第6話
「最近わかったことがある」
「ん?」
昼休み
私はいつも通り勇とご飯を食べていた。
「お前はゴミだ」
「凄い暴言だね」
「お前は女に興味がない(ホモだ)から意識してないと思うが、勇の何かしらのフェロモンか顔かで女の子達が集まってきちまう」
「それをゴミと称された僕はこの世の理不尽の集大成を見たよ」
「だから天才な私はあることに気付いた」
立ち上がり、椅子に片足を乗せ、人差し指を伸ばし堂々と宣言する。
「会ったらとりあえず勇の名前を出せばその子が勇に惚れてるかどうかが分かるって寸法だ!!」
「食事中だし周りの目もあるからちゃんと座ろうね」
周りの目線が突き刺さる。
「勇に命令されました」
「ちょっと!!」
すると男女の真反対な反応が返ってくる。
女の子からは
「やっぱりシア様と勇さんは仲良いよね」
「お似合いの二人っていうか」
「私もシア様相手なら諦めきれるよ」
男からは
「死ね勇」
「イケメンだからって調子乗りやがって」
「潰すぞ(シア)」
そんな反応を聞いて勇は一言
「泣きそう」
そう言っていた。
◇◆◇◆
ここで作戦を立てたのはいいが、大きな問題が一つあった
「あの勇ーー」
「やっぱり」
「勇ーー」
「諦めます」
「ゆーー」
「さよなら、私の初恋」
「yーー」
「ウホーーーーーー(そんなぁ)」
勇の名前を出せば百人中百五人くらいが泣いて去っていく。
「アイツモテすぎんだろ」
最早この学校で奴の毒牙にかかっていない生徒はいないのかもしれない。
「あ、諦めるな私、希望はあるかもしれない!!」
結局学校が終わるまで声をかけたが、誰一人として逃げ出さない人はいなかった。
「次で最後にするか」
廊下を歩いていると、肩がぶつかる。
「あ、すみません」
「こちらこ……そ……」
そこには綺麗な赤髪のツインテ美少女。
「な」
「な?」
「シアァアアアアアアアアアアアアアア」
赤髪の少女は大声で叫んだ。
◇◆◇◆
なんともビックリ。
この少女に勇のことを聞くと
「勇?誰それ知らないわよ」
そう返したのだ。
これはチャンスとばかりに声をかけるのだが
「私あなたのこと嫌いなの」
そう初対面で言われてしまった。
何故だろう。
私何かしちゃったかな?
「何その心当たりがないみたいな顔」
「読心術!!」
「分かりやすくのよ!!あんたは!!」
なんと!!私はわかりやすいのか(構文)!!
「みんなにチヤホヤされて気に食わないわ。顔がいいからって運動も勉強も出来ない、王族のくせに魔法も使えないし、なのに、なのに」
赤髪の少女怒りのためかプルプル震える。
「男子が誰も私に
最後が本命な気がした。
「私は自信があった。この世界で一番可愛いと。小さな頃からそうやってみんなにチヤホヤされてきた。でも突然変わった」
悔しそうに
「あなたが表舞台に立ってから全てが一変した。私の可愛さは変わってないのに、皆は口々に」
世界で二番目に可愛い
「そう言い始めた」
そしてどこか諦めたように力を抜く。
「遠くからみても、そしてこうやって近くで見てもそう。認めざるを得ないほどあんたは綺麗」
「ありがとうございます?」
「素直に認めなさいよ」
最初は強気な姿勢だったので腰がひけたが、もしかしてこの子はプライドが高いだけで優しい子なのかもしれない。
「今の私じゃ勝てない、でも」
それは私の宣言とは違い、下克上のようなものだが
「あんたより絶対可愛いって言われてやる!!」
何倍にもキラキラして見えた。
「可愛い」
口から零れる。
「あなたのお名前を教えて下さい」
「ミア」
綺麗な髪をたなびかせ
「ミア スカーレット」
堂々と
「あなたを倒すものよ」
◇◆◇◆
「えへへ、ミアちゃんは可愛いですね」
「フフン、当然よ」
速攻で私はパフェに誘った。
ミアは身長が低いため子供っぽく見えたが、中身も幼く感じた。
実際に今ほっぺにクリームがついているのに気付いていない。
「は!!」
ここで伝説のシーンが頭に浮かぶ。
デートで彼女のほっぺにクリームなんて
私は指先で彼女の頬に触れ
「お口、付いてますよ」
そっと拭き取る。
「あ、ありがとう」
照れたのか、少し顔が赤くなる。
「ま、まぁ今回は許すけど、次は言うだけにしてよね!!」
「はい〜」
完全に私はこの子にメロメロだ。
普段なら私と話すだけでも皆が萎縮するが、彼女は私に対しても目線を合わせて喋ってくれる。
それに顔も性格も可愛いなんて最強じゃん。
「次はどこ行きます?」
「あんたは運動苦手でしょ?なら映画とかでいいでしょ」
こうやって自然に優しくもしてくれる。
「付き合いたい」
そうまでしなくてもせめて友達になりたい。
心を燃やす。
行くぞ私、ここで好感度を爆盛りするんだ。
◇◆◇◆
映画館では二つの映画があった。
左には純愛系、右には百合系
「左ね」
「右ですね」
まさかこんなところで方向性の違いが出るなんて
「普通左じゃない?」
「いえいえ、右の方がいいですよ」
「えぇ〜」
困惑した顔をするミア。
「男が出ても可愛さは学べませんよ?」
「映画で学ぶのはおかしな話だけど、確かに右の方が分かりそうではある」
バカみたいな理論だが、可愛いに持っていけばいける気がした。
「でもよく言うじゃない。恋は人を綺麗にするって」
「ええ。なればこそ右では?」
「そ、そう?」
そんな感じで強引にだが、百合系の映画の入っていった。
◇◆◇◆
「すみません、涙が」
「私も、まさか二人が最後に」
まさか悲愛系とは思っておらず、完全に二人とも面食らってしまう。
「でも面白かったわ。あんたに従って正解だったわね」
「そう言ってくれると嬉しいです」
そうしている内に暗い時間となってしまった。
「そろそろ帰りの時間ですね」
「まぁ王女様だしね」
沈黙が走る。
「な、なんていうか、最初は気に入らないって思ってたけど、今日一日あなたの過ごしてみたけど意外と楽しかったわ」
「わぁ!!私もです」
「……だけど逆に、一生勝てない気もしてきた」
俯く。
「だけど、うん、楽しかった」
明るい笑顔に戻り
「ありがとう、シア」
風が吹いた気がした。
もうこれはきたのではないか
「告ろう」
もう自分の思いに嘘はつけない。
ここでしなければ後悔する。
「ミアさーー」
「ちょっといいかな?」
突然話しかけられる。
そこにはゴツい男が何人もいた。
「え、ええと?どなたでしょうか?」
「おいおい、本物じゃねぇか。護衛もなしにお姫様がこんな場所歩いてていいのかよ」
周りを見渡すと、いつの間にか人の姿はなくなっていた。
男はドンドン近付いてくる。
そして私に手をかけようとした瞬間
「触らないで!!」
弾かれる。
「あんた達みたいな薄汚い奴が気軽に触れていいわけないでしょ!!」
ミアだ。
「この子は私より可愛いの。それは誇ることであり、大事にされるもの。そんなことも分からないくせに彼女に触らないで」
あくまで強気な姿勢だが、震えている。
怖くて仕方ないはずなのに。
「あぁん?コイツの価値なんて死ぬほど分かってるさ。ただの一国の王女に非ず。その美貌、この世の全てを合わせてもお釣りがでちまうだろうなぁ」
男がペロリと舌舐めずりする。
「だがまぁ、目的とは違ったがお前も中々いい女じゃねぇか」
「っ!!」
ミアの震えが増す。
「メインディッシュの前に一回頂くか」
大勢の男達が一斉に飛びかかってくる。
「助けて」
「大丈夫」
安心させるためにミアを抱きしめる。
「でもシアは魔法が」
「大丈夫ですから」
一言
「勇」
そう呟くと、天から光が差す。
音を置き去りにし
「呼ぶの遅いよ」
勇は現れた。
「王女に護衛がいないなんて不自然と思わないのかな?」
着地だけで気絶した誘拐犯に、勇は馬鹿を見る目でため息吐く。
「もう少しミアさんとの時間を大切にしたかったんです!!」
「それで怖い思いをさせるのは本末転倒だと思うよ?」
「ミアさん、もう安心ですよ(無視)」
返事は返ってこない。
だけど異変に気付く。
「ミアさん?」
ミアは勇の姿を見て一言
「カッコいい」
「「え?」」
まるで、というか完全に恋する乙女になったミアは恥ずかしそうに勇の近くに歩き
「あ、あの、初めまして。私の名前はミアっていいます」
「そ、そうなんだ」
さすがの勇もビックリである。
「よ、よければ連絡先とか交換しませんか?」
「え?う、うん。もちろんいいけど」
「やったぁ」
小さくガッツポーズする姿は非常に可愛らしいが、それどころじゃない。
「あ、あの!!今日は助けて下さりありがとうございます!!また後日お礼をさせてもらいますね!!も、もちろん二人きりで……それじゃ!!」
足速に去っていく。
「……」
「……」
「お前マジでふざけんなよ」
「理不尽だよ」
そしてミアは最後にもう一度振り返り
「シアもありがとね」
私は勇を思いっきり殴った。
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