第25話
「まずは、シア様への質問コーナーから入りたいと思います」
「へー」
思ったよりちゃんとしてるな。
「最初のお便りです。シア様、この度はシア様のイベントが決まったと聞き、いても経ってもおられずメールを送った次第にございます」
「ありがとうございます」
「さて、そんな私からの質問です」
「あ、女の子か」
「シア様?」
「いいえ、続けて下さい」
「えーっと、シア様の好きな食べ物は何でしょうか」
「えーと」
思ったよりしょうもない質問だな。
と思ったが
「こ、これは」
進行係は唸る。
「よ、よろしいのですか?」
「え?何がですか?」
「シ、シア様の好きなものをお聞きしても」
「もちろん構いませんよ?」
会場が一気にざわつく。
何?
私の好きな物って何かの呪物か何か?
「それでは……お願いします」
「えっと」
何か緊張するな。
「私はハンバーグが好きですね。特にシルヴィアお姉様が作ったものですね」
「ハ、ハンバーグ!!」
待って、ハンバーグダメなの?
「こ、これは時代が動きますよ」
何も動かんだろ。
「おっと、只今速報が上がりました。国中のハンバーグ店の株価が一気に上昇しました」
「ふぇ?」
「加えてトレンドにハンバーグ。これは経済が加速しますよ」
「何故!!」
わ、分からない。
私の発言一つで本当に世界が変わるなんて。
そして後に、この国はハンバーグの名産となるのはまた別の話である。
「さて、続いての質問です」
「怖くなってきた」
「僕は何度も貴方様を見かける度に、この胸が張り裂けそうな思いになります……分かる」
「あの……」
「申し訳ありません、私情が入りました。そして僕は思うのです。この胸の痛みは、きっと期待してしまっている自分がいるからだと。そこで、シア様の好きなタイプについて教えて下さい」
「これは……」
なんとも反応に困るな。
「この者を直ちに捕えよ」
「え、どうしたんですか?」
「シア様の好みを聞くなどあまりに不敬。処罰の対象ですので」
「そんなの聞いたことありませんよ!!」
「シア様、これが皆の意見です」
突然後ろの大きな画面に映像が映る。
そこには
『この質問者を死刑にすべきか』
はい 99%
いいえ 0%
シャルが殺す 1%
「あの、私の可愛い妹の名前は入ってるんですが」
「王家の方々の場合は、特別な選択と票数を兼ね備えていますので」
「VIP待遇ですね」
「皆様には国民全てが感謝していますから」
いい話だなぁ
「とりあえず処罰は無しで」
「かしこまりました」
「好みの対象ですか」
考える
「そうですね。無難な解答となりますが、やはり優しい人でないと私は嫌ですね。私はこれまでの人生で多くの方に支えていただきました。私にわかるように助けてくれる方もいれば、裏からコッソリ見守ってくれている方もいます」
私は家族の姿を思い浮かべる。
「そう考えると、私にとって皆様こそが、大切で大好きなタイプかもしれません。ふふ、少しあざとすぎましたかね?」
「……」
「あれ?」
進行係の人が口から血を吐いていた。
「さ、さすがシア様。そのご配慮、大変染み渡ります」
「あ、ありがとうございます」
会場を見れば、倒れそうな人を同じくふらつきながら支える人々。
最早ここは戦場か何かである。
「と、とりあえず最初の質問はこれで最後です」
「どうぞ」
「シアに質問です」
「ん?」
シア呼び?
「噂であなたは女の子が好きと聞きましたが、それは真実でしょうか?」
「んん?」
なーんか
「意図したものを感じる」
「それではシア様、お答え下さい」
進行係もまるで知ってたように話を進める。
だがこれはチャンスだ。
私は自身の恋愛観に対し
「躊躇う気持ちなんてない」
立ち上がり、宣言する。
「はい、私シアは」
息を吸い
「可愛い女の子が大好きです!!」
波乱の幕開けであった。
◇◆◇◆
「あれって恋愛って意味?」
「違うでしょ、どう考えても友達とかに言うあれじゃん」
「でももし違ったら、私がシア様と付き合えるってこと?」
「邪推なんて恐れ多いよ!!」
どうやら言葉足らずだった結果、様々な解釈が生まれてしまっているようだ。
だけどここで
『もちろん恋愛対象って意味でーす』
なんて言える度胸もなく、ただニコニコと席に座り続ける。
「さて、続いてのコーナーは」
背後の画面からドラムロールが鳴る。
「こちら!!」
音が止まり
「シア様と遊ぼうのコーナー」
「わー」
どゆこと?
「こちらはランダムで抽選を勝ち取った人が、一度だけシア様と好きな遊びができるというものです」
「そのままですね」
「というわけで最初はこの人」
誰だろ
ちょっと緊張するな。
「は、初めまして」
相手は中学生くらいの女の子。
「こんにちは」
「こ、こんにちは!!」
ペコリと頭を下げる。
可愛い
「えっと、私はゲームが好きなので、シア様と一戦だけこれを」
「これは!!」
いわゆるスマッシュだ。
「私これ大好きなんですよ」
「ほ、本当ですか!!」
「ええ。私は少々手強いですよ?」
「なら私も全力でいきます」
「もちろん、手を抜いたら怒りますからね」
それぞれがキャラを選び、ゲームが始まる。
「元々私に接待プレーするつもりだったんですか?」
「……すみません」
「謝ることではありません」
実力的には私が少し上のようだ。
「確かに私は王族ですが、一人の女であり、一人の人間です」
「シア様」
「確かに私は普通じゃないですが、手を抜かれると嫌がるような人間臭い場所もあります」
「シア様が……」
ギリギリの戦いで私は勝利を収める。
「こうして白熱した方が楽しいですね」
「あ」
女の子もつい夢中になり、途中から二人とも無言になっていた。
「あの、シア様」
「はい」
「凄く、楽しかったです」
「私もです」
私は彼女の手を握る。
「また遊びたいですね」
「え、あ、え?あ、そ、そう、ででですね」
女の子が壊れる。
「シア様!!」
「え、はい、何でしょう!!」
「触れるのは禁止です」
「そ、そうなんですか!!」
「死人がでますので」
「死人が!!」
怖
よく分からないけど
「離しておきますね」
「は、はひ」
女の子は顔を真っ赤にしながら
『この手二度と洗わない』
と言っていたが、普通に洗って欲しい。
「さて、続いての奇跡の申し子は」
「おお」
テクテクと歩いてくる
「積み木で遊んで!!」
小さな小さな男の子。
「可愛い〜」
私は女の子が好きだが、子供も大好きである。
「何歳なの?」
「僕はね、えっと、えっと」
指で一生懸命数える
「4歳!!」
「4歳か〜」
すげー
ただの年齢の話だけでメチャクチャ楽しい。
「それじゃあお姉ちゃんと遊ぼっか」
「うん!!」
そうしてただただ子供と積み木で遊んだ。
特に語ることもないが、とりあえず楽しかった。
「お姉ちゃんありがとう!!」
元気のいい返事。
「さすがにこんな小さい子は大丈夫でしょ」
私は男の子の頭を撫で
「ちゃんとお母さんとお父さんの言うこと聞くんだよ?また、遊ぼうね」
私は軽くホッペにキスをする。
「シア様!!!!」
「え!!はい!!」
「ダメです」
「けどこの子はまだ小さいーー」
「ダメなんです!!!!」
「す、すみません」
後にこの少年は王女のお姉さん以外に全く興味を示さなくたったという。
つまり簡単に言えば性癖が歪んだ。
「次で最後です」
そして現れたのは
「わぁ」
太い男。
メチャクチャ汗が凄い。
「な、なんという美しさ。さすが僕の嫁」
「あなたの嫁になった記憶はないですけどー」
うわぁ、厄介だなぁ
「そ、それで?本日はどんなゲームを」
「ぼ、僕とシア様がやるゲームはツイスーー」
「へ?」
そして男は王国騎士が現れ、一瞬で視界から消える。
「え?え?」
「シア様と遊ぼうはこれにて終了です!!それでは一度シア様の休憩が入るため、しばらく自由に過ごして下さい」
そうしてとりあえず私のイベントは一区切りつくのであった。
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