二十七幕
全てを話した橋姫はここにいる皆の顔を見て口にする。
「お願いします、暁良を助けたいの力を貸してください」
そう言って頭を下げる。
それに対して皆は思う事を告げた。
「私は!姫ちゃんにお願いされなくても手伝うよ!」
夏希はフンスーと鼻息を荒げて言う。
「橋姫、私も勿論夏希と同じ!」
未知瑠は、自分も気持ちは同じだと言葉に強い意志を込めた。
「俺はそもそも貴方を知らないが、源先輩に貸しを作りたいから手伝います」
鼻を軽く掻きながら大河も答えた。
「儂も元よりじゃな、じゃが現在儂は事情により動けない」
幻魔は手伝えないと言った。
それに対して未知瑠達は「何故ですか!」と問いかけると「お主達にはまだ教えられん」と答えを返した。
「だが、これは大討伐案件じゃ、直ぐに人を招集させよう」
そう言って立ち上がると幻魔は立ち上がり部屋から出て行ってしまった。
皆の反応に橋姫は少し涙ぐんで「ありがとう……」と小さく口にする。
夏希は「でも」と橋姫を見て呟いた。
「どうして大江山四天王は暁良さんの魂を破壊しないんですか?」
そう尋ねると橋姫が答えてくれた。
「酒呑と暁良の魂では生者である暁良のが強いからよ」
「だったら尚更なんじゃ!」と言った夏希に「だからこそよ」と答えた後、説明を始めた。
「そうね、暁良の魂を白い絵の具、酒呑を黒い絵の具で例えるわね」
そう言って近くにあった、幻魔が趣味と時間潰しで使ってる画家道具を持って説明した。
「絵の具のパレット、これは肉体とするね、そして、画家は三鬼って所かしら?」
そう前置いてから。
「まず、最近までの暁良の状態はこの大量にある白い絵の具に黒の絵の具を垂らした状態だった」
そう言って大量の白い絵の具の端に一滴黒を垂らした。
「当然、ここは黒でその周りはグレーになるわよね、それが暁良の魂が抜かれる前の状態ね」
「これだけなら、暁良の魂には少ししか影響ないの、何故なら生者である暁良がメインの魂だから、白の絵の具をどんどんと継ぎ足して限りなく白に近いグレーを維持しているのよ、黒の絵の具は在庫がないから黒の絵の具は継ぎ足せない状態ね」
「だけど」
そう言ってから白の絵の具を拭き取り、パレットをもう一つ取り出して白を垂らした。
そして拭き取った方のパレットを見せて。
「これが今の暁良の状態」
そこにあるのは黒の絵の具とその周りに薄っすらとグレーが残る。
「画家は黒で絵を描きたい、だけど酒呑童子と言う黒い絵の具は少量しかないの、こんな量じゃ一筆キャンバスになぞってお終いね」
春姫の説明には「なるほど?」と分かった様なそうで無い様な反応を示した。
それを見た未知瑠は「続きをお願い」と促した。
「それで暁良が殺されない理由は……これは完全な推測になってしまうのだけど…….」
そう言ってから別に用意した白を垂らしたパレットを持ち。
「白を供給している暁良が諦めて自分で在庫の無い黒を供給する様になるのを待っているのかもしれない」
もし、暁良が自分から黒を出す様になればそれこそ酒呑童子と混ぜ、新しい酒呑童子として誕生させられる。
「そう考えると暁良の肉体より、暁良の魂が入った位牌を優先して持って去って行ったのに納得できるのよ」
三人は頷いて話しを聞いている。
「それに本来、魂抜きで暁良と酒呑の魂を器用に選んで抜き取るなんて出来ないの、それが出来るなら私はとっくに酒呑を取り除いてるわ」
橋姫の言う通り、今の橋姫は酒呑より暁良といる方が良いのでそんな事が出来るならとっくにやっていた。
「でも、あいつらは何らかの方法でそれをやった、あそこまで暁良にくっ付いている魂を無理矢理引き剥がしたのだから、暁良も酒呑の魂もかなりダメージを受けてるのは間違いないと思うわ」
その説明に夏希は「なるほど!」と今度はわかった様な態度をとる。
「そして、あいつらの狙いはそのダメージなのでは?と私は思うの」
夏希は酒呑童子もダメージ受けるのはいいの?的な表情をしている。
「肉体が無くなった暁良はきっと自分の魂の記録を観ている筈だわ、しかも魂が傷つけられているから、恐らく悪夢と言う形で……」
物凄く心配そうな顔で橋姫は言った。
「その悪夢をずっと見させられたら、いずれ暁良は堕ちるわ……」
未知瑠は「あいつは基本楽な方に行くからな……」と呟きハハッと力無く笑う。
「そう考えると推測ではあったけども、あながち間違いでもないとは思うの、例え酒呑にダメージが行くリスクを考えたとしても、成功した時のリターンが大きすぎるのよ」
三人が険しい表情で考えている。
「簡単に説明すると、画家は、暁良が出す黒い絵の具と、酒呑の黒い絵の具を混ぜ合わせて絵を描きたいのよ」
「黒と黒混ぜたら黒ですもんね!」と夏希は言うがその通りである。
「今説明した通り暁良が堕ちるまでに何とかしないといけないの」
三人は話しを聞いて、やってやろう!って気持ちになる。
「一対三な状況にナらなけレば確実に私がアイツらヲ殺スわ、だカラ宜シくネ」
そして橋姫は暗い笑みで三人にお願いした……。
その笑みをを見た三人は背筋に悪寒が走るのであった。
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