十二幕
今日は社務所に行って腕輪の
神社には程々に参拝客もきており、巫女さんも暇ではなさそうであった。
「そういや、早瀬はあれから会ってないな……」
メール無視着信無視をして、そのまま携帯が壊れた為に返信も出来ない状態だった事を思い出す。
「社務所入ったら煩くなりそうだな」
そう言って社務所の中に入って行くと、予想していた喧騒はなかった。
不審に思い社務所を見回すと早瀬の姿は何処にもいなかった。
(あいつ今日は休みか)
無駄に緊張した暁良は早瀬の代わりに入ってる子に腕輪を渡し、社長がいる部屋へと向かって行った。
社長室の部屋をノックするといつも通り「入れ」と言ってくる。
「失礼します」
「うむ、今日はどうした?」
今日来た理由は茨城童子の事で報告と相談をしに来たのである。
「報告したい事があります」
「なんじゃ?」
幻魔はいつも通りの重圧をかけてくるが、橋姫と戦った事による物か、前ほどの重圧は感じなくなっていた。
「茨城童子の事でございます」
「どう言う内容じゃ?」
「はい、茨城童子は現在私と友誼を結び行動を共にしております」
「……」
暁良の報告に幻魔は無言で次の言葉を待った。
「尾上山も現在妖怪は居らず、それどころか周辺の妖怪も数が激減している状態です」
「ふむ、その報告は鏑木からも受けておる」
「はい、それは茨城童子が友好的で他の妖怪を御しているからだと私は思っております」
「何が言いたいんじゃ?」
幻魔は暁良が何を言うかわかっているだろつが直接の答えを待った。
「教会からの茨城童子討伐をやめて頂くように出来ませんか?」
「それは無理じゃな」
「何故ですか?」
「簡単じゃよ、あの鬼は過去現在において人を殺し過ぎている」
幻魔の言う事は尤もである。
「それを承知でお願いしております!」
「無理な物は無理じゃよ」
とりつく島もないとはこの事で、やはり無理なのかと思う暁良、だが幻魔が一つの可能性を示してくれる。
「茨城童子が何かした時、お主が命を賭けて止める事が出来ると言うなら考えよう」
その言葉に暁良は希望を見出す。
「はい!この命に変えても止めて見せます!」
「言うだけなら誰でも出来る、儂が言いたいのは茨城童子が実際に暴走した時お主にその力があるのかと聞いておる」
「……今はまだその力はありません」
暁良の表情を見て、少し思案した幻魔は深い溜息を吐くと。
「討伐中止は無理じゃが、討伐保留の申請をしておこう」
討伐処理は何があっても駆除すると言う状態から討伐保留は何かあったら駆除と大分軽くなる結果だ。
「ありがとうございます!」
「暴走する前に止められるだけの力を身につけるのじゃよ?」
「はい!」
部屋に残された幻魔の表情は息子の成長を見守る親の様な顔をしていた。
「あっ、明後日から仕事じゃぞって言うの忘れてたわい」
今一締まらないのである。
腕輪に溜まってた妖気の浄化と
家に着く頃には大分いい時間になっており、訓練してそのまま寝ようと考えていた。
「さて、はじめるか」
家のベットで胡座をかき瞑想を始める。
前回やった瞑想と少し違っていて今回は一度に使える霊気の出力を上げる為、掌から同じ出力の霊気を内から外に長時間放出するだけの作業をやるだけだ、言葉にすると簡単そうだが実際はかなりキツい訓練をはじめた。
(相変わらず地味でキツい……)
既に十五分は霊気を放出続けている、循環させず放出という形な為、霊気は出て行くだけだから消耗は激しい。
更に十五分が立つ、以前の自分ならここで終わる。
そこから約三分後、霊気が底をついた。
霊気の総量と出力は前から比べると、三分相当分多く放出する事が出来る様になったと言う事だ。
「ぷはぁーーー!もう無理!」
そう言ってベッドで胡座状態だったので、そのまま後ろに倒れ込み訓練を終えた。
暫くして動ける程度に回復した暁良はスマホにメールが届いてる事に気づく。
「(暇だからメールしてみた!なんか面白い話しして!)」
メールを開いてみるとそんな事が書いてあったから、早瀬の話しをして上げると会ってみたいだのと言うから、今度連れて行くと適当に返事を返した。
その後にも未知瑠からは先日の居酒屋で「(私は何かしてしまった?)」とか、「(明後日からまた仕事)」があると聞かされてゲンナリする暁良であったのだ。
「最近は色々あったな……」
ここ最近は色んな出来事があったな〜と思いを馳せ、新しい仲間との出会いが合ったり、死にかけはしたが意外と今を楽しんでいると思った。
「まぁ、今の生活が続くように頑張りますか……」
そう言って暁良の意識は穏やかに眠りについていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます