第40話
「レン!!事件だ!!」
「二日酔いなんだ。シアの声は高いから少し声を抑え」
「大変なんだって!!」
例の部屋で眠っていたレンを無理矢理起こすシア。
体を揺らされ更に追い打ちをかけていくシアと死に体のレン。
「なんだよ。どうせお姉ちゃんに嫌われたーとか、女の子と喋りたいーとかだろ。頼むから眠らせて」
「違う!!これを、これを見てくれ!!」
「これは……」
レンが手にした紙には
『ブラコン選手権、優勝賞品はカード¥¥¥¥¥分プレゼント!!』
シアは目に$を浮かべ
「参加しよう!!お兄ちゃん!!」
そしてレンはちょっと嬉しそうに了承した。
◇◆◇◆
「さぁ始まりましたブラコン選手権。我こそはブラコンを名乗る頭のおかしい参加者を紹介したいと思います!!」
嘘だろ主催側がそれ言っちゃうのかよ。
「まずは1組目。『お、お兄ちゃんのことなんてべ別に好きじゃないんだからね』ツンデレの魔術師、ツゥンデイレ兄妹だ!!」
「ちょっと!!まるでサヤがお兄ちゃんのこと好きみたいな紹介やめてくれる!!」
「ま、まぁまぁサヤ落ち着いて」
おいおい、マジかよ。
「めっちゃ可愛いー。レン、私がサヤちゃん行くからレンはお兄ちゃんでも行っててくれ」
「俺はシアと違って異性が好きなんだが?」
「そして2組目。『退け、俺はお兄ちゃんだぞ!!弟への愛は誰にも負けん!!』ちょっとヤバそうな香り、キンダーン兄弟です!!」
「見ろ弟よ。お前のことをみんなが見ているぜ」
「なんでこんなことに……」
自信満々そうな兄と、どこか絶望した顔を浮かべる弟っぽい人がそこにいた。
「ブラコンって言われたら兄妹のイメージだったけど、男兄弟もそうだったな」
「うちは男俺だけだし、そう思うのも仕方ないかもな」
「3組目。『お姉ちゃんに全部任せない。家に帰ったらよしよししてあげる』薄い本みたいな展開、オネショータ姉弟です!!」
「ケイ君、頑張ろうね」
「僕、頑張るよお姉ちゃん」
……
「レン」
「ああ、分かってる」
そう、あの姉。
「「おっぱいデカいな!!」」
「そして4組目の最後。『兄妹の絆?そんなものより金だ金!!』覆面の下は何者だ、キングダム兄妹です!!」
「なんて名前だ」
「バレたら大会どころじゃないし」
覆面を被った私達は優雅に手を振る。
万が一バレた時用に王族としての基本くらいはしておかないといけないのだ。
「というわけで出揃った計8名による熱き戦いが始まります!!」
「「「「うぉおおおおおおおお!!!!」」」」
会場の熱狂が伝わってくるけど、何でこの大会こんなに有名なんだろ。
「一応理由の一端はシアだからな」
「私?」
「ああ。昔から事あるごとに家族ネタを引っ張るせいで、この国では家族愛的な思想が強いんだ」
「なる……ほど?」
「簡単に言えば家族大好き王国ってことだ」
「完璧に理解した」
さすがレン、私が分からないということを分かっているな。
「そんなわけで最初の勝負内容はこちら!!チキチキ、お互いのことどれだけ知ってるクイズです!!」
◇◆◇◆
「よろしくお願いします」
「ふん!!べ、別に仲良くなんてなりたくないんだからね!!」
「わぁ、嬉しいです」
「話聞いてた!!」
隣にいたサヤちゃんの言葉をツンデレ通訳を通して会話する。
なんかサヤちゃんミアさんと雰囲気が似てて好きなんだよなー。
「ふん!!言っておくけど、負けないから」
「はい、正々堂々頑張りましょう」
「なんかあなた。どこかお姫様と似」
「それでは問題!!」
そして始まる。
「きょうだいの好きな食べ物をお書き下さい」
「好きな?」
「食べ物?」
簡単といえば簡単だし、難しいといえば難しい。
「お兄ちゃんの好きなものなんてこれしかないでしょ」
「うーん」
スラスラと手が進む参加者と違い、私の手は止まっていた。
理由はレンにこれといった好き嫌いがないからだ。
強いて言うなら肉が好きだが、答えが肉なんてことはあり得ないし。
「レンの方は一瞬で書いたな」
進行係を挟んで向こうの席に座っているレンは既に書き終えたのかペンを置いている。
そんな決まったものがあったっけ?
うーん、まぁハンバーグでいいや。
私が好きだし。
「ということで答えが出揃いました。まずはツゥンデイレ兄妹は」
「グ、グラタンかな?」
「グラタンね」
「両者一致!!見事な正解だぁあああああ!!!」
「よく分かったねサヤ」
「ふん!!こんなの簡単よ!!」
おお、凄いなサヤちゃん。
書くのも早かったし、相当ブラコン力高いな。
「続いてキンダーン兄弟の答えは」
「もちろんタコさんウインナーだよな!!」
「寿司」
「おおっと!!ここで答えが別れてしまった!!」
「な、何故だ弟よ!!昔はあんなにタコさんタコさん言っていたのに!!」
「うるせぇ!!いつの話してんだバカ兄貴!!」
どうやら向こうはブラコンであるがブラコンでないらしい。
私も結構レンには詳しい自信があったが、こうして問題を出されるとわからないもんだからな。
家族といえど結局は他人なのかもな。
「続いてオネショータ姉弟は」
「ご飯!!」
「お米」
「文字自体は違いますが正解と言っていいでしょう!!お見事です!!」
「やった!!」
「ケイ君やったね」
向こうはなんだか親子って感じだな。
お姉さんの方がご飯を作ってそうだし、好みの味は理解してそうだ。
「最後にキングダム兄妹の答えをご提示下さい」
なんかあの人妙に私達に丁寧なんだよな。
もしかして正体バレてるのか?
まぁ、今はクイズ集中するか。
「すまんレン」
「いいよ別に」
そして出された答えは
「ハンバーグ」
「シアの作ったハンバーグ」
「一致しました!!多少違いますが、問題ありません。というか文句あるやついないよな?」
圧かけるな圧を。
というか
「私のハンバーグってなんだ?」
「シアが8歳の頃くらいにノリで作ったハンバーグだ。焦げてて形も歪で最悪なあれだ」
「……あ!!クソ、忘れようとしてたのに」
思い出してしまった。
あの時のシェフ達の顔は今でも忘れられん。
「さてジャンジャン行きましょう。続いてのクイズは」
◇◆◇◆
「さてクイズは終了。順位は下から順にキンダーン兄弟、オネショータ姉弟、ツゥンデイレ兄妹、そしてキングダム兄妹です」
「はぇ〜」
あれから色々とクイズを出されたが、ハッキリと言うと一割くらいしか分からなかった。
だが、何故かことごとく答えが当たって行く。
多分だが、レンが私の答えを予想して書いていたのだろう。
さすが我が兄だ。
唯一私が分かったものといえば
『お相手も立派な男子。好きな女性のタイプは』
『『おっぱいの大きい人!!』』
これくらいであった。
「続いてはブラコン愛を試す審査です。普段の日常を送り、一体自身がどれだけブラコンなのかを示していただきましょう。もちろん演技をしても構いませんが、この場にいる観客は本物です。簡単にバレるのでお気をつけて」
いや何者だよ会場の人達。
何で全員ない眼鏡をクイクイさせてんだ。
「うーん、まずいなレン。悲しいことに私は演技が苦手だ」
「シルヴィアやシャルならまだしも、俺もそういったには苦手だ。今回は負けそうだな」
さすがのレンもお手上げな様子。
まぁクイズの点数があるし、落としてしまっても仕方ないな。
「まずは最下位のキンダーン兄弟どうぞ」
「お帰り弟よ。風呂か?ご飯か?それとも……お・れ?」
「キモい◯ね!!」
それから淡々と進んでいった。
「ケイ君あーん」
「あーん」
オネショータ姉弟は本当に自然だった。
演技する必要がないというか、本当にただの日常を送っているよう。
弟が好きなんだなという気持ちがこっちにまで伝わってくる素晴らしいものだった。
対してツゥンデイレ兄妹は
「は、はぁ!!なんで演技とはいえサヤがお兄ちゃんと一緒にご飯食べないとなの!!」
「え?で、でもいつもは一緒に」
「う、うるさい!!黙ってお兄ちゃん!!」
人前があるせいか普段の本領を発揮できていない様子。
惜しいな。
彼女は正にダイヤモンドの原石だというのに。
多分家で二人きりなら凄いぞー彼女は。
知らないけど。
「さて、現在トップのキングダム兄妹、舞台へ」
「どうする?」
「まぁ……いつも通りでいいんじゃないか?」
「一応私は王女スタイルでね」
「ある意味新鮮だな」
そして私とレンは舞台に立つ。
めちゃくちゃ視線が集まるが、こちとら王族ぞ?
これくらいならわけないね。
「私とレ……お兄ちゃんの日常といえば」
「まぁあれだな」
私とレンは小道具の中にあった本を手に取る。
そして
「……」
「……」
無言でそれを読み始めた。
会場はポカーン。
え?それが日常?って感じだ。
でも仕方ないだろ?これが私達なのだから。
それにしても
「面白くないですね」
「そうだな」
本の中身は当然書物ではない。
これじゃあ私達は何を楽しみに本を読めばいいと言うのだ。
「あ、そうだ。本の中に携帯を入れて」
『可愛い 女の子 おっぱい!!』
で検索。
「うぉおおおおおおおおおおお!!!!」
「さすがシア、天才だったか」
それから私達は大会を忘れ、ひたすら書物に耽る。
「お兄ちゃんこれ!!」
「うお!!こりゃ凄いな」
「でしょ!!」
レンの近くに寄り、とんでもない格好の女の人を見せる。
これにはレンも大興奮。
二人でニヤニヤとそれを眺める。
そんでレンは座るながら読む派だが、私は普段は寝転がりながら書物を見る。
だが会場には枕がないので、レンの足に頭を乗せる。
「ゲスゲスゲス」
「グヘヘヘへ」
そしてタイムアップの時間と共に、私達はやっと我に帰ることができた。
「普通に楽しんじゃった」
「でも面白かったな」
まぁ結果は最悪だろう。
あんなのがブラコン認定されるとは思ってない。
クイズの点数次第といったところだが、果たして結果は
「それでは優勝者を発表しま……え?あ、はい。その前にキングダム兄妹にお話が」
「ん?」
「なんだ?」
私とレンは何故か進行係に裏に来るよう言われた。
やっぱりバレたか?
「向こうの部屋でお待ちです」
「お待ち?」
誰だろ。
私とレンは顔を見合わせて、部屋の扉を開ける。
「失礼しま……」
「どうしたシア。まるで悪魔にでも会ったかのような顔をし……」
「シア、お兄様、随分と楽しそうですね」
そこには般若の笑顔を浮かべたシルヴィアお姉ちゃん。
「言いたいこと、分かっていますね?」
「はい……」
「すみませんでした……」
その後、しこたま怒られた私達は結局大会を棄権した。
後から聞いた話だと、何故か私達は2位と大差をつけて勝利したらしい。
「うわぁああああん、私のガチャがぁあああああああああああああ」
「お姉様!!今度はシャルとシスコン大会にでましょう!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます