じた事なかったけど、楽しい時間は早いというのは本当の話だったんだな。
気がつけば一緒に帰り、ひかりの家の前まで来ていた。
「今日はありがとうね」
「ううん、こちらこそ」
本当に楽しい時間だった。
ちなみにエージェント関連の事は一切していないが、俺にはどうでもよかった。
一日、ひかりと二人っきりで過ごした。
人生でも一・二番目の出来事だったと思う。
「じゃあまた誘うね。今度こそエージェントの所も紹介するわ!」
「楽しみにしてるよ!」
と言いつつ、エージェントの事なんてなくても良いから誘ってきてくれ、と心の中では切に願う。
「じゃ、また明日学校で」
「うん、また」
ひかりが家に入っていくのを確認して、俺も帰ることにする。
「はあ~……」
楽しかった、また明日からも頑張れそうだ。
多くは望まない、けど学校でもまたひかりと話せたら良いな。
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