第30話
「大変だレン!!妹の大ピンチだ!!」
「あっそ」
例の書室でバチバチにエンろい写真集を見ている我が兄レン。
「あっそ、じゃないだろ!!こんな可愛い妹がピンチだって言ってるんだぞ!!」
「はぁ」
レンはパタンと本を閉じる。
「シアが今までにピンチと言ってきた回数合計283回。内容は主に何故彼女が出来ないか、私はシャルもしくはお姉ちゃんに嫌われたか、残りは大体小遣いの話だ」
レンは諭すように
「で?今回のピンチは?」
「女の子にモテモテになるテクニック教えて」
「アホか」
レンは仕事をしだす。
自身がエッチな本を読んでいることを私に見られるのは平気だが、さすがに目の前で見るのは違うと判断したのだろう。
「それにシアには必要ないだろ。自然体で目の前に存在するあらゆる生物を魅了するんだから」
「言いがかりはよせマイブラ」
「マイブラだとただのシアの下着だろ」
「そんな力が有れば今頃私はモテモテの筈だ」
「何も間違ってないだろ」
レンはツッコミを入れつつ目にも止まらぬ速さで仕事を進める。
「レンって私が来るといつも仕事するよね」
「モチベーションだ。シアが来ると、何故俺がこんなに頑張ってるのかを改めて思いだせる」
「ふ〜ん」
よく分からないが
「じゃあ私って来た方がいい?」
「……そうだな。でも、その前にシャルと遊んでくれると俺も寿命が減らなくて済む」
「何故ここでシャル?まぁシャルに会うのなんて苦じゃないし、別に構わないけど」
私は棚から取ってきたお菓子を取り出す。
「長居する気満々だな」
「だからレンからモテるテクニックを聞くんだってば」
何度も言ってるが、レンはモテる。
それは経済面、顔もそうだが、性格によるものも大きいだろう。
「私はレンが優しいことを知ってるけどさ。初めて会った女の子にどうやってそれを分からせるんだ?」
「そうだなぁ」
ほら、こうやって結局話に乗ってくれる。
「俺は別に優しくはないが、大抵は相手のタイプを見極めてるかな」
「どゆこと?」
「例えばめっちゃキャピキャピしてる奴らは、目立ちがりに見えて逆に自主性がない。流行りのものを追っかけたり、いつもグループに所属してるのがその証拠だ」
「ほう?」
「だからそういう子達は俺が全力で引っ張る。ついて来いってな」
「確かにレンについて行けばどうにかなりそうな安心感はあるな」
「で、あまり自信がない子には寄り添う。私はダメだ、何も出来ないんだ、そんなことないよなんて言葉は信頼関係あって成り立つ。ここは純粋に共感するみたいな」
「はぇ」
勉強になるなぁ。
「やっぱり人間、みんな違うと言うが、ある程度の似たような場所はある。だから自分の中でこういったタイプへの有効打を覚えておくといいな。ポ◯モンと一緒だ」
「すげぇ、最後の一言でめっちゃ分かった」
やはりレンに頼ったのは正解だな。
「でもやっぱり難しいな。それに私はそれぞれに違う対応を出来る程器用な人間じゃないし」
「正直そのまんまでシアは最強なんだが……そうだな。やっぱり身近な人間で試してみるのはどうだ?」
「というと?」
「例えば」
ドン
「急に何でしょうか」
「私の女になれよ、フローラ」
可愛いメイドのフローラに壁ドンをかます。
「お言葉ですが、私はシア様の専属メイド。契約上、私は既にシア様のものです」
「そういうことじゃなくてー」
私は地団駄をこねる。
「フローラの気持ちが聞きたいの。私じゃ……ダメ?」
「それは……」
「待てシア、違うだろ」
静止の声が入る。
「今回はあくまで初対面という設定だ。いきなり初対面で壁ドンとか頭沸いてるって思われるぞ?」
「え?でも私の読んでた少女漫画だと一発目これだったよ?」
「フィクションを現実でやろうと思うな」
「そっか……」
「シアの場合は本当に起こっちまうから」
ではどうすればいいのだろうか?
「大丈夫か?」
「正直ヤバいです。ちょっと今日は仕事が出来ません」
「事情は分かってる今日は休め」
「申し訳ありません」
フラフラとフローラが退場していく。
「さっきから顔が硬かったのってもしかしてフローラ体調悪かった?」
「そんなところだ」
それはちょっと悪いことしたな。
「いいか、設定は少しだけ話したことのある一般人。シアは王族としての態度で、その上で気さくな感じを出す。これが最初のステップだ」
「分かった」
よし次こそ成功させるぞ。
「あら、シアにお兄様、どうしたの?」
「こんにちは、シルヴィアお姉様」
「……そういうことね」
え?何もう状況把握したの?
「こんにちは、シア様。今日は私にどのようなご用件で?」
シア様!!
シルヴィアお姉ちゃんから様付けさせるのちょっとむず痒いな。
「ほら、顔が変になってるわよ」
「あ」
コホン
「お姉様は一体何をされていたんですか?」
「私は少し書類に目を通していました。失礼ながら、シア様は何をなされていたんです?」
ここでレンの言葉を思い出す。
気さくに、だったな。
「私は先程ゲームで煽って来た方をはめ技で拘束して切断してやるました」
「……」
「……?」
「失格よ」
「ええ!!」
何故!!
「一国のお姫様がゲームのはめ技なんてありえないでしょ?」
「でも親近感湧かない?」
「それよりも先にこの子ヤバいってなるわ」
そうだったのか!!
「逆に考えてみなさいシア。私やシャル、お兄様が突然そんなこと言い出したらどう思う?」
みんなが?
『見てシア。アンチのコメントの匿名性を消したら一気に喋らなくなったわ』
『お姉様、シャル煽り厨をネットで晒してみたの』
『シア。はめ技って響きエロくないか?』
「……」
そんなの
「レン以外ダメに決まってるじゃん!!」
「俺の扱い」
盲点だった。
確かにとっつきやすいことは大事だが、それではなんか人としてダメだと判断されそうである。
「そうだね。身近だけど、やっぱりもう少し公的に話せる内容にする」
「そうね。そうやって少しずつ学んでいきなさい」
シルヴィアお姉ちゃんに励まされ、私は次の相手に向かった。
「お姉様どうしたの?」
「シャル」
私は天才的な頭脳から導く
「掛け算って難しいですよね」
「……そうだね!!」
さすが私。
学生なら共通の話題かつ、私も俗世の人間だと分からせる最高の手段。
「じゃあ一緒に勉強しませんか?」
「はい!!」
机に座り、勉強を教える。
やはり私ってばいいお姉様だなぁ。
「お、おいシーー」
「お兄様」
シャルはニッコリとレンを見る。
レンもそれを見て頬をひくつかせている。
やはり仲がいいな。
「それじゃあね」
私は結局当初の目的も忘れ、シャルと楽しく勉強した。
◇◆◇◆
「シャル、ごめん私眠たくなって来ちゃった」
「大丈夫ですか?シャルも眠たいから一緒に眠ろう」
先に行っててとシャルはシアを寝室に向かわす。
「お兄様、今日はグッジョブです」
「お褒めに預かり光栄だ」
シャルも本当におねむなのか、何処かいつもより覇気がない。
「でも確かシャルって掛け算どこまで出来たんだっけ?」
「10桁かけ10桁までならフラッシュ暗算可能です」
「マジかよ……」
レンは自身の妹ながら、本当に自分と同じ血なのか疑った。
「結局シャルはお兄様みたいに人の気持ちに寄り添えません。ある意味適材適所です」
「その年の妹にそれを言われる時点でな」
兄としてのプライド及び、人としてのそれも傷つけられるレン。
それでも
「ふわぁああ」
「ほら、シャルもさっさとベット行け。大好きなシアが待ってるぞ」
「言われるまでもありません」
シャルは歩き出したかと思えば一歩止まり
「おやすみなさい、お兄様」
「ああ、おやすみ」
やっぱり可愛い妹だなと感じたレンであった。
「ん?シア?」
すると突然戻ってくるシア。
「レンお兄ちゃん。今日はありがとね」
眠いのか、どこかポケーとした顔のシア。
「そのお礼」
シアは最後にレンに抱きついて
「おやすみー」
そしてトボトボと帰っていった。
そしてその背中には小さな悪魔が張り付いていた。
「シアよ、そうやって安易なオチをつけなくても」
次の日
「あれ?レンまた怪我したの?」
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