第14話

「シャール」

「どうしたの?お姉様」

「今日はお姉様と一緒に遊ぶ?」

「え!!いいの!!」

「勿論」


 今日は学校が休日になった。


 理由は、私が今朝


『学校だる過ぎて死にそう』


 と言ったのが原因だ。


 まさか国中に知れ渡り、この国の全ての学校が特別に休みになるとは思いもしなかった。


「何する?シャルの年の子って何するんだろ?」

「お姉様はシャルと同じ年の時に何をしてたの?」

「私?私はトレーディングカードゲームとか、ゲーム、あとは読書(崇光なもの)だったかな?」

「じゃあシャルも同じのがしたい!!」

「そう?でもシャルには面白くないと思うけど」

「シャルはお姉様と同じことをして、お姉様と一緒に遊びたいです!!」


 私の胸にハート型の矢がつき刺さる。


「シャル、お姉様はシャル無しじゃ生きれなくなっちゃった」

「えへへ、シャルとお揃いー」


 ギュッとハグをする。


 やっぱりまだ小さいな。


「お外は危ないし、まずはカードゲームからしようか」

「はい!!」


 私はシャルと手を繋ぎながら自身の部屋に向かった。


 ◇◆◇◆


「どうしよう」


 カードゲームをすると言ったが、馬鹿正直に男大好き系のゴリゴリのものをすればシャルに引かれる。


 ここは女児向けかつ、難しくないものを用意しなければ。


「あ、シャルごめん。私ちょっとトイレに行くね」

「待ってます」


 私はトイレに行くふりをし


「フローラ」

「何でしょう」


 呼ぶとすぐに鼻血とカメラを構えたフローラが現れる。


「フローラって私がシャルかお姉様と一緒にいた後にいつも鼻血出してるよね」

「気のせいです」

「そっか。少しお遣いを頼んでもいいかな?」

「いつも申していますが、私はシア様のメイド。命令すれば命もかけます」

「それメイドの仕事なの?それに、私が最初にフローラに言った言葉覚えてる?」

「忘れたことなど一度もございません」

「そう。なら、私のお願い、聞いてくれる?」

「もちろんです」

「出来るだけ急いで。私がシャルに怪しまれる前に」

「承知しました」


 フローラは私の頼んだゆるふわ系カードを買いに、急ぎ足で家を出た。


「ただいまシャル」

「お帰りなさい、お姉様」

「何してたの?」


 部屋に入ると、少し物の位置が変わったように感じた。


「シャルこれで遊んでた」


 シャルは知恵の輪を取り出す。


 私が昔


『おいジジイ、私と勝負しようぜ』

『何!!シアと遊べるだって!!おい!!これを千種類用意しろ』


 て流れで無限にある知恵の輪がある。


「シャルは難しくて解けませんでした」

「そう?むっふっふ、お姉様が教えてしんぜよう」

「わーい」


 私は自慢気に知恵の輪を取る。


 カチャカチャ


「うむ」


 カチャカチャ


「ほう」


 カチャカチャ


「きた!!」


 私は地面に叩きつける。


「分かんない!!」


 そういえば私、結局一個も解けずにジジイに投げつけたんだった。


「ごめん、シャル。お姉様はダメな子みたい」

「ううん。お姉様はダメな子なんかじゃないよ。そうだ!!シャルと一緒に解こう?」

「はぅあ、いい子過ぎ」


 私は涙で顔をびしょ濡れにしながら一緒に知恵の輪を解く。


 フローラが帰ってくるまで、私は一つも解けなかった。


「シア様、こちらです」

「グヘヘ、これがないとやってられんわ」


 私は意味深な箱を受け取る。


 中身はプリティーなキャラ絵のあるカード(意味浅)だ。


「シャル、お姉様がやってたカードゲームしよっか」

「はい!!楽しみです」


 私は箱からカードを取り出す。


 書いてある絵も可愛くて、ルールも単純。


 まさに女の子にもピッタリだな。


「じゃあ一緒にルール覚えよっか」


 こうしてルールを覚えるまではよかった。


「待てよこれ」


 効果は単純明快だが


「これとこれのコンボで」


 いつの間にか私は熱中していた。


「お姉様?」

「あ!!ごめんね。ルールは分かった?」

「はい。これで一緒に遊べますね」

「じゃあ一回遊んでみようか」


 デッキを置いて


決闘デュエル!!」

「デュエル?」

「ああ、これは戦う前に言う決め台詞みたいなものだよ」

「お姉様は博識ですね」

「ありがとー。ところで博識って何?」

「お姉様は天才ってことです」

「分かってるなー、シャルは」


 そしてバトルを始める。


 最初にシャルに勝ってもらい、楽しんでもらおう。


「フワフワプリンを召喚!!シャルのホイップを破壊し、更にフワフワプリンにモフモフケーキを重ねる」

「わぁ」

「そしてシャル!!これで止めだ!!」


 勝った。


「楽しかった?」

「はい!!」

「そっかー」


 悲報、私17歳、小学生に気をつかわせる。


「次はゲームでもしよっか」


 私はデカいテレビのある部屋に行く。


 正直ゲーム以外でこれを使った記憶がない。


「どれかしたいのある?」

「お姉様は普段何を?」

「私は最近これだけど」


 これちょっとグロいんだよな。


「シャルはそれがしたいです」

「えっと、でもーー」

「ダメ……ですか?」

「いいよ!!」


 私が弱いんじゃない。


 シャルが強すぎた。


 ただ、それだけだった。


「一度、お姉様のお手本が見たいです」

「そう?分かった、お姉様の実力見ててね」


 私はコントローラーを握る。


 それから数十分


「よし」


 画面にはゲームクリアの文字。


「は!!」


 しまった!!


「ご、ごめんシャル!!」

「どうしたの?お姉様」

「お手本のつもりが最後までやちゃった」

「シャルは面白かったですよ?」

「いい子すぎて罪悪感やばたにえん」


 このままではお姉様の威厳がなくなってしまう。


「ほ、本でも読もっか」

「はい」


 我が家には小型版図書館のようなものがある。


 基本的に私とシャル以外がよく通っている。


「お姉様は普段どんなお本を?」

「私は」


 目が漫画に移る。


 だがここは威厳を保つため


「この『魔法幾何学創生結晶を使った封印のイデオロギー的観点から見た一般論との乖離について』ってのを普段は読んでるかな?」

「凄い!!お姉様はこんな難しそうなお本を読んでいるの?」

「も、もっちろーん」

「でも、シャルは難しいお本はまだ読めない……」


 しょんぼりするシャル。


「シャル」


 シャルの小さな手を握る。


「(ぶっちゃけ私も分からん)分からないことは恥ずかしいことじゃないんだよ?」


 本音と建前。


「じゃあシャル、これが読みたいです」

「どれ?」


 視線の先を見る。


『近親婚やLGBTについて』


「オッフ」


 あまりにも衝撃が過ぎた。


「こ、これはシャルにはまだ早いかな?」

「そうなの?ではあれは?」


 指差す方


『優しい監禁生活』


「ボドフ」


 変な声が出る。


「ど、どうして興味があるのかな?」


 声を震わせながら尋ねる。


「シャル、監禁はずっと一緒に居られるって聞いたから、シャルお姉様とずっと一緒に居たい!!」

「シャル!!」


 抱きしめた。


 もう目一杯抱きしめ過ぎてシャルが


「グヘヘ」


 と変な声まで出してしまう程に。


「大丈夫、監禁なんてしなくてもお姉様はシャルといつも一緒だから」

「あの人の場所に行ったりしない?」

「あの人?ああ、勇?大丈夫、まぁ将来はお姉様とシャルと三人で暮らそ。慈悲でレンも入れてやってもいいかな?」

「お父様は?」

「加齢臭が酷いから嫌」

「あの人は?」

「私が時々泊まりに行くくらいかな?」

「そっか」


 シャルは私の首から手を離す。


「お姉様、今日は楽しかったです」

「ごめんね、お姉様不甲斐なくて」

「シャルはお姉様を一番凄い人だって思ってます」


 笑顔でシャルは部屋を出た。


「ホンマええ子やなぁ」


 ◇◆◇◆


「ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく」


 シャルは自身の爪を噛む。


「お姉様とお泊まりだと?ふざけやがって。いつかぼろ雑巾にして下水に落としてやる!!」


 シャルはこちらに歩いてくるフローラに気付く。


「フローラ」

「はい、シャル様」

「あのカードはお姉様がシャルに買ってくれたもの。保管しといて」

「かしこまりました」

「盗むなよ?」

「ダメですか?」

「お姉様と一緒にいたいなら我慢しろ」

「……はい」

「それと、奴を封印する魔法陣、あれの修正。ちょっとミスがあったから治すよう伝えておいて」

「かしこまりました」


 シャルはテレビのある部屋に足を運ぶ。


「よかった、やっぱりお姉様気に入ってくれた」


 自身で制作したゲームを元の位置に戻す。


「今日は楽しかったな」


 シャルは今日一日を思い返す。


「お姉様、あの漫画見てたな」


 シアが気になっていた漫画を思い出し


「これなら、あの部屋に入ってもお姉様が退屈しないね」


 可愛らしい笑顔を浮かべた。






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