第32話
「そういえば私、普段シャルがどういう生活してるか知らないや」
突然抱く疑問。
「シャルって私がいない時どうしてるんだろ!!」
「そのような調子では宿題は終わりませんよ」
「はーい」
私はフローラに勉強を見てもらいながらお喋りをする。
「シャルは良い子だからいつも私の話を聞いてくれるの。でもシャルって全然自分のこと話さないなーって思うんだよ」
「そこ間違いです。シャル様の内面の良し悪しについて私は判断しかねますが、確かにシャル様は少し秘密主義の気質がありますね」
「だよね!!やっぱりお姉様である私としてはチェックすべきだと思うんだよ」
「そこも間違いです。何がですか?」
「シャルの友好関係及び恋愛事情を」
「はぁ、そうですか。あとこことこことそこ間違いです」
「え、どこ?」
「ですから」
こうして話は上手く盛り上がらずに私はなんとか宿題を終わらせた。
「疲れたー」
「お疲れ様です。こちらハーブティーです」
「ありがと」
やはり心が落ち着く……実感はあまりないが、まぁなんか体に良さそうだしいいや。
「私はあまりオススメしませんね」
「ん?何が?」
「人は誰しも秘密があります。それはマイナスなものだけでなく、プラスの意味でのこともあります。知らない方がよかった、という結果もありますよ?」
「……まぁ確かに」
私にだって誰にも言えない秘密はある。
この世界に転生したこと、ましてや性別が男だったこと、それからフローラが買ったアイスをこっそり食べたこと。
「そうだね。やっぱりやめるよ。人のことをマジマジと詮索するなんて人としてどうかしてるしね」
「いえ、その前に人のアイスを食べる方が人としてどうかしていますよ、シア様」
「あ、ごめんなさい」
なんでバレたんだろ?
◇◆◇◆
「そんな簡単に丸め込まれる私だと思ったら大間違いだよ!!」
「誰に言ってるの?」
「もしかしたら監視してるかもしれないフローラに」
「そんなわけ……あるのか……」
「学校楽しみですね」
「相変わらずキャワワ」
電柱に隠れながらシャルの登校を観察する私とロリコン。
「僕の説明雑じゃない?」
「私は妹だからいいけど、勇の場合はただの変態だろ?」
「僕はシアに付き合わされてるんだけど……まぁいいか」
相変わらず順応が早い勇。
「妙だな。私は学校生活で勇しか友達がいないのに、シャルには友達がいる。何か事件の香りがしないか?」
「遠くからコソコソと小学生の登校を見る僕達の方が事件性を感じるよ」
「シャラップ!!喋れ」
「どっち?」
いちいち細かいことを気にする男だな。
だからモテるのか?
「今のところ普通だな」
「まぁお姫様と言ってもシアとは少し違うかね。可愛くて話上手だから人気者なんじゃない?」
「確かに」
シャルは私と違って愛嬌がある。
まさかこんな歳の離れた妹から学ぶことがあるとはな。
そして事件は起きた
「な!!ゆ、勇!!シャルに男が話しかけてる!!」
「男って……まだそんな歳じゃないでしょ」
「ふざけるな!!男は獣だ。シャルといういたいけな少女を奴らが野放しにしておくとは思えない。てか私が食べたいから」
「一番の獣が僕の前にいたよ」
シャルは突然現れた間男と楽しそうに話している。
「気色悪い。下心丸出しだなあいつ」
「僕似たような顔する人をよく見るけどね」
「そいつは間違いなくど変態だ。距離を置いた方がいいぜ」
すると何故だか勇は少し私から距離を取った。
「そろそろ学校だな」
「そうだね」
「じゃあ勇はこれ。私はこれだ」
「何これ」
「え?変装用の着替えだけど」
私は清掃員のような服を着る。
「えっと……いくつか聞きたいんだけど」
「なんだ?」
「これはどこから?」
「フローラから借りた」
「なんでこんなの持ってるんだあの人……次なんだけど、今から僕達も学校なの知ってる?」
「もちろんだ。私は事情が事情だから実は出席日数が本来の半分でいいんだ。だから一日休んだくらい問題ない」
「僕は?」
「学校にはお婆ちゃんが復活したって伝えて置いた」
「ある意味亡くなったよりも休むべき理由かもね。でもそれ以上に不謹慎だ。……それで?最後になんで着替えを?」
そんなの当然
「潜入するからに決まってるだろ!!」
◇◆◇◆
「おはようございます」
「はいおはよう。今日も若さが輝いてるね」
「?うん、ありがとー」
笑顔で小さな女の子に手を振る。
「おはようございます」
「おう、さっさと学校いけやボーズ」
「え?あ、はい。……なんだか聞いたことある声だなぁ」
男の子を学校に行かせる。
「ほらな。案外バレないんだよ」
「今だけだよ絶対」
私は勇と一緒に全身暑苦しい装備で登校中の児童達に挨拶をする。
ついでとばかりに箒を持って地面を掃く。
「シャルの教室はあそこだな」
私は場所を確認する。
「こんなことをしてもシャル様の様子は見れないんじゃないか?」
「大丈夫だ、問題ない。勇が潜入するからな」
「ごめん。大丈夫な要素が見当たらない」
私は新たな袋を取り出す。
「任せたぞ、新人教師さん」
◇◆◇◆
「えー、今日は担任のエリコ先生が休みのため、臨時で入った
「えー」
「聞いてなーい」
「カッコいー」
勇の自己紹介に複数の反応が返ってくる。
最初は皆おそるおそるな態度であったが、勇の誠実さに触れ徐々に心を開く。
次第に子供達の反応は好意的な態度で返ってくるものが殆どとなった。
一人を除いては
「質問は終わり。それじゃあ早速授業を始めるね」
黒板に文字を書き始める勇。
(見られてるなぁ)
勇は自身の背中に刺されているような感覚を覚える。
「じゃあこの問題が分か」
「283」
「せ、せいかーい」
勇は冷や汗をかく。
「す、少し簡単だったかもね。じゃあ次の問だ」
「83」
「ま、まだ問題書いてないかなぁ」
(なんで答え合ってるの怖いよ!!)
勇は恐怖を覚えた。
火山の噴火、巨大な地震、隕石の激突、これら全てを未然に防いだ勇を持ってしても目の前の少女のイレギュラーさに動揺を隠せずにいた。
「よーし、もうプリント配るから、それを時計の針が丁度真上を指した時までにしてね。とりあえずプリント配」
「終わりました」
「まだ配ってないんだけど……」
既に勇が事前に製作したプリントを解き終えた少女は勇に差し出す。
「み、みんなが終わるまで待っててねぇ」
「はぁ」
少女……シャルはため息を吐く。
そして勇の耳元で
「こんなところで何をしている害虫。変態の汚名を受けたいなら無様に殺してやるから素直に首を差し出せ」
そっとシャルは勇から離れ、いつものような笑顔を浮かべる。
「あ、あははは」
勇は笑うしかなかった。
◇◆◇◆
一方その頃
「こ、こちら先日取り寄せてた地元で名産のものでして」
「そんなに気を遣わなくても大丈夫ですよ。私はただの見学なのですから」
シアは職員室でお菓子を貪り食っていた。
「と、ところで何故私をお話しを?」
「すみません。妹のシャルがお世話になっているとよく話してくれるんです。ですので是非一度お会いしたくて」
「こ、光栄です!!」
エリコは凄い勢いで頭を下げる。
「ですのでそう畏まらないで下さい。本日は無礼講です」
「で、でしたら握手などして頂けないでしょうか!!」
「もちろんいいですよ」
シアはエリコの手を握る。
「凄まじい鍛錬を積んでいるのですね」
「え?あ、そうですね」
シアはタコ一つないエリコの手を握ってアホみたいなことを言う。
みたいというかアホである。
「心配ですか?」
「あ、はい。シャル様がどうしてらっしゃるか心配で」
「心配?」
シアは不思議に思う。
シアにとってシャルは砂糖と幸せで出来ていると信じているため、シャルが心配という言葉を理解出来なかった。
「シャルについて、教えてくれませんか?」
そしてシアは真実を知ることになる。
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