TS転生〜女の子を攻略しようとしたら親友の主人公にNTRされる〜

@NEET0Tk

第1話

「は?」


 鏡に映っているのはこの世のものとは思えないほどの美貌。


 きめ細かすぎる金色の髪。


「誰だこれ?」


 そして気付く。


「これ俺じゃん」


 そんなわけで転生を果たした俺こと私、シアの物語の始まりである!!!!!!!!






「わーん遅刻遅刻」


 初めまして、私の名前はシア。


 ピチピチの17歳JKの未成年だよ♡


「きゃっ」


 曲がり角で誰かとぶつかる


「アイタタ」

「だ、大丈夫?」


 甘いマスクのイケメンが私を起こそうと手をーー


「触んなカス」

「えぇ」


 払い除ける。


「どういうことだ?曲がり角で可愛い女の子とぶつかれるはずじゃなかったのか?」

「い、一応僕はその可愛い女の子とぶつかれたんだけどね(小声)」


 なんかブツブツ言っててキモいなコイツ。


「んじゃまたな、いい女がいたら紹介してくれや」

「あの!!せめて連絡先だけでも!!」




 学校




「てなことがあってさ、イケメンってのは行動もイケメンなのがキモいところだよな」

「まさかその人もぶつかっただけで暴言を吐かれるとは思ってなかっただろうね」


 親友の勇が同情気味に苦笑いをする。


「ところで向こうから見てる女の子って誰だろ?私に気があるのかな?」

「ああ、彼女は今朝遅刻しそうだった女の子だよ。僕が自転車で運んだんだけど、もしかしてお礼か何かかな?」


 気にしないでいいのにと呟きながら彼女の元に向かう。


「どうしたの?」

「あ、あの……これ!!」


 女の子が勇にお菓子を手渡す。


「今朝はありがとうございます」

「ううん、気にしなくていいよ」

「あの、それと出来れば連絡先ーー」

「近くで見ると本当に可愛い……あ!!初めまして、私の名前はシアっていいます。よかったら私と連絡先交換してくれませんか?」


 女の子は驚いた顔をした後、私と勇の顔を交互に見、どこか絶望した表現になる。


「す、すみません。私これから用事がありまして」

「そうですか?それじゃあ連絡先だけでもーー」

「失礼します」


 全力で去っていく。


「どうしていつもお前ばかりモテるんだ」

「シアもモテてるじゃん」


 勇が顎で証拠とばかりに後ろを指す。


 周りを見れば


「鬱陶しい」


 男の目線が突き刺さる。


「全く、綺麗な顔が台無しだよ」


 勇が私のほっぺを突く。


「お前こそ顔が真っ赤だぞ。慣れないことはすんな」

「……」


 勇は何故か知らんがモテるのに、女と付き合わない。


 だからイケメンだけどあまり自分からカッコつけることをしない(自然とはカッコつける)。


「ほら、それより朝会だ、行くぞ」

「そうだね」


 ◇◆◇◆


 校長先生の長ったらしい話がお経のように私を眠りへといざなう。


「校長がボスだとしたらラ◯ホー使うのはズルだろ」

「ちゃんとしてれば必中じゃないんだから、シャキッとしてないシアが悪い」

「女の子の相手以外でシャキッとする必要なんてありませーん」

「全く」


 朝会のため、バレないように小さいリアクションで勇を煽る。


「はぁ、勇はいいなー、私は彼女どころか女友達すら出来ないのに」

「ハハ、そりゃあそうでしょ」


 勇がわざとらしくお辞儀する。


「なんたってシアは王女様なんだから」

『生徒代表、シア王女のご挨拶です』


 放送が体育館に響く。


「はぁ」


 めんどくせぇ〜


 何でわざわざ私にさせんだよ


 王女ならもっと気遣えや


「はぁ」


 しょうがない、気合い入れるか。


 席を立ち、一応王族としての振る舞いに気をつけながら歩く。


「うお!!」

「すげぇ」

「きれー」

「美しい」


 そのあまりにも美しい光景に女子生徒からは感嘆の声が漏れ、男子生徒の心はすべからず奪われる。


「おはようございます。本日はお日柄も良くーー」


 全員の体がたちまち震え上がる。


 まるで天使の子守唄のような美しい声。


 その素晴らしい音色に皆が聞き入り、それを堪能するかのように目を閉じる。


 それは先生を含め皆が共通すること、そう思われた。


 だが一人例外がいた


(は?何でこいつら私が喋ってるのに寝てんだよ。そんなに私の話がつまんないか?あ?)


 当の本人であった


(確かに私も公共の場だから恥をかかないような文章にしたが、やろうと思えば面白いこと言えるんだぜ?)


 謎の意地が出てきたシアは


「それでは最後に」


 息を吸う


「このような大勢の場で言うのもお恥ずかしい話なのですが」


 ニヤリと笑い


「恋人募集中でーす」


 とんでもないジョーク(爆弾)を投下した。


 ◇◆◇◆


「シア!!!!あれってどういう!!!!」

「ふっふっふ奴らの驚いた顔、実に滑稽でありけり」

「はぁ……そういうことか。全く、成績悪いのに無理に古語を使わなくていいんだよ?」

「ウルセェ(こちとら人生二周目だぞ)!!」


 俺の発言が冗談だと気付いた勇は、落ち着きを取り戻す。


「まぁ実際私は恋人募集中だ。もちろん相手は女の子だけどね!!」

「シアは変わらないなぁ」


 諦めるように勇が首を振る。


「でもあの発言は男子をかなり勘違いさせちゃったんじゃない?」

「ん?別に男のことなんてどうでもいいだろ。私に手を出したら速攻死刑だ。大丈夫大丈夫」

「はぁ、シアはもう少し自分の容姿に頓着を持つべきだね」


 私が可愛いのは事実だが、自分に対してはなんらかのバイアスか何かか、そこまで何も感情を抱けないんだよなぁ。


「ん?」


 気付く。


 周りの男どもが妙に色気だっている。


 周りから筋肉が凄いと言われてる奴は無駄に筋肉をピクピクさせ、クラス一のイケメンとか言われてる奴は一生変わらない前髪を弄っている。


 「これは」


 前世が男とはいえ、今は女の体。


 その光景に私は


「キッショ」

「辛辣過ぎるよ」


 男のアピールほどむさ苦しいものはないだろ。


「失敗だったな。一時の感情でするにはあまりにも私の気分を害す」

「そうしてくれると僕も諦めないで済むから、努力して欲しいな?」


 諦めない?


 瞬間


 私の脳裏に電流が走る。


 どうして勇は彼女を作らない


 私ではなくイケメンのことを心配していた


 そして私が男にモテて焦った様子


「まさか!!」


 ホモ……なのか?


 勇と目を合わせると、目を逸らす。


「やはり!!」


 超絶美少女である私から目を逸らせる男などいない。


 つまり、私に一切の興味がないことになる。


 点と点が粒子鉄線で繋がった。


 私は勇の肩を叩く。


「安心しろ、私はそういうのは受け入れられる人間だ」

「え?どうせまた変なことを勝手に考えてるんだろうけど、ありがとう?」


 やっぱり私達の友情は永遠だな。


「よっしゃ!!行くぞ勇!!今日は宴を祝して合コンじゃ!!」

「前回それで大失敗したばっかりじゃん」


 すると廊下から声が聞こえてくる。


「悪い、俺たち別れよ」

「どうして!!私たちが付き合ったのって一週間前だよ!!私何か悪いことしたの」


 涙目になる女の子。


 それよりなんでコイツら廊下で別れ話なんて切り出してんだよ。


「やっぱり俺、自分の気持ちに嘘つけねぇ」

「……やっぱりシア様なの?」

「ああ、悪いな。今朝のシア様の言葉に、消えかけた気持ちにもう一度火がついちまった」

「……そっか」


 女の子の瞳から一粒の雫が頬を通る。


「えぇ」


 何これ?原因私?


 軽めのジョークのつもりだったんだが、まさかここまで影響するなんて


 なんて


「なんてラッキーなんだ」


 二人の間に入る。


「「シア様!!」」

「お二人の話は聞きました」


 華麗に登場する私。


「それじゃあ話は既に……」

「ええ」


 むしろ聞くなという方が無理な場面だがな。


 すると男は大振りに頭を下げ


「初めて見た時から好きでした。付き合って下さい」


 告白してくる。


「ごめんなさい」


 当然の拒否


「……やっぱりダメか」


 何だか勝手に一人で黄昏てる男を無視し、私は可愛い女の子の方に振り向く。


 これはどう考えても別れたため、私がこの子をもらっても文句は言われないだろう。


「綺麗。これじゃあ私が勝てないのも当たり前か」

「そんなことありませんよ」


 女の子の涙を拭き取る。


「あなたもとても素敵な女の子。ただ彼の見る目がゴキブリとダイヤモンドを見分けられなかっただけです」

「その理論だと私がゴキブリになってしまうのですが」

「じゃあダイヤモンドと指輪についてるダイヤモンドを見分けられないようなもの」

「多分それは誰も見分けられません」

「まぁそんなのどうでもいいんです」


 抱きしめる。


「自信を持って下さい。あなたはとっても可愛い」

「シア様ぁ」


 女の子の目が蕩ける。


 よし!!これなら


「ですので私とーー」

「その通りだよ」


 勇が登場する。


「君と会うのは初めてだけど、急にこんな話をされても優しく彼を包み込んでいた。君みたいな優しくて可愛い女の子なんて中々いないんだ。君はもっと自信を持つべきだよ」


 女の子の顔がバァっと赤くなる。


「あ、あの、突然ですけどお名前をお聞きしてもいいですか?」

「え?私の名前はーー」

「僕の名前は勇だよ」

「あ、あの勇さん。よかったら今日放課後、一緒に帰りませんか?」


 ……


 勇


 私はお前を親友だと思ってたんだが、どうやら間違いだったようだ。


 どうやって奴を細切れにするか考えてると


「ごめん、今日はシアに誘われてるんだ」

「あっ……そうなんですか。そういうことなんだ」


 女の子は悲しそうに、でも何かが吹っ切れたように去っていった。


「勇、私との友情を取ったことで親友枠には入れてやるが、よかったのか?」

「何故僕が親友枠から外れそうになったか聞きたいけど、そうだね」


 勇はこちらを向き


「本当に大事なものを見失わないようにしただけだよ」


 なるほど


「つまり」


 恋愛対象が男から女になっては不誠実だということを表してるんだな。


「やっぱりお前は真っ直ぐな男だぜ」

「シアはとてもグラグラだよね」


 今回も私の彼女候補をNTRされたが、次こそは絶対に仲良くなってやる。


「私のハーレム道はこれからだ!!」

「ほどほどにね」


 これは女の子が大好きな世界一の美少女と、そんな女の子達に無意識に惚れられちゃう美青年の物語




 放課後




「グスッ、何で男どもが私の方に寄ってきて、女の子はみんな勇に取られるんだよぉ」

「合コンだからじゃない?」


 その結末は、誰にも分からない。


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